つらつら綴る ~ イタリア旅行~

週末に暇を持て余していると色々な事を空想する。ベッドの上で天井を見ながら将来の事、自分のやりたい事、仕事の事、晩御飯の事を考える。近所に野菜を買いに行こうにも靴を洗ってしまい、部屋を出るのも億劫になり、頭に浮かんだ事をnoteに綴る事にした。

小さい時は、将来どうなりたいか、どう生きたいか、と言う事を真剣に考る事がなかった。小学生の時は安定しているという理由で公務員になりたかったし、欲しいものは現金と土地だったし、子供らしい夢というものがなかった。海外にも生きたくなかったし、大好きな新座で大好きな友達と一緒にいれたら良いと思っていた。

小学生の時の自分も、中学生・高校生の時の自分も、超保守的な人間がアフリカのガーナで生きているとは夢にも思っていないだろう。たった一つの出会いから大きく人生は動き出すから、きっとまたこれからも人生は何度も動いて想像ができない方向に進んでいくんだと思う。その時その時は変化の苦しみを伴うものであったとしても、振り返ってみると結構面白い人生を生きてこれたのではないかと、我ながら結構満足している。

初めての海外旅行はイタリアだった。大学受験が早々に終わった私は、近所のビデオ屋でアルバイトをする事にした。初めてのバイトは、自分にとって年上の人たちと関わる初めての体験で、緊張と新鮮さでとてもドキドキしたのを覚えている。そして、初めてのバイト代で服でも買おうかと考えていると、母から本屋に行くわよ、と誘われた。「半分出してあげるから、バイト代を使って本を買いなさい」と言われ、岩波新書の古典を何十冊か購入した。大学に入ってから通学中に読む事になる、通勤の友たちが本棚に加わった。

因みに、私は本当に自分で何かをしたい、と道を自分で切り開く様なタイプではなかった為、親や兄弟、友人たちに勧められれば、「そうなのか〜」と素直にいう事を聞くタイプであったと思う。地元大好きで一切海外に興味を示さない自分に、母は「これからは世界に出て行く時代よ、大学に入る前に世界を見なさい!海外に行くわよ!」と何故かイタリア行きが決まった。それからはイタリア行きの為にバイトを頑張った。何故イタリア行きだったのかは、おそらく以前母と姉が二人でイタリア旅行に行っていたから、経験もあり、見せたいと思ったからだろう。ツアー代とお土産代として30万円近く稼いだ。そして、母と兄と私の3人旅が始まった。

当時ラッパーだったちょい悪の兄は、「ヤベェ、金忘れた。土産買うから金かしてくれ」と弟と母にお金を借りて、カンガルーの帽子とドルガバのサングラスを買っていた。イタリアじゃなくて良いじゃん、と強く思った。多分日本に帰ってから兄がそれらを身につけたのは数回程度じゃないだろうか。そんなどうでも良い思い出はよく覚えている。

あの店行きたい、この広場に行きたいと動き回る母と、「面倒クセェ、歩きたくねぇ」とだらだらする兄がはぐれない様に行ったり来たりする私。そして、その兄にブチ切れる母。初めての海外旅行に祭して、私は2つの事を決めていた。それは、①英語を使って自分でサッカーのユニフォームを購入する事、そして②イタリア語で何かコミュニケーションをとる事、だった。目当ての広場について、自由時間となった。自分の下手な英語を聞かれたくなくて、私は一人でサッカーユニフォームが売られているお店に行った。「1つください、いくら?高いよ」と初めて簡単な英語で店員さんと話ができた時、とてつもない感動と達成感を感じたのを覚えている。その時買ったユニフォームも値段も覚えていない。ただ、少し誇らしくドキドキしながら兄たちの元へ戻ったことは覚えている。

そして、もう一つのミッションについてもジェラート屋さんで達成した。イタリア語で何と伝えようか、と色々考えて覚えたイタリア語は「トイレはどこですか?」だった。これはとても重要なフレーズであり、どの外国語を学ぶ際にもまず最初に覚える。会話が長く続くフレーズだと、ヒアリングもできないし語彙も少ないので、「トイレはどこですか?」なら大体のジェスチャーでトイレの場所はわかるので、勝手なやりきった感を得るにはちょうど良いのだ。イタリアでは「ありがとう」「こんにちは」と同じくらい「トイレどこですか」を連発した。未だにイタリア語で「トイレどこですか」だけは忘れていない。

この旅行では、本当に多くの事を学んだ気がする。日本語以外の言葉を使って、海外の人と話す楽しさ、自分でやると決めた事を達成する楽しさ、新しい土地に行くというワクワクさ。大学進学前に、海外を経験できた事は本当に素晴らしい経験だったと今でも感謝している。

因みに、ヴェネツィアのボートの上でツアー客のおば様に、「お兄さんは今どきの真正なイケメンね、弟さんは古風な顔立ちだから、生まれてくる時代が30年くらい前だったらモテてたかもね」と言われた事は今でも心に刺さっている。人を比較する事は時に残酷なので、容姿について云々について評価する時には是非気をつけて欲しい。







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