南米パナマの錬金術~運河通行問題~
皆さんこんにちは。三ッ輪産業の松下です。
今日は「南米パナマの錬金術」についてお話ししたいと思います。
突然ですが皆さん、「パナマ」というと何を思い浮かべますか?
最近ではグローバル企業の租税回避の暴露文として出回った「パナマ文書」とか、そういえば「パナマ船籍」の船って多いよな、とかもありますが、やっぱり圧倒的に世界三大運河のひとつである「パナマ運河」を思い浮かべる人が多いはず!
(ご存知の方が多いと思いますが、三大運河の残り2つは中東のスエズ運河とヨーロッパのキール運河です。知っておいて損はないですよ。)
で、パナマ運河というのは北米と南米を挟むほそーい場所にあるパナマ共和国のほぼ真ん中にある、太平洋と大西洋を結んだ約80キロメートルの運河です。
(通常この運河は約9時間で通れるのですが、これを使わずに南米大陸最南端のホーン岬を経由すると30日もかかってしまうのです)
この運河は途中海抜30メートル程度の湖を通るので、その前後で高さ調整のための3段階段を上り下りして進んでいきます。この仕組みを「閘門式(こうもんしき)」といいます。
口に出すのをちょいとためらってしまう名前ですが、「運河を水門で仕切り、船が来たら後ろの水門を閉めて前の水門を開けることで、水面の高さ調整をして進んでいく」というとっても簡単な仕組みです♪
ここを10万トンクラスの船が1日40隻も通っていくんですよ!もう忙しいのなんの。
パナマ共和国に行った時には、是非とも随一の観光スポットであるパナマ運河を見てきてください。
エネルギーとパナマ運河がどう関係するのか?とお思いの方、ここからが本番です。
約100年前にアメリカが作り、管理もしていたパナマ運河は、1999年末にパナマ国に譲渡されました。
アメリカが管理していた当時は「この運河は世界的な物流インフラとして世界中で利用されるべきだ」という考えに基づき、「通行料は船の重量に比例するが、基本的には安価」とされていたのに、パナマの管理になった瞬間に「通行料は国家の大事な収入源」とのことで値上げしまくることに…!
一方的に「20年間、毎年3.5%の値上げ」を宣言した結果、2003年6.6億ドルだった通行料収入が2012年には3倍近くの18.5億ドルにまで上昇!やりおるぜパナマ。
そしてパナマは考えた、もっと儲けようと。
2016年にはパナマ運河の幅を広げる工事を実施して、パナマ運河を通れる最大サイズ(これ、パナマックスと呼びます、芸人の名前みたいでしょ笑)を大幅に改正!
より大きな船も通れるようになり、通行料も大幅アップ!
当時北米のシェール革命でアメリカがエネルギーの輸出国になったこともあり、メキシコ湾からアジア向けのLNG船やLPG船がパナマ運河を通行しまくり!質も量も大幅アップ!2019年の通行料は57.2億ドルにまで上昇しました。
しかしこのころから新たな問題が出てきて…パナマ、渋滞してますやん!!
通行する船が多すぎて渋滞が頻繁に発生し、ひどい時には20日程度も待たなければならない。
そしてパナマは考えた。ルール改正を含めてもっと儲けようと。(しつこい)
そして、今年1月からスタートしたのが通行日の予約システム変更。
トン数の多い(=通行料が高い)客船やコンテナ船は365日前から予約を受け付けるのに対し、トン数が相対的に少ないLNG船やLPG船はたった14日前から…というルール。
確かに客船やコンテナ船は一回当たりの通行料が1.5億円ほどなのに対し、LPG船は4~5千万円だから、通行料が高い船にたくさん通ってもらいたいのはわかるけど…この日数の差はひどくないですか?
その結果、LNGやLPG船などは「予約してもパナマ運河の前で2~3週間待たされている」というのが、いま起きている事です。
これ、我々日本にとっても大きな事なんです。
まず、待たされている間もコストがかかるので、日本に到着するエネルギー価格が上昇して、我々国民の財布に影響していること。
さらに深刻なのは、日本へのLNGやLPGの到着が遅れることでエネルギー不足に陥ってしまう懸念があること。現に昨年1月の日本全体での停電危機はLNGの到着遅れが主な原因ですし。
ねえパナマさん、儲けるのは良いですが、ルールを考え直してもらえませんか?
そもそも戦前にパナマ運河を作った時には日本から技術者派遣したり、5年前の拡張工事の時だって某銀行が金融アドバイザーをしたり、今の通行船舶の約12%は日本行きなのに…もうちょいと日本びいきになってくれても良いんじゃないですか?
今回は「南米パナマの錬金術」が日本にも結構な影響を与えているというお話でした。
面白かったら♡してくださいね。
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