季節感を深呼吸! 「長崎歳時記手帖」 第5回 ふいご祭り、川渡りの餅、節季候
いまに伝わる年中行事や風俗習慣を、江戸後期の長崎で生まれた「絵」と「文」ふたつの歳時記を中心に、一年かけてご紹介していきます。今回は、くんちが終わって、阿蘭陀船も出航して、すっかり秋も深まった長崎の町が、年の暮れに突入していく様子を見てみましょう。
「絵」は、町絵師で出島出入り絵師の川原慶賀が描いた「長崎歳時記」のシリーズで、原則として長崎歴史文化博物館のウェブサイト内にある「川原慶賀が見た江戸時代の日本(I)」からの引用でご紹介します。
「文」は、長崎の地役人であり、国学者でもあったという野口文龍による「長崎歳時記」。元旦から大晦日までの年中行事やならわしが、細かく記されています。
ふたつの「長崎歳時記」をまとめた拙著「川原慶賀の『日本』画帳」をお手元に置いていただくのも、おすすめです!
ふいご祭り
いまも長崎の町に息づく「くんちの終われば正月たい」の季節感ですが、それでも二つの「ビッグイベント」のあいだには、いくつかの行事やお祭りがありました。そのひとつが、ふいご祭りです。「ふいご」とは、金属を鋳造するときの風を送る装置。鍛冶屋さんが使います。長崎にはいまも「鍛冶屋町」の名が残っていますので、あのあたりで行われていたのでしょう。
十一月八日。鍛冶をする家では、ふいご祭りといって、家々に勧請したお稲荷さんにお神酒とお供えを上げ、お客さんを呼び、大いに賑わいます。この日、金剛院(如意輪寺という、長崎の南部、本石灰町の上にあります)と、西山郷の左近明神、そのほか各地の稲荷社で祭礼があります。
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