元カレ (掌編小説 1 )
さっきから鼓動が騒がしい。
心臓が胸の奥で飛び跳ねているみたいだ。
まもなく展開されるであろう光景を、久美は頭の中に思い描く。
もう、会うこともないだろうと思っていた元カレ、直樹がもうすぐここに現われる。
ここ、駅ビルの中にあるカフェは、半分以上座席が埋まっている。以前、直樹と何度か訪れたことがある場所だ。
久美は入り口に視線を向けた。今にも直樹が現われそうで、胸が高鳴る。
先週、夕食後にソファーでウトウトしていた久美は、電話の着信音で目覚めた。
表示された名前を見た瞬間