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【映画】感じたことを徒然に~「よだかの片想い」感想

 映画「よだかの片想い」を観に行った。

 AKBで見かけるアイドルとしての松井玲奈にはあまり注目していなかったけど、時々色々なドラマで見かける女優としての松井玲奈は好きだった。特に、深夜ドラマ「ニーチェ先生」で見かけた松井玲奈(主人公ニーチェ先生に片想いする、主人公が働くコンビニ常連客である塩山楓の役)が印象に残っていた。ぶっ飛んだ役だったけど、すごくそういう人っぽくて、主人公(間宮祥太朗)とのやりとりも面白くて、思わず見入ってしまう感じがあった。「アイドルなのに、よくこんな役を引き受けたな~根性あるな」と思った。そして、ふだんは追われる側なのだろうけれど、ストーカーのように主人公に片想いする役をするとそういう人っぽさが滲み出る感じになるのもすごかった。

 そんな松井玲奈が主演、というので、「(not)HEROINE movies」(何ドンもされない。胸キュンもしない。恋とか愛とか生きるとか自意識とか、考えすぎてこんがらがって。それでももがいて生きている”ヒロイン”になりきれない”ヒロイン”たちの物語)という企画の第一作「わたし達はおとな」のパンフレットで予告を見てから、すっごく楽しみにしていた第二作「よだかの片想い」。カレンダーに公開日を付けていたくらい♪でも、なかなか観に行けず~公開から約一か月、やっと観に行けた☆

 

 映画「よだかの片想い」は、幼少時から左頬に原因不明の大きなアザがある女性が主人公。そのアザのためにひっそりと生きてきた大学院生の女性。だが、出版社勤務の友達に頼まれてアザについて語った本が話題になり、映画化の話まで出る。そして、その映画を撮りたいという監督と付き合うようになる。そして、改めて自分のアザとどう付き合っていくか考える~というような話だ。
 監督役をしている飛坂さんのうさん臭さが絶妙だった。演じていた中島歩という方は、角度によって、なぜか「要潤っぽさ」がある俳優さんだと思った。要潤の中の誠実味を薄めてうさん臭さをUPしたような感じ。「もてる男性特有の喋り方」のような、自信とずるさが入り混じったような感じが、絶妙。地でもモテそうだけれど、これが演技だったらスゴイ。「本当に私のことが好きなのか?それとも利用しただけなのか?」と思わせる感じも。

 そして松井玲奈、スゴイ。元アイドルなのに、アザのメイクをしただけなのに、本当にひっそりと自信なさげに生きてきた感じがした。さらに、先輩からダンスを教えてもらうシーンの、最初のぎこちなさ。めちゃくちゃ踊っていたアイドルとは思えない。できること、を、できないように演じるって、きっとすっごく難しいと思う。だまし絵のネタがわかると、もうもとの絵には見られないみたいに。それを自然にできるって、スゴイ。

 最後に先輩と二人で踊る場面は、光も美しくいいシーンではあったけれど、時間的にはちょっと長かったかなぁ。もう少し短めでもよかった。素人感覚的に、というだけだけど。その分、もう一息、他のカットが欲しかった。


 アザのリアリティよ。メイクの素晴らしさよ。~ということも感じた。NHK朝ドラ「ちむどんどん」最終回の老けメイクを観て衝撃を受けたすぐ後だからか。メイクって、大切なんだなぁ…と再認識した。この映画では、本当にリアル。
 

 ひっかかったのは…悪い人が出てこない感じ。最近のはやりなのか?でも、ビミョーな悪意のようなものとか、ざわつく何か、は、もっと表現してほしかったかなぁ…。
 例えば…夜、飲みに行って道ばたで話している人達が「気持ち悪っ」と言っているのを聞いて主人公がドキッとしてしまうようなシーンがあった。あの感じ。それが、もうひとさじ、入れ込まれていてもよかったのでは?と思った。陰影礼賛。「いい人」「いいこと」を際立たせるためにも。

 総じて…面白かったし引っかかりもあったけれど、何かもう一歩突っ込みが足りない感じもした。
 最後、「メイクで解決」というのも、何か腑に落ちない。結局アザを否定していないか?醜形恐怖の人をヒロインに描いておきながらオチを整形メイクで大変身、とするみたいな。「アザ」に関してはそれでいいのかもしれないけれど、もっと容姿に引っかかりながら生きている色々な人にとって腑に落ちるような、アザだとしてもメイクでは隠し切れないようなアザや火傷跡があるような人にとっても腑に落ちるような、そんな何かがほしかった。(特別支援に関わっていた時に、メイクや整形ではどうにもならないくらいに顔のパーツや配置が違う子ども達やその家族に関わって、逆に退職後には整った容姿でもくすぶっている人達を見て、「その要素では人生ははかれない」と感じていたから、より深いものを期待しすぎてしまったかもしれないが…)
 もっと違う乗り越え方~例えば、アザの治療を話した時に後輩が「アザがあってもなくても先輩が好き。」というセリフなんかが、本当の救いになりそうだし、後輩とのことを、もう一歩突っ込んでほしかった気がする。例えば、後輩と主人公が過ごしているカット一つでも。ダンスシーンの長回しに使った時間の10分の1でも。美しい映画だし、演じる人もうまいし…でも、「こうきたか」というような何かはなかった。よかったけれど、新鮮な気づきや揺さぶりがない、というか…。松井玲奈のよさは再認識したけれど。最初の方に出てくる「表紙の写真」のシーンは、観客も飛坂監督の気持ちになってしまって見とれてしまうくらい美しいシーン&美しい写真になっていて、よかったけれど。何か、もう一息感、あと一歩の突っ込みがほしい感が残る映画だった。

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 上映前に、次回作「そばかす」の予告編が流れた。映画「ドライブマイカー」の三浦透子。アロマンティック・アセクシュアル的な話なのかな?でも、三浦透子って、何を演じても、すごくリアリティがある感じがする。地に足ついている感じ、というか。12月の公開日(新宿武蔵野館では12/16)、さっそくチェックした。すごく楽しみだ。

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