おじいちゃんとうなぎとエビフライ
母方の祖父母は私にとって他の話でも書いたように、親のような存在だった。
今回は、私が大学生の時に亡くなってしまった父方の祖父の話を書こうと思う。
父方の祖父母は浜松に住んでいた。祖父母の家には一緒に叔父夫婦と少し年上の兄妹のいとこ二人が暮らしていた。
浜松には子供の頃あまり行けなかったが、夏休みに行けば、いとこ達が遊んでくれていた。
私からみた父方のおじいちゃんは几帳面で律儀な人だった。
飲みかけのお茶には埃が入らないようにハンカチで蓋をしたり、入った後のお風呂がとても綺麗に片付いていたり、子供の頃もらった手紙の字がとても綺麗で感動したのを覚えている。しかも、他人の迷惑にならないようにと行動していたので尊敬していた。
「おじいちゃんはすごい!」とおじいちゃんの話が出る時はいつも言っていたように思う。
私にとってそんな祖父だったが、あまり浜松へ行けなかったこともあって共通点が少なかったと思う。
でも、おじいちゃんと私にも全く同じものが苦手という共通点があった。
小学校3年生頃の夏休み、父母と浜松の祖父母の家へ泊まりがけで遊びに行った。
祖父母の家に着くと、いつものように、おじいちゃんおばあちゃん、叔父叔母、従兄妹が迎えてくれて夕飯時まで話したり、遊んだりして過ごした。
夕飯時になると夕飯は外食しようと決めていたらしく、おじいちゃんと叔父さんの運転する車2台で出かけた。
着いたところはうなぎ屋さんだった。
どうやらおじいちゃんが「せっかく東京から浜松に来たのだから、うなぎ屋へ連れて行こう」と泊まりに来た私達を気遣ってくれたようだった。
うなぎ屋さんに入って席に着くと何を頼むか考える時間になる。
私はそこで迷わず、エビフライ定食を頼んだ。
私はうなぎが苦手だった。
あのヌルヌルした感じがなんともいえずダメだった。
「うなぎ食べないの?」とおばあちゃんか誰かに聞かれたことに私はただ黙ってこくりと頷いた。
すると、おじいちゃんもエビフライ定食を頼んだ。
わざわざうなぎ屋さんにおじいちゃんに連れてきてもらったのに、私はうなぎが苦手だったのでちょっとだけ申し訳ない気持ちになってのだが、連れてきてくれたおじいちゃんも実はうなぎが苦手だったのだ。
そこで初めておじいちゃんの苦手なものを知り、しかも私と全く同じものが苦手だったのでおじいちゃんにとても親近感を覚えた。
おじいちゃんと私はうなぎ屋さんで二人でエビフライ定食を頼んで食べたのだった。
今の私はうなぎを食べられるようになったが、うなぎを見ると「おじいちゃんと一緒で私もうなぎが苦手だったなあ」と思い出す。
●Graphic Design/Illustration/Dog etc.記録
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