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甘野書店

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noteの本屋さんです! 小説、詩、絵、音楽、動画を販売してます! あなたは本を買いますか?  あなたは本を売りますか? ルールは以下です。 ・自作の小説・詩・絵・音楽・動画の…
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2024年8月の記事一覧

(掌編小説)宝くじで当たった猫

8月1日  大学時代のへそくりがそろそろ無くなりそう。親の仕送りが懐かしい。コンビニのバイト増やそうかな。会社辞めたの失敗?でも無理だったから。会社辞めたら少し太った。JK時代の頃のようにほっぺが丸い。 8月3日  ロト外れた。スマホを放り投げそうになった。働きたくないな。大当たりするのをいつも夢見てる。 8月4日  今日はバイトが入ってない日だった。一日中アパートの中で無駄にエアコンつけて、ゴロゴロして無駄にご飯食べて。最近食べてばかりいる。 8月5日  今朝は起きられなか

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ショートショート|何の影響も与えられない男

 ――ああ、会社に戻りたくない。  重い気持ちで公園をふらついていた僕は、何気なくベンチに腰掛けた。  内臓が全部飛び出るんじゃないかってくらい深く、ため息を吐く。 「何やら、悩ましげですね」  抱え込んだ頭に、隣から声が飛び込んできた。まったく気が付かなかったが、すでに誰かが座っていたようだ。  顔をあげると、初老の男性が爽やかな微笑をこちらに向けていた。  赤の他人と話したい気分ではない。  といって、無意識とはいえ、わざわざ彼の座るベンチへ並ぶことを選んだのは僕だ

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「君の歌声だけがすべてで」【小説】

   彼女が静かに歌い始めた。その瞬間にそれ以外の音が消える。僕の目に映る景色もすべて意味を失う。やがてそこは彼女の歌声だけが意味を持ち、彼女の歌声だけが確かな世界となる。  僕は抵抗することなくその世界を受け入れる。そしてこの世界も拒むことなく僕を迎え入れる。こうして僕はこの世界の一部となり、彼女の歌声とひとつになる。そのとき、僕の過去も意味を失う。標的の定まらない怒りや何かに対する底知れない諦めもすべて。

¥100〜
割引あり

オリバーピープルズ

 ¥300。(全6話)。 (ものがたり)  僕は目の手術をしたために、サングラスをしなければいけなくなった。  古着屋をやっている友達の友也に相談したところ、オリバーピープルズというブランドのサングラスを薦められ、それをすることになった。  おしゃれには無頓着な僕だったが、サングラスだけはおしゃれになってしまった。  仕事で大阪に行くため、僕は新幹線に乗った。しかしその新幹線で出会った見知らぬ女に強引にサングラスを交換させられてしまった。  そして仕事で新幹線に乗るたびに、

【創作童話】おねがいレレア

公園においてあるダンボールを見たら、だれだって、もしかしたら子犬か子猫がすてられているんじゃないかって思うでしょう。 でも、今日アイが見つけたのは、なにも入っていないただのダンボールでした。 ただ『そう見えただけ 』 の‥‥。 「なぁんだ、つまんない。 この中になにかおもしろいものでも入ってたらよかったのに」 そういって帰っていくアイを、じっと見ているいっぴきのうさぎがいました。 レレアという名前の魔法のうさぎでした。 本当はふわふわした白いからだをしていますが、今は魔

¥100

スメル

 ¥300。(全7話)。 (ものがたり)  僕が引っ越したアパートはロフト付き。  引っ越し祝いに友達の暁斗とその彼女の理沙が訪れたが、理沙の友達だと言う謎の女ノエルが一緒だった。  ノエルは一言も話さなかったが、なぜだかロフトを見ると、スメルと言うのだった。僕のアパートが臭うっていうのか、と不快に思う僕。  その日から僕のアパートに住みついてしまったノエル。   ノエルと僕の関係は、いったいどうなるのか。 (かいせつ)  当初は単発のショートストーリーとして書いたのだけ