見出し画像

5年前、世界一周に行ったらたくさん打ちのめされた話

今からちょうど5年前くらい。トータルで8ヶ月ほどかけて世界一周に行きました。

これまで(面倒になってしまい)旅の話はあまり書かなかったのですが、今になって「だからあの時こうなったのか」という発見が色々あったので、一度書いておこうと思います。

(※トップ写真はモロッコ・サハラ砂漠の朝日)

---

世界一周を「夢」「楽しい日々」だと思っていたお花畑脳な自分にビンタをかましたい

画像1

(オランダ:のどかな春の景色)

私が世界一周に憧れるようになったのは、前職の上司が婚約者さんと世界一周に行っていたから。上司はその後めでたくご結婚。

「なにそれ素敵すぎる!私も絶対にやりたい!」となり、20代のうちに世界一周に行っておきたいと思うようになりました。

「世界一周」って響きだけでワクワクするし、きっと楽しい日々に違いない。よし、この夢を叶えるぞ。

新卒から頑張ってきた仕事が落ち着いてきたタイミングを見計らって、当時付き合っていた彼(フラグというかネタバレ)と世界一周を決行。

飛び出してみて、待っていたのは、夢というより修行の日々でした。

---

消耗しやすさをまったく考慮せずに旅程を詰め込んだ自分にビンタをかましたい

画像24

(インド名物・交通事情をガン無視する牛さん)

当時は概念自体知らなかったのですが、私はHSP(いわゆる繊細さん)に当たり、ちょっとしたことですぐに消耗してしまいます。

とはいえ、「世界一周に行きたい!」となっているくらいなので、変化を嫌う訳では全くありません。

厳密に言うと、HSS(High Sensation Seeking:刺激探求型)のHSPというやつで、外交的な側面も持ち、刺激を自ら求めるけど疲れやすいという特徴があります。

画像3

先日RPG風にHSPを例えた4コマを描いたのですが、まさにこれを考慮していなかった。

自分の消耗しやすさを計算に入れず、興味の赴くままに予定や移動を詰めこんでしまった結果。

めちゃくちゃ疲れた。

めちゃくちゃ疲れた(2度目)。

途中から観光地も度々スルーするようになり、休息日(と言いつつ仕事に当てようと思っていた)は1日ほとんど使い物にならないという時も多々ありました。

画像4

(スロベニア:絶景スポットでも、天気最悪だと美しさ7割減な件)

---

「世界一周中、旅してるだけだし、ある程度稼ぎながら行けるっしょ」と世の中舐めてた自分にビンタをかましたい

世界一周しながら、ブログを更新したり仕事をしている人の例もちらほら見かけていました。

「私もこれやりたい!移動時間もたくさんあるし、できるはず!」

という訳で、フリーランスとして、雑誌やWebのライターだったりマーケティングのお手伝いをしたりしていたのですが。

もう皆さんお分かりの通り、完全にフラグです。

画像5

(ボリビアとチリ国境近くのRed lakeとラマさん)

新しい国、移動、人との出会い、新しい食べ物、見たことがない景色。

たくさんの感動がありました。

、あまりの刺激の多さに、毎日HPは激減。

ストレスや疲れによって更にHPは減少。

休息日ですらほとんど使い物になりませんでした。まさにこの状態。

画像6

旅って案外タスクが多いことにも気付かされました。たとえばこういうの。

行き先を決める。ビザなどの確認。滞在日数の決定、フライト・滞在先の手配。滞在中にやること、行く場所を決める。言葉が通じない国での対策(大体Google翻訳)。滞在先のホストとの連絡やり取り。パッキング、アンパッキング。現地に着いたら予定していた場所に足を運ぶ。毎回食べる場所を決める。

日々の意思決定やリサーチが非常に多くなり、これを行った先の国すべてでやっていたので、暇な時間って実は少なかったです。ここに仕事が加わるとなると、思った以上に忙しくなりました。

結局仕事に当てられた時間はものすごく限られ、お金を稼ぐスピードと、お金を使うスピードが全然釣り合わない状況になりました。

どのくらい釣り合わなかったかというと、世界一周が終わった時には所持金が10万円ちょっとになりました(リアル)

資産推移を見ると、その時期のどん底感がすごくて笑えます。当時はあんまり笑い事じゃなかったけど。

画像7

ただし「世界一周中何かできる仕事がある」こと自体は良いと思っています。

世界一周中はどうしても基本的にお金をたくさん使うので、ちょっとでもお金が入ってくるのは、精神安定剤として効果的でした。

コロナが落ち着いた後、世界一周をしたいと考えている方(特にHSPさん)にはこう言いたいです。

時間にはたくさんたくさんたくさん余裕を持って、休息の時間を軽んじないことをおすすめします……。お仕事されるなら特に、1箇所1箇所長く滞在するほうが良いリズムで進めると思います。

画像8

(マチュピチュ山:空気薄くて人生で一番辛いハイキングだった)


世界一周中でもおっちょこちょいを炸裂させた自分にビンタをかましたい

私はこんな投稿を書くくらいには元々おっちょこちょいなのですが、世界一周中にも色々やらかしました。

インドのモバイルショップに財布パスポートなど全部入ったリュックをまるごと忘れて去る(奇跡的に見つかったけど)。

フライトの日付を1日間違えて覚えていて、空港に行って自分のフライトが1日前だったことに気付く。

バスで移動していたときに重宝していたジャケットを置き忘れる。

画像9

(インドの列車から。旅行エージェントを使ってもトラブル続きだった)

ほかにも色んなトラブルに逢いました。

おっちょこちょい原因ではないですが、タイに到着して乗ったタクシー運転手さん(英語一切通じない)とコミュニケーションが全く取れず、最終的に何故か夜中の2時半に警察署に連れていかれたり。

人間疲れると、おっちょこちょい度や、やらかし度が格段に上がり、それがまた旅の大きなストレスになります。

---


世界一周して学んだこと

画像10

(チェコ:モラヴィアの大草原に憧れて)

ここまで自分の甘さや反省ばかり書くと、世界一周したことを後悔しているように見えるかもしれませんが、そういう訳ではありません。

私にとって世界一周は「夢の日々」ではなく「感動付きの修行」だったことは事実ですが、その修業を通してたくさんのことを学びました。

---

日本人のパスポートってめちゃくちゃ恵まれてる

画像11

(スリランカのシギリヤロック)

当時の彼が外国人(東南アジア)だったことで、それまで知らなかったことがたくさん見えてきました。

まず、彼のビザが理由で行ける国がすごく限られること。

世界一周のようにノンストップで旅を続ける場合は、ノービザ・アライバルビザ(到着時)・オンラインビザで行けるところに基本的に行き先が限られます。カナダやアメリカにも一旦帰国して取得するビザが必要になるので行けません。

画像12

(ノルウェーのプレーケストールン:すごかったし怖かった)

私たちのルートは、こんな感じになりました。

日本(相手は要ビザ)
→香港(ビザ不要)
→東南アジアすべての国(ビザ不要)
→私はマレーシアに滞在し、相手は一旦帰国してヨーロッパへのビザ取り直し
→スリランカ(簡単に取れるけど要ビザ)
→インド(eビザ)
→ヨーロッパ10カ国くらい(イギリス除く)
→モロッコ(ビザ不要)
→南米3カ国(ビザ不要)
→それぞれの国に一旦帰国

彼のビザが原因でモロッコから南米へのトランジットが上手く行かず、フライトを逃すといったハプニングもありました(金銭的に痛かった)。航空会社を変えたところ普通に行けたので、なかなか理不尽な経験でしたが。

日本人のパスポートって本当に恵まれてるんだな、と何度も思いました。

---

世界一周ふたり旅は究極の相性チェックだった

画像13

(イタリア・ベネツィアのゴンドラ)

「世界一周中に別れて旅が終了する」という悲劇にまではならなかったのですが、世界一周はお互いの良いところも嫌なところもたくさん見える究極の相性チェックになりました。

「おっちょこちょい×HSP×旅」は、ただでさえハプニングと消耗必至のコンボ。

予想外の展開に何度も見舞われ、時には大きなストレスを経験することで、絆が強くなることもあれば、「この先この人とやっていけるだろうか」という不安が大きくなることもありました。

私の場合は残念ながら後者が勝り、帰国してしばらくしてから別れることに。結婚とか話が進む前に決められてよかったなと思っています。

---

想像を絶する景色に出会えた

息を飲むような景色に何度も出会えました。特に南米やモロッコは自分の知らない世界だらけでした。

画像14

(有名なウユニ塩湖での朝焼け)

絶景に出会えると、自分の存在の小ささを感じられて、日々の悩みなどが取るに足りないものに思えるので、その経験をたくさんできたのも良かったです。

画像15

(モロッコ。ピンクの山肌が不思議な感じ)

---

観光地にこだわる必要ってあんまりない

新しい場所に着いて、せっかくなので観光スポットをチェックする。ほとんどの人が旅行でやると思います。

ただ、東南アジアを巡っていた時に思ったのは、観光地ばかり巡っていてもあまり記憶に残らないということ。

画像16

(タイだったと思う)

特に仏教エリアを巡っていた頃は、「昨日もブッダ、今日もブッダ……。金色のブッダ、青のブッダ……」みたいな感じになって、正直飽きました(仏教徒の皆さんごめんなさい)。

画像17

(ラオ…ス…?多分)

もちろん、観光地って「人が足を運ぶ価値があると感じる場所」なので、行った方が良い場所もたくさんあります。絶景に出会えることもあります。

ただ、案外後々心に残るのは「アユタヤへの列車で移動していた時、こんな子どもがいて可愛かったな」「ホーチミンのバイク、想像以上にやばかったな」なんていう些細な日常の瞬間の方が多かったりします。

---

人の温かさに出会えた

ほとんどの場所で、Airbnbを使って世界一周をしました。

画像18

(タイのAirbnbのホストさんの、気の利いたお出迎え)

知らない人と話すことが得意ではないので消耗する日もありましたが、場所によってはホストの人と一緒にごはんを食べたり、参考になるローカル情報を色々もらえたり。

Airbnb以外でも心温まる出会いがありました。ラオスで道に迷った時にも、インドで電話を誰かに借りなければいけない状況になった時にも、手を差し伸べてくれる人がいました。

人の温かさは旅が終わった後でも良い思い出として残り続けています。

画像19

(ボランティアもさせてもらえたカンボジアのAirbnb。もう一度行きたい)

HSPだけど、けっこうタフになった

HSP自体は特性で、大半が遺伝によるものなので、私はこれからも敏感さを持った人間として生きることに変わりはありません。

ただ、ダメージを受けてはHPを回復させることを何度も何度も繰り返していくうちに、レジリエンス(逆境から立ち直る力、回復力)が高まったように思います。

「もうちょっとのことではへこたれない気がする」という謎の自信まで生まれました

消耗は今でもよくするけど。

画像20

(アンコールワット:この後お菓子を狙われ猿にプチ襲撃される)

---

取り戻せるものと、取り戻せないもの

私たちが世界一周をしている中で最も衝撃的だったのが、数日前に訪れたインドネシアのスタバがISISのテロに遭ったこと。

治安的に問題があるわけでもないエリアの、ごく普通のスターバックス。私はドアに最も近い窓際のテーブルで作業していました。

テロ実行日が数日早かったら、私はこの世にいなかったかもしれない。

そう思うと今でもゾッとしますし、全く他人事には思えない事件でした。

どんなに治安が悪い地域を避けていても、家にこもっているよりは何かしらのリスクが生まれます。

犠牲者の方も出てしまい、この時ばかりは真剣に旅の中止を考えました。

貯金がほぼゼロになっても死なないし、後からお金は取り戻せる。

でも、命は取り戻せない。

画像21

(ウユニ塩湖での夕日。景色が平らすぎて影が異常に延びる)

とはいえ世界中のどこにいても何かしらのリスクは存在し続けるので、その後も結局旅を続けましたが、それまで以上にできる限りの安全は買うことは徹底するようにしました。

結果想定以上にお金を使ったのですが、さっきも言った通りお金は後から取り戻せます。

今後世界一周に出られる方、旅に行く期間に必要なお金は十分すぎるほど確保して、特に保険は絶対に常に入っておくことをおすすめします

保険に入っていなかったため、病院に行かず亡くなってしまった方も過去にはいます。

---

世界一周じゃなくても良いけど、旅はやっぱり楽しい

8ヶ月、たくさん感動して、たくさん消耗して。

感じたのは「世界一周にこだわる必要」ってあんまりないなということ。

世界一周で一気に色んなところを回ることで、経済的・地理的(移動時間やフライトの安さ)なメリットはありますが、「行きたい場所にピンポイントで行く」形でも良いのかなと。

画像22

(ブルネイ:行くまで全然知らなかったけど、治安も良くて人が温かい)

---

「もう一度どこか旅に出たいか」と言われると、即答でYes。

「もう一度世界一周をしたいか」と言われると、YesとNoで揺れると思います。

旅を「し続ける」ことは思った以上に大変だったし、あまり一周することにこだわりを感じなくなったし。帰国してからは家にこもることも大好きになったし。

日本でもアメリカでも、まだまだ知らない美しい景色がたくさんある。

画像23

お金に制限があるバジェットトラベラーこその楽しさもたくさんありましたが、20代の頃に比べると体力的に厳しい部分もどうしても増えていく部分があるかなと思います。

旅の形に、誰もに当てはまる正解なんてない。

HSPでも、エネルギーレベルを保ったままで、たくさん感動して楽しめる旅の仕方があるはず。

同じ人でも、年齢や状況に合わせて旅の形は変わるはず。

コロナの今は、近場でちょっと景色を変えるプチ旅行だけでも楽しい。


もしもう一度世界一周に行くなら、今度はHSPの特性に合った計画を立てて、お金も時間も十分な余裕を持って、ハッピーな時間を増やせる努力をしたいかな。

画像24

(それでもウユニ塩湖は最高だった)


いいなと思ったら応援しよう!

みつは
「応援してやっても良いな」「もっとコンテンツを読みたいな」という心優しい方は、投げ銭制でサポートいただけるとすごく嬉しいです。