「ネギは硫化アリルがあるから、わかめとの食べ合わせはご法度」とされる根拠が謎な件
雑な概要
「ネギの硫化アリルがカルシウムの吸収を阻害するから、わかめと一緒に食べちゃだめ」って話があるけど、ウソっぽい。
■ ネギに含まれる硫化アリルがカルシウムの吸収を妨害する……のか?
ふと読んだ記事にこんな記述がありました。
そうなんだ!知らなかった……と思ったのですが、よく見てみると「ねぎに含まれている成分」とあります。曖昧だ!
しかし、ここはインターネット。少し調べればその原因となる物質がすぐ出て来ます。どうやらそこそこ知られた話のようで、「わかめ ねぎ 食べ合わせ」と調べると様々な記事が出ます。医学博士による見解が紹介された記事があったので、掲載します。
というわけで、硫化アリルがカルシウムの吸収を阻害するというのが理由のようです(※)。ただ、医学博士とはいえどテレビスタジオでの発言ですから、これを証拠とのは少々横暴です。まあ、これだけ有名な話であれば論文などのソースが出るでしょう……。
■ 日本語でも英語でも出てこないソース
色々と調べたのですが、「硫化アリルがカルシウムを阻害する」的な主張をするアカデミアのソースがありません。ドメインをac.jpやgo.jpに限定したとたん、出てこなくなります。それどころか、ネギはカルシウムもあるし硫化アリルもあることを前面に押す記事すら出るほどです。
英語圏においても同様です。Googleで言語を英語に指定して「wakame green onion misosoup」と調べると165,000件、カルシウムを足して「wakame green onion misosoup calcium」だと11,000件ヒットします。しかし、タイトルをパッと見る限りでは、その内容は単なるレシピかインスタント商品で、その栄養素が表示されているだけでした。
カルシウムを阻害しているのは硫化アリルという話だったので、「diallyl sulfate calcium」で調べたり、末尾を「reduce calcium absorption」とかで調べたりしましたが、出てきません。念のため生成AIにも聞いてみましたが、見事にハルシネーションが返ってきました。
というわけで、結論としては硫化アリルがカルシウムを阻害するという話は、日本国内にあるニュース記事でしか出てこないことになります。
■ この話ウソっぽくね?
人種ごとに栄養価の吸収率や疾病の罹りやすさが異なる、という話はよくあります。前者は「日本人(アジア人)はアルコールに弱い」あたりが有名です。なので、英語圏で情報が出ないだけであれば、日本人(アジア人)だけが硫化アリルでのカルシウム吸収阻害が起きる可能性も否定できません。ただ、日本語のアカデミアでもソースが見つからないとなると、ただ単に広く信じられた謬説な気がしてなりません。
■ 蛇足 医学の知見がない私がよくわかってないだけ?
一応ヒットしたうえでなんとなく関係ありそうな医学論文に目を通しましたが、知見がなくて何を言っているのかわからないものがほとんどでした。例えば「硫化アリルはMadin-Darby canine kidney cellsのカルシウム動員を誘発する」とか「Sprague-Dawley ratで試したら、塩化カルシウムによる子宮収縮が硫化アリルの濃度に依存する形で抑制された」とかです。合ってるかは全く保証しません。自分で書いててもなにを言っているんだか全く見当もつきません。
ともかく、私にとってはチンプンカンプンなだけで、医学に知見がある人から見たら関係大アリかもしれません。詳しい人、誰か教えて……。