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彼らは何者か@水戸-大洗地域研究備忘録vol.1 京都大大学院生 許 大星(ほ でそん)

はじめに───彼らは何者か

「彼らは何者か」という問いかけには、どこか相手を突き放す”冷たさ”があるように感じる。芥川龍之介の短編小説「杜子春」では『深山の夜気が肌寒く薄い着物に透り出した頃、突然空中に声があって、「そこにいるのは何者だ」と、叱りつけるではありませんか。』という箇所がある。得体の知れない、敵か味方かわからない相手に対して、強気にその正体を探るための問いかけ、こういった印象を抱くのである。

さて、先日安倍元総理の訃報は世界に衝撃を与えたが、それを契機として、Twitterや掲示板などインターネット上で彼の政策の是非について今一度議論されるようになった。彼の政策の一つとして「外国人労働者の積極的な受け入れ」が挙げられる。これは、現在(※R3年10月厚労省統計より算出)県内人口に対する外国人労働者数が全国5位である茨城県にとって、大きな意味をもつ政策であったと言えるだろう。一方で、多くの茨城県民は彼らに「あなたたちは何者か」と”冷たく”問いかけるどころか、彼らの存在さえ認知していないように感じた。決して茨城県民が外国人に冷徹だと非難しているわけではなく、彼らの実態が県民、そして国民に認知され得ない構造的な問題について考えていく必要性があることを述べたいのである。なぜ、私たちに実害を加えるわけでもない”彼ら”の実態を知る必要があるか。日本の少子高齢化が世界でも最前線を走っており、もはや日本は”彼ら”なしでは社会が成立し得ないため、今後”彼ら”の人口比はさらに大きくなっていき、”彼ら”に関する政策の重要度も高くなっていく。そのとき、私たちは「得体の知れない、敵か味方かわからない相手」のための政策について、果たして正しい議論ができるだろうか?味方であったはずの人を排斥し、自らの首を絞めるような真似をせずにいられるだろうか?―だから、私たちは”彼ら”を知る必要がある。

次週から、筆者が大洗町を中心に行った外国人に関する調査を雑記していく。

『インドネシア人教会(GIII Oarai) 礼拝の様子 大洗だけでなく、ひたちなか、鉾田、水戸からも多くのインドネシア人が集う。』
大洗のインドネシア人教会の牧師先生と。大洗のインドネシア人の多くはキリスト教。


執筆者(入居者):京都大大学院生 許 大星(ほ でそん)

京都大学体育会バーベル部に所属。高校時代に部活動で大きな怪我を経験し、リハビリでトレーニングを始める。次第に競技そっちのけで重たい鉄を持ち上げることに面白さを見出し、ひたすらベンチプレスに勤しむようになる。

許大星(ほ でそん)1998年福岡県宗像市生まれ。2021年京都大学農学部資源生物科学科卒業。同年京都大学大学院ASAFAS東南アジア地域研究専攻に進学、在学。学部時代は有人宇宙学実習1期生として京都大学宇宙ユニットの門と叩き、宇宙×農学をテーマに学びを進める。大学院では一転して、インドネシア人を中心に在日外国人のエスニシティ、主に民族的な帰属意識について、フィールド調査をもとに調査を行う。

愛読書は「マッスル北村 伝説のバルクアップトレーニング」


水戸宿泊交流場との出会い

昨年11月に初めて交流場に訪れ、1週間ほど宿泊した。当時は長野県の川上村という農村で外国人技能実習生の調査を行っていたが、農閑期に入り、多くの外国人が帰国したので暇を持て余していた。そんな中、滞在していた民宿でフィリピン人と交際しているという茨城県民と出会い、彼の話を聞いていくうちに茨城県に興味を持つようなり、すぐに水戸へ。交流場はAirbnbで最安値フィルターをかけて発見(笑)。事前の文献調査で鉾田市に外国人が多いと認識していたが、同時期に宿泊された大洗町の観光案内所「うみまちテラス」に勤務している平間さん(通称あんちゃん)や交流場のオーナーのお父様から、大洗にも外国人は多いという話を聞き、大洗を視察することに。そこから大洗の面白さに気付き、今年度からは大洗を主たる研究地として本格的な調査を始める。この交流場で平間さんやオーナーのお父様と出会っていなければ、研究内容は全く別のものになっていただろう。水戸宿泊交流場との出会いに感謝。


論文・発表等

■論文
「新たな植生指数を用いたダイズ群落における地上部乾物重の推定」
作物研究66巻(2021) p.47-53(著者:鎌木,中本,許,稲村,井上)
「開花期以降の緩効性窒素肥料の追肥がダイズの生育および収量に及ぼす影響」
作物研究66巻(2021) p.31-38(著者:中本,鎌木,許,井上)

農学部時代の研究圃場にて。ダイズに与える肥料についての研究をしていた。

■ポスター発表「有人宇宙学実習―宇宙を目指せ―」2018年第11回宇宙ユニットシンポジウム 「宇宙建築賞作品 Our Eco」2020年第13回宇宙ユニットシンポジウム

■受賞
2019年第6回宇宙建築賞 入賞

第6回宇宙建築賞 入賞作品 「Our Eco」 水耕栽培と淡水魚養殖を組み合わせた循環型農業システムであるアクアポニックスを主軸に据えた宇宙農場施設を提案。

つづく

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