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家に入ってきた知らないお婆さん

寒い時期に生まれた甥っ子が半年を過ぎた頃。朝ご飯の片付けに洗濯と、とりあえずの家事を済ませた姉は、甥っ子が眠った隙に仮眠を取ることにしました。

上の子は、ようやく幼稚園。手がかからなくなって安心したのも束の間、今度は甥っ子の夜泣きに悩まされていた姉は、余程疲れていたのでしょう。少しの時間でも眠っておこうと横になった途端、ぐっすりと寝入ってしまったそうです。


どれくらい経ったのか。

トン、トン、トン

階段を誰かが上がってくるような音が聞こえて、姉は目を覚ましました。

(え?うち?)

家には、他に誰もいないはずです。不思議に感じ、確認したいと思うのですが、日頃の疲れで目が開きません。目が開かないどころか、体もまったく動かない、姉。

(何かあって、お父さんが帰ってきたのかな?)

トン、トン、トン

足音はどんどん近づいてきます。もしも、誰かが家に侵入してきたのなら、大変です。ところが、相変わらず体は動かず、目もまったく開けられません。甥っ子はベッドで眠っているようで、静かです。

やがて足音が止まり、誰かが二階の部屋に入ってきたようでした。そして
「どれどれ、赤ちゃん見せて」
「あら〜、大きくなった」
と、高齢の女性のような声が聞こえたそうです。

聞き覚えのない声に
(知らない人が入ってきた!)
と危険を感じた姉は、必死で起き上がりました。

すると、
部屋の中にはお婆さんの姿はなく、相変わらず甥っ子が気持ちよさそうに寝ていたそうです。すぐに階下に降りてみたものの、玄関もしっかり施錠されていて人が入ってきた様子もなかったのだとか。


当時、姉たちが住んでいたのはメゾネットタイプの公営住宅。すでに築数十年経っていた古い建物でした。1階に開いていた箇所はなく、侵入してきたのは生きている人ではないのでしょうね。

姉が話してくれた、ある夏の体験でした。

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