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転職で未経験かつ業界構造すら知らないITエンジニアの内定を得るまで ―スケジュール感、役立ったこと、苦労したこと、得た教訓……各種データと共に振り返る―

要約

業種に関わらず、転職を少しでも検討しているなら、以下を心掛ける。
・情報は集めておく
・現職に不満があっても頑張る
・プライベートの時間でも頑張る


0.概要

 新卒で4年半ほど勤めた会社で化学の知識を活かした製品開発の業務を行っていた筆者ですが、仕事への不満が次第に溜まったことから、2023年11月下旬に転職活動を始めました。転職にあたっては、未経験のITエンジニアへの転職一本に絞り、求人を探して応募しました。2024年1月下旬に志望度の高い会社から内定が得られたので、そこで転職活動を終えました。

 転職活動をしていた約2か月は激動の時間で、自分としてもライフプランをしっかり見つめ直す機会になりました。そこで得た経験や教訓を共有すべく、また自分のための備忘録を残すべく、当記事を書きました。

 加えて、転職サイトや国の統計といったデータを活用してグラフを作成し、その見解も述べました。読み物としても面白いよう工夫したつもりなので、どうぞお楽しみください。

 以下に、当記事が役立ちそうな人(筆者のバックグラウンドと似ている人)を挙げます。

  • 新卒での就職活動が適当だったなど、あまり真面目にやっていなかった人(就活するときに企業研究すらまともにやってなかった人)

  • 異業種(未経験業種)への転職をやってみたい人

  • 転職に関する一般論ではなく、他人の原体験を見てみたい人

 以下は、当記事の注意点です。

  • 転職活動における個人の体験談、およびその見解です。一般論を知りたい人は、転職サイトを確認してください。

  • 情報は可能な限り精査して引用しましたが、保証しません。確たることはご自身で調べてください。

  • 起きた出来事や感想は全て嘘偽りなく、本心です。ただし、身バレ防止のため、本筋とは関係のない些末な情報を改変しています。

1.転職の時系列


1-1.新卒就職まで

 大学では化学を専攻していました。当時4年生の私は大学院に進んで修士で就職するつもりでしたが、研究室にめちゃくちゃパワハラをする人がいたおかげで、化学が嫌いになるレベルでメンタルが病みました。結果、「もうなんでもいいから就職したい」と思い、

  • 5月 就活の足掛かりとして、就職エージェントに連絡する

  • 6月 エージェントが紹介した約5社を一切選別せずに応募

  • 7月 内定が出たので、別に第一志望でもなかったのにそこで就活終了

 ……という流れで就職に漕ぎつけました。今振り返ると、めちゃくちゃ雑ですね。

 応募した会社の情報は、その会社が発信するものかエージェント経由で得たものだけを確認して、全く自分でリサーチしませんでした。後述する現職の不満は多少リサーチすればすぐ露見したことなので、今更ながら後悔しています。後知恵バイアスかもしれませんし、当時はメンタルが病んでいた時期なので仕方ないとはいえど、身から出た錆です。

1-2.転職を決断するまで

 新卒で就職してその化学の知識を使う業務(製品開発)に就きました。以来、少々不満はありつつも転職に思い至るほどのものではありませんでした。

 転機になったのは2023年です。人事異動が発生して、直属の上司を含めてチームが大幅に変わり、業務の方針が大きく変化しました。そこの大きな変化に加え、それまで蓄積していた小さな不満が爆発したため、転職を決意して動き始めました。

 不満を大きく分けると、次の2点です。これがそのまま転職における軸となりました。

  • 挑戦をさせてくれない
     人事異動以降、業務内容のほとんどがルーチンワークで、成長性に欠ける内容でした。そこから打破するために新しい業務に挑戦してみたいと上司に打診したのですが、期間を分けて複数回お願いしても、実力を理由に聞き入れてもらえませんでした。優秀社員として表彰されたにもかかわらず、です。
     一方で、会社案内や社内報では「経験がない仕事でも職場の先輩がサポート」といった情報が多数ありました。そんなわけで、実態と乖離していることから、会社への不信感が大きくなりました。

  • 成果が報酬に反映されない
     成績の良否が給料にほとんど反映されず、あっても微々たる差でした。勤め続けたところで、今後起こるライフイベントに耐えられるだけの年収が得られる希望がない状態だったので、その状況から抜け出そうとしました。ちなみに、現職の年収を聞いてきた面接官からは「やっす(笑)」的な反応が返ることもあったくらいです。

1-3.転職サイトへの登録とエージェントとの面談

 実際に動き始めたのは2023年11月下旬です。勝手がよくわからないので転職サイトに登録しました。土曜日の昼に登録したのですが、その日の夜にはエージェントから電話がかかってきて、キャリアドバイザーからカウンセリングの面談の予約を入れられました。フットワークが軽すぎて内心ビビり散らかしてました。エージェントは割と土曜日や平日夜間でも対応してくれますから、就業しながら転職活動する身としてはありがたい限りです。

 数度の面談で話し合ったのは以下の内容です。3社のエージェントと面談をしましたが、だいたい似通った内容です。

  • 自分の職務上の経歴紹介

  • プライベートな人生の振り返り(たぶん性格やその背景を把握するため?)

  • 何を重要視して転職したいか

  • どの業種or職種の求人がほしいのか

  • 履歴書や職務経歴書の書き方アドバイス、およびその添削

  • これから転職するにあたってやることの明確化

 一応、ググって一番上に出たdodaのページを例として掲載します。

 方針がハッキリしたら、改めて自分で求人を探しました。キャリアアドバイザーも大量に求人を提示したので、それも参考にしました。

1-4.応募~内定

 2023年12月上旬から応募を開始し、その後も他社転職サイトを利用しつつ12月下旬まで散発的に応募しました。某社のキャリアアドバイザーが言った「書類選考が通過するのは10%程度」という言葉を真に受けて、20社ほどまとめてやりました。実際は書類選考が通過するのは平均30~50%らしいですし、結果的に6社くらいまとめて通過したせいで面接の日程調整などに忙殺されたので、良くない判断でした……。

 そこから書類選考が通過した企業に対し、企業研究ができるところは実施しました(一部のベンチャー的な求人はHPすらない状態で、一次面接が説明会を兼ねているようなところもありました)。前述(1-1.項)の通り、新卒就活はエージェントに頼りっきりだったので、恥ずかしながら企業研究すら初めて実施するくらいのレベルでした。

 普通のエージェントだとどの会社でも通じるようなよくある質問事例を紹介する資料を共有する程度です。ただ、丁寧なエージェントだと、企業研究に必要な情報に加え、エージェントがそれまで蓄積してきた情報をまとめた資料を送ることさえあります。「蓄積した情報」を具体的に書くと、下記のようなものです。

  • 企業がよくする質問

  • 企業が見ているポイント

  • 見送りとなった求職者へのありがちなフィードバック集

 これを基に練習をし、12月中旬から散発的に面接へ挑みました。ちなみに、面接は自宅から近い1社だけ対面で実施し、ほか8社は全てオンラインで行いました。最終面接だけ対面で実施する会社は2社ありましたが、どちらも一次面接で終わりました。

 最初は、ITエンジニアと並行して化学系の学歴&職歴を活かせる求人にも応募していました。しかし、転職活動をしていくなかで化学系の業務について勉強していくビジョンが見えなかったので、12月下旬からITエンジニア一本に絞り、それ以外の職種は辞退することにしました。

 結果、1月中旬に志望度そこそこの会社から、1月下旬に志望度の高い会社から内定を頂いたので、そこで転職活動を終了しました。転職活動開始から2か月かかりました。転職サイトをパッと見る限りだと、転職活動(内定まで)は平均3か月かかるそうです。また、厚労省が出している「令和2年転職者実態調査の概況」だと、転職開始から離職まで3か月以内であるケースが約7割、6か月以内だと約9割にもなります。

令和2年転職者実態調査の概況」より筆者作成

 ちなみに、応募から内定までは、2社とも面接2回で2~3週間ほどかかりました。見た求人の中だと、面接1回のみで、応募から最短1週間で内定を出すと主張している求人もありました。

2.転職のスタッツ

 途中まで(11社)は化学系の学歴&職歴を活かした転職活動も並行していたところをIT一本に絞ったので、その分だけ途中で辞退したものがあります。

3.転職活動をするまでに役立ったこと


3-1.資格取得

 転職活動を始めるまでの4年半程度で資格を6つ取得しました(QC2級、工業英検2級、Excel VBA スタンダード、基本情報、応用情報、TOEIC L/R 850点)。別に何かに役立てるつもりはなく、ただ単に自己研鑽と資格奨励金のためにやっていたので何かに役立てる想定をしてなかったのですが、予想外に役立ちました。ポテンシャル採用特有の事象だと思いますが。

 どう役に立ったかを以下に箇条書きします。

  • 履歴書や職務経歴書に箔がつく(書類選考の通過率もたぶん上がる)
     書けることが増えますし、日々勉強していることに説得力を持たせられます。自分の転職軸が「新しい環境への挑戦」「スキルを伸ばせる環境」だったので、なおさら良かったです。

  • 面接時でも評価してもらえるし話のネタにもなる
     一次面接で言及してこなかったのは1社だけで、ほとんど高評価を得られました。加えて、勉強する過程で人生の糧になった資格もあったので、話すネタを作るという面でも役立ちました。
     特に評価されたのは、応用情報とTOEIC L/R 850点です。TOEICについては、ITエンジニアに限らず「英語ができる方歓迎!」という求人にはどこでも評価を頂けました。ぶっちゃけTOEIC850点程度だと大した英語力がなくても取れるのですが、評価されました。そう考えるとコスパのいい資格ですね。
     ただ、3回に1回くらいは「その資格から何が得られたか(業務に役立てられたか)」とも聞かれました。なので、勉強&受験する意味が分からない資格をわざわざ受けてアピールしようとするのは危ない気がします。

  • 資格補助で月収が上がる求人もある
     ITではないですが、私が受けた求人の中では、手持ちの資格だけで月25,000円補助が出るものもありました。レアケースっぽいですが。

3-2.多少なりともプログラミングで何かを作った実績

 未経験を募集しているとはいえど、今までプログラミングを用いて作ったものはあるかを問われます。本職の人やちゃんとポートフォリオを用意できる人に比べればちっぽけなものですが、私の場合は現職の製品開発で、プログラミング(VBAなど)を活用した業務効率化や自動化を達成できていたので、その経験から語れることが多かったです。

 以下に、paizaに掲載されているITエンジニアの未経験募集における頻出質問4つ掲載します。回答例まで掲載すると長いのでリンク先を参照してほしいのですが、実感としては頻出どころか全て必出です。

・なぜ転職しようと思ったのですか?
・なぜ、未経験のエンジニア職を希望しているのですか?
・これまでにどんな勉強をしてきましたか?
・将来、どんなエンジニアになりたいですか?

参考:https://paiza.jp/en_try/advice/Interview-tips-faq

4.初めて&未経験職種の転職で大変だったこと


4-1.業界に対する知識が足りなかった

 転職ありきで行動しはじめたので、そもそもIT業界に関する知識がほとんどありませんでした。「ITエンジニア」という一括りでしか認識していなかったので、具体的に何があるかわかっていませんでした(というか、今でも怪しい)。例えば、以下のようなところです。

  • 希望する職種は何か。システムエンジニア?開発?インフラ?

  • 受託開発、自社開発、SESはどう違う?

  • ロードマップorキャリアパスはどういう流れ?

 求人そのものは転職アドバイザー任せにすることも可能です。しかし、ここは3-2.項で挙げた面接の頻出質問「将来、どんなエンジニアになりたいですか?」にも繋がってくる話なので、答えが明確でないと面接官にアピールができません。志望する業界の構造がどういったものか、ある程度自分の中で消化しておく必要があります。

4-2.勤務しながらの日程調整や連絡

 これが本当に大変でした。自分の場合は2.項で挙げたように書類選考が12社通ったので、その各々に対して面接日程の調整をしましたし、一部の企業は適性検査の受検も要求してきたので、それの対応もしました。その結果、山ほどメールやLINEが飛んできたので、いちいち対応する必要がありました。家に帰って対応していたらもう寝る時間になっていた、ということも多々ありました。また、複数の転職サイトを活用していると、それだけ連絡の窓口があるということなので、情報の見落としも発生しました。

 加えて、帰宅後でも間に合う時間(19時以降)で面接してくれる会社も多いとはいえ、日中以外対応できない会社もありました。その場合、有給休暇で半日か一日休んで予定を確保しないといけないので、業務の調整も要求されます。よほどの関係値がないと「転職活動するので有給取ります」なんて言えないですから、コッソリとやる必要があります。転職活動がバレたら、嫌がらせをされたり時季変更権を行使してズラされる可能性も出てきますし(時季変更権は要件が厳しいので、可能性は低いと思います)。

一見強力な権利に思える「時季変更権」ですが、当然、会社の思い通りに行使できるわけではありません。

従業員側の「時季指定権」が不当に制限されることのないように、判例においては、「事業の正常な運営を妨げる場合」にあたる範囲を狭く解釈しているため、安易な時季変更権の行使は、違法と判断されることも少なくありません。

あくまでも、従業員の年次有給休暇の時季指定が「事業の正常な運営を妨げる場合」に限り、行使できる権利であることを覚えておきましょう。

引用:https://go.chatwork.com/ja/column/work_evolution/work-evolution-248.html

5.転職を検討している人に向けた教訓


5-1.転職する気がなくても基礎的な情報くらいは集める

「転職はちょっと興味あるけど、よくわからないし、別に今積極的に動きたいほどでもないし……」
 このような転職へのモチベーションが高くない人であっても、ひとまず転職サイトに登録して求人を見て情報だけ集めておくのも大事です。新卒就職をしたときの自分はそれが足りなかったので失敗した節があるので(1-1.項)、ブーメランもいいところですが……。

 以下に、箇条書きで理由を述べます。

  • 転職までのプロセスがわかり、有事に備えられる
     私は転職のセオリーを知らないまま応募をたくさん投げたので、求人への応募時期がかなりバラバラになりました。最速と最遅で比べると一か月空いていました。先に内定が出た企業の承諾期限が、ほかの会社の内定が出る前に提示されて困る可能性があります(私は運よくそうなりませんでした)。
     一度調べて概念を把握しておけば、後で転職を考えた時に初歩的なミスを犯さずに機会を最大限活用できます。

  • 他社の待遇がわかる
     求人を見るということは、必然的に待遇を目にすることになります。もしかすると、同業他社では年収が100万上がるケースがあったり、昇給額が大きかったり、福利厚生が充実しているかもしれません。それが不満点と合致する場合、それまであまり意識していなかった転職が魅力的に見える可能性があります。
     転職サイトの求人に魅力がないのであれば、それはそれでいいと思います。しかし、少なくとも他社の求人を見るまでは良し悪しの判断すら下せません。

  • 転職に必要な条件がわかる
     キャリア採用ならともかく、ポテンシャル採用であれば必須要件は「ものづくりが好きな人」「細かいことを追求するのが好きな人」といったような無条件に近いもので、あっても「社会人経験〇年」「IT系資格」とかです(歓迎条件で「英語の読み書き」「統計学の知識」「javaの使用経験」といった、ただの未経験を求めていない姿勢を醸しだす求人もあります)。
     ただ、そんな中で唯一引っかかる可能性があるのは年齢です。キャリアアドバイザー曰く、売り手市場であるITエンジニアの求人を出している会社は、社員を囲うための教育をし、長期的に育てる意識をしている傾向にあるそうです。そのため、「長期キャリア形成のための採用」という名目で年齢制限がある求人がとても多いです。実際、以下のように、未経験業種なら20代までがベターと表現する転職サイトが多々見受けられます。ポジショントークかもしれませんが、私の印象でも大半の求人の対象年齢は20代までですし、高くても35歳までです。

30代は「即戦力」が求められる
基本的に、企業が30代の転職者に求めるのは「即戦力」としての働きです。

30代前半の転職者に対しては、自社にはない知見を生かして早期に業績アップに貢献することや、管理職・管理職候補として、中長期的に中核的な存在になっていくことが期待されます。選考では、前職での実績やスキルが大きなウェイトを占めるでしょう。
30代後半では多くの場合、すぐに管理職としてチームをマネジメントする管理能力が求められます。選考では後輩の育成・指導、マネジメントの経験などが問われ、組織を俯瞰できる力があるかどうかが重視されるでしょう。

このように30代の求職者は20代のようなポテンシャルではなく、実務経験や実績によって評価されることが多いため、経験値や専門性でアピールできない未経験業界・職種への転職は、難易度が上がることが多いのです。

「未経験OK」の求人自体が少ない
30代をターゲットにした求人には「未経験OK」を掲げるものがまだ少なく、特に30代後半になると未経験で採用される数が一気に減る傾向があり、求職者にとって選択肢が少ないことも、転職の難易度を上げる一因になっています。従って30代で未経験業界・職種への転職を目指すのなら、できるだけ早めに行動を起こすことが重要になるでしょう。

引用:https://www.r-agent.com/guide/article16078/

 また、2016年12月に独立行政法人 労働政策研究・研修機構が出した「調査シリーズNo.161『企業の人材ニーズ等に関する調査』」によれば、今後、正社員採用においてポテンシャル(採用後の成長)を重視すると回答した年齢の上限は29歳以下が半数、34歳以下も含めると4分の3を占めます。

調査シリーズNo.161『企業の人材ニーズ等に関する調査』」より筆者作成

 対象年齢には法的根拠はありませんから、応募自体は可能です。ただ、企業が要求する条件を一つ満たさない以上、ライバルより不利な競争を強いられます。当然、キャリア採用の業種・職種であれば、具体的な経験を必須要件として求めてきます。

 そんなわけで、転職する気がないからといって情報を一切集めないと、いざ転職に挑みたい時には必須条件が満たせない可能性があります。情報さえ集めておけば、未経験な職種に対していつまでに転職する必要があるかを考えられます。経験者枠を狙いたいのであれば、必須条件を満たすべく業務への配置換えを打診することも可能です。転職する気がなくとも、情報収集のために転職サイトに登録したり、エージェントに相談したりするだけでも大丈夫です。

 ちなみに、キャリア採用だと必須条件がガッツリ書かれているものが散見されます。一時期検討していた化学系の求人だと、こんな感じの必須要件がありました(それぞれ別の求人です)。

  • 樹脂成形の実務経験〇年

  • 触媒開発の実務経験〇年

  • 工場の製造プロセスの建設計画、およびその保守経験

  • 品質管理業務に携わった経験

  • 有機合成経験(研究室、業務問わず)

  • NMRやGCの使用経験

5-2.何かに打ち込んだ方がいいのは就職後も同じ

 新卒就職においてはガクチカ(学生時代に力を入れたこと)を問われたと思います。転職においてもこれは同様です。転職をするということは、今いる会社からの退職を意味します。ですから、面接官に自分を雇うことの価値に加えて、すぐに辞めないということを示す必要があります。

 転職面接においては、現職の業務を掘り下げる質問がされます。よくされる質問として、マイナビで掲載されているものが以下です。私の実感としても、どの面接でもこの中から2~3個は聞かれました。

今のあなたの課題は何ですか?
仕事での誇れる実績や成功体験はありますか?
仕事で大きな失敗をしたことはありますか?
これまでで、最も厳しかった仕事は何ですか?

引用:https://tenshoku.mynavi.jp/knowhow/mensetsu/qa12/

 このとき、業務を真面目に取り組んでいなければ、こういった突っ込んだ質問をされると答えに窮します。仕事を通して成長できていないからです。未経験業種への転職する場合は、3-2.項で挙げたように、「なぜこの業界を志望するか」「どういった勉強をしてきたか」を問われます。このときも、その業界に対する原体験が薄いと話す内容も薄くなりますから、一時的な興味だけで動くと大変です。

 つまり、現職に不満があったとしても、仕事やプライベートでの努力を怠らないことで、書類選考や面接を有利に進められます。それこそ、巷で「役に立たない」とか言われる資格も、ある種の原体験です。

 もし、現職に資格奨励金のような制度があるなら、目先の金に釣られて勉強してみてもいいでしょう。転職する気がなくても、意外と人生の役に立ったりしますよ。個人的にオススメなのは技術英検です。この資格の勉強を経て、自分の文章を簡潔に、かつ情報を一意に定めるためのエッセンスを理解できましたし、それを点検するクセがつきました。

5-3.応募する時期は合わせる

 パッと見た限り、ほとんどの求人において応募から内定までは面接2回です。職種にもよりけりのようですが、dodaのデータでも似たような結果が出ています。

転職の面接は平均2.2回。3分の2は面接2回
転職の面接の平均回数は2.2回で、回数別の割合を見てみると、2回が最も多く67%、次いで3回(25%)、1回(6%)、4回以上(2%)が続きます。

引用:https://doda.jp/guide/saiyo/002.html
引用:同上
上から2番目の「金融系職種」で少し驚きました

 面接2回の場合、日程調整などを含めると、応募から内定までにかかるのは2~3週間程度です。応募する時期にばらつきがありすぎると、内定承諾を迫られ、内定が出た企業をストックして比較することが難しくなります。とはいえ、内定承諾に法的効力はないので、断ろうと思えば入社2週間前までに申し出れば大丈夫です。

Q 内定承諾書を出した後の内定辞退は違法ですか?損害賠償を請求されることはありますか?
(中略)

A 内定辞退が違法とされるケースは限定的であり、損害賠償を請求される可能性も低いでしょう。しかし、できるだけ早く、誠意をもって電話で会社にその旨を伝えるべきでしょう。
(中略)
一般的には、内定承諾書にサインをした段階で「労働契約を締結した」ものとして扱われます。そのため、内定辞退をすることは、「労働契約を解約する」ということになります。労働契約の解約については、民法において、いつでも解約の申し入れができることになっており、会社に対して解約の意思を伝えてから2週間後に契約が解消されると定められています。

引用:https://doda.jp/guide/lesson/010.html

 ただ、当記事を見ている人たちはいい大人でしょうから、自己都合だけを考えて人の迷惑を考えないわけにもいきません。引用の通り、会社も受け入れのために事務手続きを踏んでいます。やむを得ない事情があるならともかく、むやみに内定を承諾してから取り消す必要もありません。その会社がいずれステークホルダーになる可能性もゼロではありません。無用な敵は作らないようにしましょう。

 そういったモラルの問題を抜きにしても、応募時期をバラバラにすると、転職活動が長引きます。現職に不満を抱いているからこその転職ですから、その不満を抱えたまま就業しつづけるのは精神衛生的に良くないです。加えて、転職活動それ自体が時間を奪いますから、長期戦にすると身も心も消耗します。

5-4.有給は意識して取得するよう努める

 4-2.項で述べたように、企業によっては面接の時間帯が平日の日中しかないこともあります。フレックス制が導入されていない職場である場合、有給休暇を取得する必要があります。いずれにせよ、転職活動をバラすわけにもいきませんから、理由は伏せる必要があります。

 とはいえ、普段から面倒くさがって労働基準法ギリギリの年5日間しか有給を取得しないような人が、突然そういった制度利用しまくると、何か裏があると思われます。というより、「転職活動だろうな」と噂されます。たまには利用しましょう。転職とは関係なしに、有給を消化しきれずに消滅なんてことが起きたら悲しいですからね。

5-5.3か月はプライベートが転職活動に費える覚悟をする

 ちょくちょく触れていましたが、これは覚悟しましょう。キャリアアドバイザーがいればいくつか事務手続きを簡略化できるとはいえど、求人探し・応募・日程調整・面接対策・面接といったタスクは避けられません。

 転職活動に割く時間について、dodaは以下のような記述をしています。実感としてもそこまで乖離していません。

そもそも転職活動には、どれくらいの時間が必要なのでしょうか。一般的に、転職活動を始めてから内定を得るまでに2~3カ月程度かかると言われます。その期間中、週に一度は面接に行く時間が取れ、さらに毎日1時間程度は転職活動のための時間を割けるというのが、最低限、必要な時間の目安です。毎日の1時間は、求人情報を探して企業研究したり、応募書類作成や面接準備をしたりするための時間になります。

引用:https://doda.jp/guide/5min/023.html

 退職したあとに転職活動をすることも、選択肢の一つになるかもしれません。時間にかなり余裕ができます。しかし、それはそれで別のリスクがあることに留意しなければなりません。

退職してからの転職活動における一番のデメリットは「安定した収入がなくなる」という点です。収入がない不安から早く転職先を決めようと焦り、ミスマッチな転職先を選んで後悔する可能性があります。内定を得た企業に納得できない場合でも、金銭面の問題で入社するしかないケースもあるので注意しましょう。

また、転職活動が長引くことで「ブランク(空白期間)ができてしまう」という点もデメリットと言えます。納得のいく転職先から内定を得ることができず、ブランクが長引いてしまうケースもあります。こうした場合、仕事勘が鈍ったり、スキルが陳腐化してしまったりする恐れがあるでしょう。

さらに、1年などに渡る長期間のブランクができてしまうと、応募企業から「ブランクの期間に何をしていたのか」を懸念され、転職活動に不利になる可能性もあります。

引用:https://www.r-agent.com/guide/article18530/

 前述(1-4.項)の通り、転職活動は平均で2~3か月かかります。とはいえ、時間をかければかけるほど良いとは限りません。最初に応募して内定出たところで不満がなければ、それでもいいでしょう。

 ただ、転職活動が続くと、連絡に忙殺されたり、日程調整に苦労したり、その中で志望度の高い企業から見送られたりと、メンタルに負荷がかかります。就業しながらなら転職活動をする場合、そこに仕事のプレッシャーも加わります。すると、次第に「面倒だからもうここに内定が出たらそれでいいや」というマイナスの発想になり、条件のハードルがどんどん下がります。

 転職をしても、もしかしたら情報の見落としがあったり、あるいはミスマッチが生まれたりするなど、転職しないほうがマシになるリスクは否定できません。その結果1年以内の短期離職に陥り、転職回数がいたずらに増えると、その後の転職活動が不利になるリスクも孕んでいます。

引用:Youtube「転職魔王② ~短期離職や転職回数は転職に影響するのか~」内のスプレッドシート
同上

 ですが、検討をすればそういったリスクを減らすことはできますし、現職がそのまま安定するとも限りません。今後の人生数年(数十年)と転職活動にかかる2~3か月、犠牲にするべきはどちらか?この二元論で考えれば、間違いなく後者です。覚悟を決めてやりましょう。

6.まとめ

 当記事では、化学のバックグラウンドを持つ筆者がITエンジニアへと転職するにあたって、個人の見解を述べました。その内容は、以下の通りです。

  • 転職活動でやったこと

  • 転職活動で役立ったこと

    • 資格取得

    • プログラミングにおける成果物

  • 転職で苦労したこと

    • 業界知識の無さ

    • 日程調整

    • 諸連絡

  • 得た教訓

    • 情報を集めて備える

    • 就職後も物事に打ち込んでおく

    • プライベートの時間が費える

 ただの経験談でしかありませんが、転職を検討している人の役に立てれば幸いです。

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