三十五目ご飯の可能性 ―雑穀米で五目ご飯を作れば美味しい栄養食となるか?―
※2021/12/13現在、まだ執筆途中です。が、若干飽きてきたので塩漬けにする前にもう公開してしまいます。気が向き次第続きを書きます。
0.要約
・雑穀米を用いて五目ご飯作れば栄養満点になるのではと思い、推奨摂取量と比較して評価した。
・雑穀は精白米に比べて使用量が少ないのが影響し、精白米+αくらいの栄養価にしかならない。食物繊維だけは約2.5倍に補強される。
・五目ご飯に使う材料は精白米や雑穀にない栄養素が含まれているうえ、一部の栄養素に関しては精白米の数倍くらい含まれているので、雑穀に比べると栄養豊富といえる。
・しかし、雑穀米を用いた五目ご飯であっても栄養バランスに偏りがあるため、それだけ食べて健康的になるのは難しい。いくら多様な具材をふんだんに使ったとしても主食だけ食べるのではなく、主菜・副菜もしっかり食べることが不可欠。
1.はじめに 当記事の趣旨
初っ端から「三十五目ご飯」という造語があるのでこれの解説をしましょう。一応タイトルにも書いてありますが、雑穀米を用いた五目ご飯のことです。
三十五という数字はどこから来たのかというと、私がタマチャンショップから売られている三十雑穀という雑穀米をよく用いていて、これが文字通り三十種の雑穀が含まれています。それと五目を単純に足し算して三十五目ご飯と表記しました。字面からして具材たっぷりでとても健康的な感じが漂いますね。
炊き込みご飯の類は作った経験が少ないので、基本的にレシピ通り白米で作るのですが、ある時「もしかすると雑穀米で五目ご飯を作って食べるだけで栄養バランスのいい食生活が送れるのでは?」と思ったのがこの記事を書いたきっかけです。以下、具体的なことを述べていきます。
2.栄養の評価
「たくさん具材があるから栄養豊富っぽい」と述べるだけではつまらないので、どう栄養価が変わるのかを検証します。まずに食材ごとに栄養価を見て評価して(2-1)、その後にメニュー別で評価します(2-2)。
参照した五目ご飯のレシピ(白ご飯/com:基本の五目炊き込みご飯のレシピ/作り方)には鶏もも肉有・無の2パターンが存在するので、「2-2.メニュー別に見る栄養価の評価」の項では以下の6メニューに分けて評価します。
・精白米のみ
・雑穀米
・五目ご飯
・三十五目ご飯
・五目ご飯+鶏もも肉
・三十五目ご飯+鶏もも肉
2-1.食材別に見る栄養価の評価
食材の重さはググって出た数値を参考にしたうえでレシピに相当する重量を計算し、栄養価は雑穀に関しては公式ホームページ、それ以外の食材は七訂食品成分表2016(文科省の日本食品標準成分表2015年版に準拠したもの)から引用しました。
表1が各材料の栄養価とその合計です。数値が0.005未満になる(=小数第三位で四捨五入して0.01以上にならない)項目は空白にしています。
(注1)
食品成分表に掲載されている食材は一部「生」「調理後(茹で、焼き、etc)」で表示が変わっていますが、調理汁を捨てるような工程がないことを考えると、(ビタミンCは半分くらいになるものの)生の食材の栄養価が9割前後残存するようなのでその数値をそのまま使う判断をしました。
具体的には、にんじんは「根 皮むき 生」、油揚げは「生」、ごぼうは「根 生」の数値を使用しています。
※参考:このページの「■調理後の食品に、どのくらいビタミンは残っているの?」
(注2)
栄養価は食品成分表に掲載されているものから自己判断でまとめたり減らしたりしています。具体的には、以下の通りです。
・ビタミンAはβカロテン当量に直して計算しています(レチノール当量×12)
・ビタミンEはα-トコフェロール量の値です。
・過不足になることが稀とされる栄養価は省いています(銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン、ビオチンなど)。
2-1-1.雑穀と精白米は類似している
雑穀の使用重量は精白米のちょうど1割なので同じ土俵に立たせることがナンセンスなのですが、基本的に「雑穀のミネラル・ビタミンの栄養価×1~2=白米のそれ」という関係にあるうえ、精白米にない栄養素は雑穀にもないので類似しているのがよくわかります。一応、βカロテンは雑穀にはあって精白米にないポイントにはなりますが、βカロテン当量だと一日で1万 μgくらい必要なので書かないほうがマシなレベルで微量です(2-2参照)。
特徴的なのは、それでも雑穀の食物繊維が豊富であることです。精白米が1.5 gなのに対して、雑穀は2.8 g。食物繊維2.8 gは、キャベツの葉3枚分(150g)に相当するので、結構な量です。繰り返しになりますが、雑穀の重量(30 g)は精白米(300 g)の1割にすぎません。
いずれにせよm雑穀を混ぜたら劇的に栄養価が増える、ということはありません。過信は禁物。
2-1-2.五目と鶏もも肉は精白米を補う
雑穀と精白米の栄養価は類似する一方で、五目(にんじん、干しシイタケ、油揚げ、こんにゃく、ごぼう)と鶏もも肉はその二つにない強みが結構あります。精白米にない、あるいは精白米以上に豊富な栄養素をもつものを列挙すると以下のような感じになります。
にんじん:βカロテン、ビタミンK、葉酸、ビタミンC
干しシイタケ:食物繊維、ビタミンD
油揚げ:タンパク質、脂質、カルシウム、ビタミンK
こんにゃく:カルシウム
ごぼう:食物繊維、ビタミンC
鶏もも肉:タンパク質、脂質、ビタミンK、ビタミンB2・6・12、ナイアシン、パントテン酸
五目(+しょうゆ)をすべて足すと食物繊維9.6 g。雑穀100 g強(同じキャベツで例えると1/2球弱)に相当します。ほかにも、精白米や雑穀にないβカロテン、ビラミンK、葉酸、ビタミンC、ビタミンDを摂取できます。同じ穀物の雑穀に比べて、穀物でない食材をふんだんに使用している関係でしょうか。
ビタミンB群は動物性食品に豊富なので、五目にはそこまで大量に含まれません。鶏もも肉を加えることでそこを補給できるうえ、タンパク質や脂質もかなり豊富です。2-2-2でも触れますが、PFCバランス的にもかなり良くなります。
唯一、よくない点は塩分です。醤油だけで6.25 gも稼いでいます。炊き込みご飯ばかりを食べていると塩分過多が心配になりますね。
2-2.メニュー別に見る栄養価の評価
以下の表2は、グリコのこことここのページを参考に、18~29歳男性の推奨摂取量にたいしてどれくらいの割合で栄養を補給できるかを各メニュー別(精白米のみ、雑穀米、五目ご飯、五目ご飯+鶏肉、三十五目ご飯、三十五目ご飯+鶏肉)にみたものです。数値が多すぎてわかりにくい部分があるので、図1に精白米のみと三十五目ご飯+鶏肉の2つを比較してグラフに起こしたものを掲載します。
2-2-1.具材を追加してもビタミン不足
図1がわかりやすいですが、精白米に雑穀・五目(にんじん、干しシイタケ、油揚げ、こんにゃく、ごぼう)・鶏もも肉を追加するとさまざまな栄養素を補うことができるものの、栄養バランスに偏りがあります。三十五目ご飯+鶏もも肉の栄養価は、精白米2合+各種具材あわせて約250 gの値なので結構な量なのですが、以下の栄養素は推奨摂取量の4分の1にも満たない状態です。
・カルシウム
・ビタミンB2(26%なので厳密には一応4分の1よりは多い)
・ビタミンB6
・ビタミンB12
・ビタミンC
・ビタミンD
・ビタミンE
カルシウム以外のミネラルは豊富なのに対し、ビタミンはかなり不足していることが示唆されます。
ビタミンが豊富なのは野菜や果物ですが、この三十五目ご飯+鶏もも肉を食べきったとしても野菜はにんじん・干しシイタケ・ごぼうのたった三種、重量にして100 g弱です。言うまでもなく、このメニューに果物は一切含まれていません。
とりあえず足りない食材を補う意味で、生卵1個、リンゴ1個、キャベツ100 g(いずれも生)を追加したと想定しましょう。その結果は表4、5、図2のようになります。
食材三つ足しただけに過ぎないのですが、かなりグラフが広くなってバランスが良くなりました。カルシウムが29%、ビタミンDが33%でやや低めですが、それ以外の栄養素はすべて40%以上です。
結局のところ、主食に五目ご飯や雑穀米を用いたところで栄養に偏りが生じるので、主菜・副菜もしっかり食べないと健康的な食事にならなそうです。
2-2-2.炭水化物過多でPFCバランスも悪い
(以降工事中)