【秋のちょっと怖い話】ドアをドンドン叩く人
私は小学生の頃、鍵っ子で学童保育に通っていて、学童保育が終わった後の夕方、週1回だけピアノ教室に通っていた。
ピアノの教室は自分の家からすぐ近くで、目と鼻の先といった距離にあった。
ピアノ教室に着くと前の子のレッスンが終わっていないことがたまにあったので、ピアノの先生の子供が所有していた漫画を読ませてもらって、前の子のレッスンが終わるまで待っていた思い出などがある。(ちなみに漫画は名探偵コナンだった)
あるピアノ教室へ行く日、学童保育から帰ってピアノレッスン用のカバンに持っていくものを準備して、いざ家の玄関を出ようと靴を履いた時だった。
「ピンポーン」
家のインターホンが鳴った。
私は鍵っ子でその時、家にひとりぼっちだったために怖くなって息を殺して居留守を使うことにした。
「ピンポーン」
もう一度、インターホンが鳴った。私は怖くて動けなくなってしまいその場で立ち尽くしてした。早く帰ってくれることを祈って。
「ピンポーン」
それでもインターホンは鳴り止まず困っていると、
「宅配です!!ヒサシキさん!!いるんでしょ!!」
という男の声が聞こえてきた。さらに私は怖くなってしまったが勇気を振り絞ってドアのスコープから一体どんな人が来たのか覗いてみることにした。
覗くとそこには50代くらいの白髪混じりで少し長髪の男がいた。
覗いたまま様子を見ていると
「ピンポーン」
とまたインターホンを鳴らし、ドンドンとドアを叩き、さらにはドアノブをガチャガチャガチャガチャとひねってきた。
しばらくドアスコープを覗いたまま怖くて動けない私がそのまま男の様子を見ていると、男は諦めたのか去っていった。
男が去って行ったのはいいが、男がやってきたおかげで、ピアノ教室にいくに行けなくなってしまった私は、完全にピアノのレッスンの時間に遅刻していた。
しかし、男が去った直後に急いで家を飛び出して、まだそこに男がいたら怖いと思った私はピアノの先生に電話することにした。
電話でピアノの先生に事情を説明して「怖いので遅れます。」と言ってから家の玄関ドアを恐る恐る開け、後ろと左右を確認してから急いで鍵をかけて、走ってピアノ教室まで向かった。
教室に着くと先生が心配そうに話を聞いてくれて
「きっとそれ宅配なんかじゃないよ。ドアガチャガチャなんてしないもの。心配だからお母さんが帰ってくるまでここにいなさい。」
と言ってくれた。
その後は母が家に帰宅する時間になって私も家に無事に帰ることができたが、あの時の恐怖は大人になった今でも覚えている。
当時は小学生だったのだから尚更怖かったことだろうと思うし、大人の今でもそんな目にあったらやっぱり怖い。
子供の安全には周りの大人もしっかり気をつけて、助けられることはしていきたい。
それにしてもあの男は一体何者だったのだろう。
●Graphic Design/Illustration/Dog etc.記録
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