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「ネギは硫化アリルがあるから、わかめとの食べ合わせはご法度」とされる根拠が謎な件

雑な概要
「ネギの硫化アリルがカルシウムの吸収を阻害するから、わかめと一緒に食べちゃだめ」って話があるけど、ウソっぽい。


■ ネギに含まれる硫化アリルがカルシウムの吸収を妨害する……のか?

ふと読んだ記事にこんな記述がありました。

わかめにはカルシウムが含まれていて、ねぎに含まれている成分がわかめのカルシウムの吸収を妨げてしまいます。わかめとねぎをみそ汁に一緒に入れるのは避けましょう。

【みそ汁のNG】やってたらすぐにやめて!手作りみそ汁のNG行動4選!わかめとねぎは一緒に入れないでね

そうなんだ!知らなかった……と思ったのですが、よく見てみると「ねぎに含まれている成分」とあります。曖昧だ!

しかし、ここはインターネット。少し調べればその原因となる物質がすぐ出て来ます。どうやらそこそこ知られた話のようで、「わかめ ねぎ 食べ合わせ」と調べると様々な記事が出ます。医学博士による見解が紹介された記事があったので、掲載します。

ワカメはカルシウムが豊富で、100グラムあたりで比較すると牛乳の約7倍多く含まれている。みそ汁の中に一緒に入れる具としては、シメジが望ましい。スタジオ(※編注【この差って何ですか?】(TBS系)2017年6月13日放送のことだと思われる)に登場した白澤抗加齢医学研究所の所長で医学博士の白澤卓二氏によると、腸管からカルシウムを吸収するのに絶対必要なのがビタミンDで、シメジには豊富に含まれているという。なお生シメジを細かく裂いて3日ほど天日干しするだけで、カルシウム量が倍増するから覚えておきたい。

逆に、ワカメの「お供」にしてはいけないのが、意外にもネギだ。

白澤氏「カルシウムの吸収を阻害してしまうんです」

原因は、ネギに含まれる硫化アリルという成分だ。生のネギをワカメと共にみそ汁に入れるのは避けたい。ただし硫化アリルは熱に弱いので、出汁と一緒にネギを煮立たせればカルシウムの吸収を邪魔しなくなる。

みそ汁の具にネギとワカメはご法度 豊富なカルシウムが「無駄」になる

というわけで、硫化アリルがカルシウムの吸収を阻害するというのが理由のようです(※)。ただ、医学博士とはいえどテレビスタジオでの発言ですから、これを証拠とのは少々横暴です。まあ、これだけ有名な話であれば論文などのソースが出るでしょう……。


一部、リンのせいにしている記事もありました。確かに、リンの過剰摂取によってカルシウムの吸収が阻害されるというのは厚労省も言っています。ただ、リンはあらゆる食品に含まれており、ネギの件がなくとも過剰摂取が問題視されるような栄養素です。

日本人の栄養摂取基準によれば、成人男性(18歳以上)のの目安量が1,000mg/日、耐容上限量が3,000mg/日です。それに対して、日本食品標準成分表(八訂)によれば、ネギのリン含有量は1本(100gと仮定)食べても27mgです。むしろ良心的

■ 日本語でも英語でも出てこないソース


色々と調べたのですが、「硫化アリルがカルシウムを阻害する」的な主張をするアカデミアのソースがありません。ドメインをac.jpやgo.jpに限定したとたん、出てこなくなります。それどころか、ネギはカルシウムもあるし硫化アリルもあることを前面に押す記事すら出るほどです。

 いずれのねぎもカロテン、ビタミンC、カルシウム、鉄などの栄養素のみならず、アリシンを豊富に含んでいる。白い根の部分にはビタミンCが多く含まれている。
 独特の香り成分は硫化アリルで、アリシンから作られる。アリシンは疲労回復効果があるビタミンB1の吸収を助ける作用があると共に、血行を良くして体を温めることから冷え性予防、食欲増進、消化促進、健胃などに効果が期待できる(表1)。

https://www.alic.go.jp/content/001202624.pdf
最後の表1は記事中にある栄養価の表のこと

英語圏においても同様です。Googleで言語を英語に指定して「wakame green onion misosoup」と調べると165,000件、カルシウムを足して「wakame green onion misosoup calcium」だと11,000件ヒットします。しかし、タイトルをパッと見る限りでは、その内容は単なるレシピかインスタント商品で、その栄養素が表示されているだけでした。

カルシウムを阻害しているのは硫化アリルという話だったので、「diallyl sulfate calcium」で調べたり、末尾を「reduce calcium absorption」とかで調べたりしましたが、出てきません。念のため生成AIにも聞いてみましたが、見事にハルシネーションが返ってきました。

というわけで、結論としては硫化アリルがカルシウムを阻害するという話は、日本国内にあるニュース記事でしか出てこないことになります。

■ この話ウソっぽくね?

人種ごとに栄養価の吸収率や疾病の罹りやすさが異なる、という話はよくあります。前者は「日本人(アジア人)はアルコールに弱い」あたりが有名です。なので、英語圏で情報が出ないだけであれば、日本人(アジア人)だけが硫化アリルでのカルシウム吸収阻害が起きる可能性も否定できません。ただ、日本語のアカデミアでもソースが見つからないとなると、ただ単に広く信じられた謬説な気がしてなりません。

■ 蛇足 医学の知見がない私がよくわかってないだけ?

一応ヒットしたうえでなんとなく関係ありそうな医学論文に目を通しましたが、知見がなくて何を言っているのかわからないものがほとんどでした。例えば「硫化アリルはMadin-Darby canine kidney cellsのカルシウム動員を誘発する」とか「Sprague-Dawley ratで試したら、塩化カルシウムによる子宮収縮が硫化アリルの濃度に依存する形で抑制された」とかです。合ってるかは全く保証しません。自分で書いててもなにを言っているんだか全く見当もつきません。

ともかく、私にとってはチンプンカンプンなだけで、医学に知見がある人から見たら関係大アリかもしれません。詳しい人、誰か教えて……。

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