チョン・イヒョン『優しい暴力の世界』(斎藤真理子訳)
事故物件だと知らずに入居を決められてしまった、ジン。
世の中は「優しい暴力」で溢れかえっている。
「作家のことば」で作者は「今は、親切な優しい表情で傷つけあう人々の時代であるらしい」と述べた。
そんな「優しい暴力」とともに時代は進んでいくのである。
訳者である斎藤真理子氏のあとがきでは、全編を通して「振り返り」がテーマとなっていると述べられた。受けた傷を振り返りながらも進んでいく時間の記録なのである。
私が一番好きな作品、「ミス・チョと僕と亀」ではそんな人間の一生を映す目として「亀」の存在がある。なんだか亀が飼ってみたくなってきた🐢
<原作>정이현『상냥한 폭력의 시대』(문학과지성사,2016年10月)
<日本語翻訳版>チョン・イヒョン著/斎藤真理子訳『優しい暴力の時代』(河出書房新社,2020年8月)