千年企業の「人を活かす経営」
皆様、こんにちは。「笑顔工学」の専門家、木村光範です。
笑顔工学って何?という方は自己紹介の記事をご覧ください!
さて、前回は、デジタル時代における千年企業の智慧についてお話ししました。今回は、千年企業の根幹を支える「人を活かす経営」について、具体的な事例を交えながら深掘りしていきます。
「人を活かす経営」は、松下幸之助さんの有名な著書にもありますし、私が会員を続けている中小企業家同友会でも重視している考え方です。
今回の記事は、「人を活かす経営」が、永続企業においていかに重要であるか、を紐解いていきます。お付き合いのほどよろしくお願いします。
千年企業が重視する「人を大切にする経営」
日本には永続企業が数多く存在しています。これらの企業が長年にわたって存続してきた理由の一つに、「人」を大切にする経営があります。野村進氏の著書『千年、働いてきました』によれば、多くの長寿企業は「人材育成」を非常に重視しています。
永続企業に共通する特徴として挙げられるのは、「公利公益」の精神、本業への徹底的なこだわり、社会との共生、人材育成の重視、長期的視点での経営です。これらの要素は、時代が変わっても変えるべきではない「不変の価値」といえます。
松下幸之助の「人を磨く」哲学
松下幸之助は「人間は磨けば輝くダイヤモンドの原石である」と述べ、人間の無限の可能性を信じていました。彼の人材育成哲学の核心は、個人の潜在能力を引き出し、成長を促すことにありました。
松下は、従業員一人ひとりを独立した経営者として扱う「社員稼業」の概念を提唱し、自主性と責任感を育むことを重視しました。また、「物をつくる前に人をつくる」という言葉に表れているように、事業の成功は人材育成にかかっていると考えました。この考え方は、多くの永続企業の経営哲学と共鳴し、長期的な視点での人材育成の重要性を示しています。
虎屋の人を創る経営
和菓子の老舗・虎屋は、400年以上の歴史を持ちながら、人材育成に革新的なアプローチを取っています。社内大学「虎屋文庫」は単なる技術伝承の場ではなく、従業員の幅広い知識と創造性を育む場となっています。
例えば、EGG21制度では、最長2年間の休暇と奨学金を提供し、従業員の自己啓発を支援しています。これには海外留学やボランティア活動など、直接仕事に関係のない活動も含まれます。また、60歳以降の再雇用制度や事業所内保育所の設置など、多様な働き方を支援する制度も充実しています。
こうした取り組みにより、伝統を守りつつ時代の変化に適応できる人材を育成し、長期的な企業の存続と成長を実現しています。
伊那食品工業の「人を大切にする経営」
伊那食品工業の「いい会社をつくりましょう」という経営理念は、単なるスローガンではありません。同社の塚越英弘社長は、「企業の目的は社会や人々の幸せを追求することであり、その中で最も重要で身近な社員の幸せを追求すること」と述べています。この理念に基づき、同社は以下のような具体的な施策を実施しています:
リストラや給与カットを一切行わない方針
社員の働く環境や福利厚生の充実(例:充実した社員寮、社内レストラン)
「年輪経営」と呼ばれる長期的視点での経営(短期的な利益追求よりも持続的な成長を重視)
社員の自主性を尊重し、創造性を引き出す職場環境づくり
これらの取り組みにより、社員のモチベーションと生産性が高まり、結果として48期連続増収増益という驚異的な実績につながっています。伊那食品工業の事例は、「人を大切にする経営」が企業の長期的な成功と持続可能性をもたらすことを実証しています。
「人を活かす経営」の実現に向けて
「人を活かす経営」とは、単に従業員を大切にするだけでなく、従業員の「会社に貢献したい」という自発的な意欲を高めることです。これは、中小企業家同友会全国協議会が提唱している「人を活かす経営」の考え方とも一致します。
具体的なポイントとしては、以下の要素が挙げられます:
経営理念の共有
適材適所の人材配置
継続的な教育と成長の機会提供
オープンなコミュニケーション
多様性の尊重
これらの要素を組み合わせることで、企業は従業員の持つ可能性を最大限に引き出し、長期的な成長を支えることができるのです。
デジタル時代における人を活かす経営の重要性
デジタル時代においては、AIやロボットの台頭により、人間にしかできない創造性や柔軟性がより重要視されています。例えば、トヨタ自動車は「人間性尊重」を経営理念の一つに掲げ、デジタル化を進めつつも人材育成に力を注いでいます。その結果、革新的な製品開発や生産方式の改善を実現し、世界有数の自動車メーカーとしての地位を確立してきました。
技術がどれほど進化しても、それを使いこなし、新たな価値を生み出すのは「人」であり、「人を活かす経営」は現代企業にとっても不可欠な智慧です。
次回予告
次回は、永続企業における「伝統と革新のバランス」について探っていきます。デジタル時代において、どのように伝統を守りつつ革新を起こしているのか、興味深い事例をもとに深堀りしていきますので、ぜひお楽しみにしてください。
ぜひ次回もお楽しみにしていただければ幸いです。
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