テックでガソリンスタンドは変わるのか?
こんにちは。BTI部のタケヒロです!
これまで、コアな技術要素に関する記事をいくつかご紹介してきましたが、今回はちょっと趣向を変えて、事業改革のネタをお届けしようと思います。
背景
今回ご紹介するのは、弊社のグループ会社のひとつであり、サービスステーション(SS=ガソリンスタンド事業)を展開するリブエナジーシステムズ(以下「リブエナ」)です。
都内・神奈川県で複数個所、ENEOS特約店としてSSを運営しています。
現在SS業界は、時世的に厳しい局面を迎えています。
弊社の他のメンバーが多く関連記事を紹介していますが、近年の地球温暖化を背景に、各分野で利用される化石燃料の使用を排除する動きが世界的に活発化してきています。
電気自動車などガソリン以外の燃料へのシフトが急速に進んでいますし、ガソリン車に関しても、最近はとても燃費が良く、少ない燃料で長距離を走れるようになってきています。
ガソリンの販売を事業の中心とするSSは、その売り上げに直接的に影響を受けることになるのです。
一台一台の車のガソリン消費量が減ってきているのに加え、
・人口減少
・若者の車離れ
・ここ最近の原油価格高騰に伴うガソリンの値上げ
などの影響から車を利用する機会そのものが減っているという状況もあり、ガソリン販売事業者にとってはますます頭の痛い状況です。
2020年から始まったコロナ禍で「国内旅行の際は車を利用する割合が増えている」という傾向も短期的にはあります。
しかしガソリン需要の減少という大きな流れを変えるほどのものではなく、テレワークで車通勤が減ったこと、会社訪問等での営業車が使われなくなったことなどのワークスタイルの変化により、結果的にコロナ禍でガソリン需要の減少は更に加速しています。
SSの課題とは?
このような状況の中、私たちは消えゆくガソリンの需要をただ黙って見守っているわけにはいきません。
リブエナを含め、これまでガソリンの販売を中心に展開してきたSSは、ガソリン以外の商品の販売やサービス提供に活路を見出して行く必要があります。
タイヤやエンジンオイル、バッテリーの販売や、それらの交換、点検や車検作業など、ガソリン以外の商品やサービスを「油外(商品・サービス)」といいます。
これら油外商品・サービスをどれだけお客様にご利用いただくか、というところが、今回の取り組みの焦点です。
テクノロジーチームは、「リブエナのマーケティングやCRM機能を充実させ、お客様にサービスを利用していただけるよう販売促進していく」という課題に挑戦しています。
リブエナ幹部と三ッ輪ホールディングスのマーケティング担当がチームを作り、一致団結しての新しい取り組みです!
(ちょっと脱線しますが、実は去年テクノロジーチームにマーケティングファーム出身の新たなメンバーが加わりました。いつか、マーケティングネタもご紹介できればと思っていますので、ご期待ください!)
話を戻します。マーケティング・CRM・販促と、一見シンプルなアプローチに思えますが、実は、根本的な課題があります。
誤解を恐れず言うと、正直なところ私たちは「お客様のことをよく分かっていない」のです。
これはリブエナだけでなく、SS業界共通の課題でもあり、そのサービスの性質によるものです。
普段みなさんが利用するスーパーや美容室は、どのような理由で選んでいますか?「新鮮な食材が売られているから」とか「お気に入りの美容師さんがいるから」など、能動的な意思で選ぶケースがほとんどかと思います。
一方SSの場合は、そのようなモチベーションで来店されるお客様は多くなく、むしろ「出かけた先でガソリンが切れそうな時に、たまたまみつけた比較的安いお店で給油する」というケースが大半です。
要するに、私たちのお客様の多くが初めてリブエナをご利用される、いわゆる「一見(いちげん)」のお客様なのです。
もちろん、リブエナのスタッフも、よくご来店されるお得意様は覚えていますし、それぞれのお客様がどのようなサービスを期待されているかも大体把握しています。
しかし、大半の一見のお客様については、大変申し訳ないことに「お客様ごとに個別のサービスを提供したくても、そもそもどのようなお客様なのかが分からない」というのが現実です。
更にリブエナはセルフ方式での給油がメインであり、お客様との直接的な対話の機会も多くありません。ますますお客様のことを知るきっかけが少ない、というもどかしい状況です。
目指したい方向性
マーケティングの基本的な手法に、STP分析があります。
適切な「S:セグメント」を設定し、「T:ターゲット」に魅力的な販促・サービス提供をすることで「競合との差別化(P:ポジショニング)」を図ると言う考え方です。
そして、この分析の成否は、いかに多様で質の高い情報をインプットできるか、にかかっています。
収集する情報としては、一般的には、例えば、年齢・性別・職業・年収・住んでいる地域・家族構成・・・などが思いつくと思いますが、SSの場合はこれらのお客様(車の運転手さん、オーナーさん)の属性情報が必ずしも販促に繋げられるわけではありません。
さらに、お客様属性情報を収集すること自体難しいものがあります。SSにガソリンを入れに行って、年齢とか職業を聞かれることってまずないですよね。
油外販売においては、お客様自身が何を必要としているかではなく「お客様の車が必要なもの・ことが何なのか?」を知ることが入口になります。
言い換えると、車のプロである私たちが「お客様の大切な車をベストな状態に保つためにできること」を追求し、提案していくことが基本的な考え方です。
そのためにまず着目すべきなのは、お客様の「車」の情報ということになります。
収集した車の情報を元に価値のあるサービス提案をし、サービス提供の過程、完了後の結果(車の状態)も含め、お客様にご満足いただける品質のサービスを行うことが、私たちができる「顧客第一」なのだと考えています。
どうやって進めるか?
実際にどのように施策を実施するか?については、以下のようなポイントを押さえながら進めていきたいと考えていますので、技術要素を列挙しご紹介します。
「こんな要素が必要だよな」という私の頭の中でのイメージなので、何となく雰囲気だけでも伝われば幸いです。
・LEANスタートアップ
すでにプロジェクトとして走り始め、現在は要件定義の段階です。
リブエナは今までテクノロジーを十分に活用できていたわけではありません。また私自身もSSの事業改革に携わった経験がないので、メンバー全員手探り状態です。
正解が見えない状態ですので、まずはスモールスタートし、仮説ベースで少しずつ施策を実施した上で、情報収集しながらPDCAサイクルを回し大きくしていく、LEANなアプローチで進めて行く予定です。
・情報収集/センシング技術
LEANな進め方をする上では、仮説を検証するための情報(元ネタ)をいかに効率良く収集するか、ということが大切です。
例えば車の情報のキーとなるのは、車番(ナンバー)ですが、画像処理の技術を応用した車番読み取りの技術は既に良い意味でコモディティ化しており、容易に取り入れることができます。
また、LINE等のSNSを利用すれば、より具体的なユーザー情報や車の情報を収集することもできそうです。実際に最近の傾向として、サービス提供会社はLINEの公式アカウントを利用して販促を行うケースが増えて来ているようです。
・データ分析
情報は、収集するだけでは価値を生み出しません。また打ち出した施策は評価しなければ次につながりません。
情報を分析し、仮説を定量的に評価する要素もとても重要になってきます。
最終的にはAIやBIを活用してデータ分析をするところを目指したいと考えていますが、そこもまずはスモールに。最初は、お客様や車の属性と言った個別の情報と、来客数や来店回数等のマクロな傾向を把握できるよう、外部のSaaS等を用いて簡単な分析ができるデータ集計の仕組みづくりを考えています。
・アジャイル、CI/CD、DevOps等
PDCAしながらサービスを育てていくために、構築するシステムはスピーディかつ継続的に進化して行く必要があります。本件では基本的に外部のSaaSを中心に利用し構築していく予定です。
そのためスクラッチ開発要素はあまり大きくならない想定ですが、SaaSのUIや、SaaSとのデータ連携・分析回りは必須要素になってくるので、アジャイルに進められるよう工夫していきたいと思います。
・マーケティングオートメーション
情報収集・販促施策実施関連で押さえておきたい要素は、マーケティングオートメーション(MA)です。
若干バズワードっぽい概念ですが、タッチポイントとして前述のようなLINEなどのSNSをうまく活用しながら、マーケティングからの販促施策実施のプロセス効率化を模索できればと考えています。
具体的なMAソリューションの導入というよりは、MAを意識しながら仕組みを育てていければ、と思っています。
・デザインシンキング
最後になりますが、一番大切なアプローチだと個人的に思っているのが「デザインシンキング」です。
前述の通り「お客様への理解が十分でない」というのは大きな課題です。
これまでこの課題に対して有効な手立てを打ててこられなかったことも、残念ながら事実です。
人間分からないことがあると「前回はコレで成功したから、今回もきっとうまくいくはず」とか、「苦労して作ったサービスだから、使ってくれるに違いない」というふうに、過去の経験やそこで得た知識を正として考えがちです。
しかし、お客様のことを十分理解できていない状態で、UX(ユーザー体験)を無視してサービスを作っても、それをユーザーが自主的に理解し、利用しようと考えてくれるケースは多くありません。むしろ、一方通行的な価値のアピールは敬遠される傾向にあります。
「本当にお客様が求めているものは何だろう」「こんなアプローチをされたら、お客様はどう感じるのだろう」と、常にユーザー目線で物事を考えることを重視すべきと思っています。
まとめ
少し古い情報ですが、ある一般社団法人により2019年に実施された調査によると、同年、国内のSSは3割以上がセルフ方式に移行済みで、一番多いエリア(神奈川県)では、半数以上がすでにセルフSSになっています。
1998年にセルフ式給油所が解禁されて以来、効率化が追求され、一時期はSSにおける対面接客は「ムダ」と捉えられていた時期もありました。
しかしその後対面接客の重要性が見直され、地域のSSは単なる給油所ではなく「お客様の豊かなカーライフを支える基盤であるべき」という考え方が定着しています。
今はまだ私たち事業者側が考えるあるべき姿と、お客様のイメージとの間にギャップがあることは否めません。今回の取り組みを通じて、単なる効率化や売り上げの向上だけでなく、お客様を知り、お客様に求められる存在とは何か、お客様にご満足いただくために私たちに何ができるのか、ということに改めて向き合いたいと思っています。
以上、まだ走り始めたばかりですが、大きく変化している環境の中で、テクノロジーを駆使して、いかに事業を変えていくか、という少し大きなテーマでの取り組みをご紹介しました。
引き続き進展があればご報告したいと思います。
また、リブエナってどんなSSなの?どんなスタッフがいるの?というところにご興味をお持ちのカーユーザーの方は、ぜひリブエナにお立ち寄りください!
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(まことに勝手ながら、なくなり次第終了とさせていただきます。ご了承ください。)
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「テック要素」に興味があるよ!という方も、今回ご紹介したような「テックを応用した取り組み」に興味があります!という方も大歓迎です。
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