質的研究法「M-GTA」を活用した研修プログラム設計(第1回)
三井物産人材開発の猪嶋です。私たち三井物産人材開発は、日々多くの方が発信してくださる情報を業務や学びに活かしており、情報発信してくださる皆様に感謝しています。当社における取り組み事例が、企業での人材開発にたずさわる皆様に少しでもお役に立てることがあればと思い、今回は「M-GTAの分析手法を活用した研修プログラム設計」に関する取り組み内容についてご紹介します。
昨年夏、事業経営人材の育成・活用に向けたプログラムの新設にむけ、プロジェクトの企画担当を担うことになり、早速課題の特定に着手しました。社員インタビューを手掛かりにすることを決めたのですが、以前同じようなプロジェクトでインタビューデータを活用し切れなかった記憶があり、情報収集目的で参加したセミナーで知ったM-GTAという研究法を用いてみることにしました。
M-GTAの分析手法を活用した成果
M-GTAに関して、ゼロから書籍を通じて独学で学びながら、今回の分析に臨みました。素人がゆえに分析には大変苦労しましたが、学術的に裏打ちされた方法論を活用することで、研究者の目で見れば穴だらけだとは思いますが、これまでの分析と比べて論理的かつ独創的なアウトプットを出せたという手応えがありました。
分析結果を対象企業の役員にプレゼンした結果、複数の役員から「納得感がある」と支持を受け、分析結果をベースにした研修プログラムもGOサインを得ることが出来ました。さらに、ある役員から同じ分析手法を用いて異なる分析焦点者を対象とした新たな分析依頼を受けました。
このレポートでは、私自身が実際に行った「事業経営人材育成プログラム策定のための質的データ分析」を題材にして、以下のポイントをご紹介します。
①インタビュー時のポイント
②インタビューデータの分析
③分析結果の研修プログラムへの活用
M-GTAとは
本題に入る前に、今回はM-GTA(修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ)について簡単に説明します。
1960年代にデータに密着した分析から独自の理論を生成する質的分析手法グラウンデッド・セオリー・アプローチを、研究論、認識論、技法において修正を行ない、「より実践しやすい」ように改善された研究法です。研修者の方々は、より精緻な分析を行いますが、私が今回活用した分析手法は以下のものです。
■分析焦点者の設定
インタビュー対象者の定義づけを行うこと。面接対象者の選定の基準になり、データの解釈の際に経由する視点となり、分析結果の一般化可能な範囲を規定するものとなる。
「焦点」という言葉にあるとおり、定義づける際はカメラのピントを合わせる作業のように、絞り込みの強弱が「分析の詳細度」「分析結果の適用範囲」に影響する。
多様性を含むインタビューデータの特性から、あまり絞り込みすぎず、実践的な適用範囲を広くしておく方がよい。
■概念の生成
各インタビューデータを文脈・意味を含めて細かく分析し、共通項やキーワードを見つけること。M-GTAでは、データの意味の解釈を「分析」とし、そこから生成されるもの「概念」と呼び、理論を構成する最小単位をしている。概念生成の際には「分析ワークシート」を活用する。
■カテゴリーの生成
概念のまとまりごとに上位概念を抽出し、見出しを付けて構造化すること。
分析プロセス全体の全体の中でも理論生成の成否にかかわる非常に重要な作業になる。
概念の相互の比較から関係性を見出すため、図示しながら、考えることが有効。
カテゴリーの生成後、カテゴリーの相互の比較から関係性を見出すことで理論生成する。
初学者の私ではありますが「インタビューから得たデータを余すことなく活用する!」という目標をもって、分析に臨みました。
次回はインタビュー時のポイントについてご紹介いたしたいと思います。