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新しい体。#天ぷら不眠 |毎週ショートショートnote
“どんな不調も解決いたします”
藁をもつかむ思いで向かったのは、怪しいアパートの一室だった。
ボロボロの木の看板に墨で書かれた、重厚な文字が期待度を上げる。
「こんにちは。」
年季の入った施術用のベッドの前には、これまた年季の入った白髪の老婆が、和かに出迎えてくれた。
「もう、ずっと眠れないのです。」
「それならこちらのコースがおすすめですよ。」
そう言って、身体中に塩コショウをまぶされ、卵と冷水と粉を混ぜた衣を塗りたくられた。
「あとは、こちらの油にお入りくださいませ。」
突然いやに丁寧な言葉遣いになった老婆からは、笑顔が消えていた。
衣をつけられていた時点ですでに諦めていた私は、静かに油の中へ沈んでいった。
***
「…さま、お客さま。すっかり熟睡しておりましたね。天ぷら不眠コースは、お気に召しましたか?」
ああ、久しぶりによく寝た。
まるで違う体を手に入れたようだ。
「みなさんそうおっしゃられます。」
そう言って、私そっくりの女性がこちらをみて微笑む。
#天ぷら不眠
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