英国散歩 第8週|ケンブリッジはザックリこんなまち⑤水とみどりのまち
ケンブリッジのまちのざっくり紹介の最終回、今回は「水とみどりのまち・ケンブリッジ」です。
水のまち・ケンブリッジ
まずは「水のまち・ケンブリッジ」について。
ケンブリッジのまちの中心付近には「ケム川」が流れており、ケンブリッジの地名の由来になっていたり、まちの各所に特徴的な魅力的な水辺の風景を形づくっていたりと、ケンブリッジのまちとは切っても切り離せない関係にあります。
ケンブリッジの名前の由来
「水のまち・ケンブリッジ」の断片は、その地名からも垣間見ることができます。
ケンブリッジの地名の由来については、先日の投稿ではかなりかいつまんでミスリーディングな書き方になっていましたので、今回、それについて(あくまでも有力な説として)より正確に補足します。
ケンブリッジ(Cambridge)のまちの名前が、市中心部を縦断するケム川(River Cam)の名前からきている、というような書きぶりになっていましたが、時系列的に沿って具体的に整理すると下記のとおりです。
1.グランタ川(River Granta)(後のケム川)付近にまちが発展した。
2.川の名前から、そのまち(後のケンブリッジ)は【グランタブリッジ(Granta bryg, Granta bridge)】と呼ばれるようになった。
3.しだいに、言葉が変化し、まちは【ケンブリッジ(Cam bridge)】と呼ばれるようになった。
4.グランタ川は、まちの名前に合わせるかたちでケム川(River Cam)と呼ばれるようになった。
つまり、ケンブリッジのまちの名前がそこを流れる川の名前に由来することはそのとおりなのですが、その川は「ケム川」ではなくその旧称の「グランタ川」。そして、当時のまちの名前はケンブリッジではなく「グランタブリッジ」でした。
そして、まちの名前が時間とともに「ケンブリッジ」に変わった後に、それと一致させるように川の名前の方が「ケム川」に変えられた、という経緯だったようです。
いずれにしても、ケンブリッジのまちの成り立ちがこのケム川と密接に関係していることには違いありません。
なお、グランタ川という名称は、ケンブリッジの上流側で今もなお使われているようです。
【参考】
ケンブリッジの水辺の風景
ケンブリッジのまちとケム川の位置関係を把握するために、まちの中心(city centre)付近の地図を見てみます。
やや色が見づらいですが、ここで濃い青色の線がケム川で、やや大きく蛇行しながら、まちの中心を縦断するように北東から南へと流れています。
また周辺の土地利用を見ると、いわゆる商業エリア(水色)にかなり近いところや、またケンブリッジ大学建物群(黄色)や公園・広場(緑)にところどころ沿いながらケム川が流れていることがわかります。
以降では、それぞれの水辺に生まれている特徴的な風景、アクティビティを写真ともにご紹介します。
①商業エリア沿いの水辺
写真右手側は、キーサイド(Quayside)と呼ばれるエリアで、ケンブリッジ名物の小舟アクティビティ「パンティング(punting)」の発着所の1つです。
5つほどのpunting運行会社のお兄さんたちがこの辺りで街行く人々に声をかけては、小一時間程度のパンティングツアーの勧誘をしています。
このキーサイドには、ケム川に向かってカフェ、バー、レストランなどのお店が並んでいて、パンティングツアーまでの時間潰しにコーヒーを片手に座る人、パンティングの楽しげな様子を見ながら談笑する人、水辺の開放的な雰囲気でゆっくり食事を取る人、その風景全体を写真におさめる人など、実にさまざまな人、アクティビティが見られます。
キーサイドのカフェ、レストランの看板。
ケム川の方向を向いたテラス席が出ています。
劇場空間のように川に向かって開かれたキーサイドのオープンスペース。
ケム川の向こう側に見えるのは、ケンブリッジ大学の31あるカレッジの1つ、マグダリン・カレッジ(Magdalene College)です。
川沿いレストランのテラス席とパンティングの舟とは結構距離が近く、お互いに楽しげな声が聞こえます。
舟溜まりに限りなく近いレストランのテラス席。
②ケンブリッジ大学のカレッジ沿いの水辺
ケム川に隣接するカレッジの学生は、自分のカレッジを発着点としてパンティングに繰り出すこともできるようで、新学期開始直後の10月には写真のように多くの新入ケンブリッジ大生が同期同士でセルフパンティングを楽しんでいました。
写真の建物は、ケンブリッジで最も美しいとも言われるキングスカレッジ(King's College)のチャペルなどです。
パンティングの醍醐味は、ゆったり進む小舟からケンブリッジ大学の各カレッジや魅力的な歴史を持つ多くの橋を眺めることだと思います。
この橋は、その美しさから、眺めているとため息が出てくるからなどのいわれのある、「ため息橋(Bridge of Sighs)」。橋を渡れるのはケンブリッジ大学の学生のみですが、パンティングでは誰もが間近に橋を眺め、くぐることができます。
こちらの橋は、ケンブリッジ大学出身で万有引力の法則で知られるアイザック・ニュートンによって設計されたといわれる「数学橋(Mathematical Bridge)」。
③公園沿いの水辺
公園のケム川沿いには、シンプルですが遊歩道が整備されており、毎日でも歩きたくなるような美しい風景があります。
夕暮れ時にこのベンチに腰掛けるだけでも、その日を十分に楽しめたような気分になれておすすめです。
公園沿いにはボートハウスらしき舟が多く停泊しています。
かなり大きな鳥(白鳥?)も普通にケム川沿いの遊歩道を散歩していました。
公園とケム川の間(もしくは公園敷地内)にはレストランもいくつかあり、公園と川に挟まれた開放的なテラス席で贅沢にティータイムをしている方々も見受けられます。
このように、「水のまち・ケンブリッジ」では、ケム川沿いの水辺に様々な魅力的な景色が広がっています。
みどりのまち・ケンブリッジ
続いては、まちの中心にも広大な芝生広場がごろごろある、「みどりのまち・ケンブリッジ」についてです。
改めて、先ほどのcity centre付近のマップを見てみると、(ケンブリッジ大学施設の「黄色」が目立つのはさておくと、)まちの中心部とは思えないほど多く「緑」が塗られています。
これらは基本的に公園や芝生のグラウンド、牧草地などで、実際に訪れても広大な緑が広がっている場所です。Google Mapの航空写真を見ても緑の多さに驚きます。
ケンブリッジのまちに緑が多い理由
おそらく理由の1つとして考えられるのは、ケンブリッジ大学の各カレッジ所有のグラウンドが多いことです。
過去投稿のとおり、ケンブリッジ大学はカレッジ制を取っており、31のカレッジが自分たちの所属学生の生活基盤を整えるために、それぞれに寮や教会などの施設を所有・運営しています。
また、ケンブリッジ大学には、日本の大学でいう「部活動」や「サークル活動」として「club」と「society」があります。
そこで、例えば、イングランドで人気なスポーツであるフットボール(サッカー)やクリケットのclub活動を支えるために、各カレッジは芝生のグラウンドを所有・提供することになるため、多くのカレッジがそれぞれに広大な芝生のグラウンドを所有しています。
これがケンブリッジの豊富なみどり(芝生)に寄与しているのではないかと考えています。
もはやサッカーコートが何面とれるのか見当がつかないくらい広いチャーチルカレッジ(Churchill College)のグラウンド。
よくサッカーや陸上などに使用されているのを見かけます。
右側のレンガ造の建物が寮の一部です。
また、カレッジのグラウンド以外のみどりとして、公園の存在感も大きいです。
例えば、city centreの商業エリアに隣接する芝生の公園「パーカーズ・ピース(Parker's Piece)」。その広さは約10万 ㎡。
近代サッカーのルールが生まれた場所としても有名なこの公園は、晴れた暖かい日には日向ぼっこをする人が多くいます。
写真はこの夏に公園中央に設置された観覧車。今の時期はクリスマスに向けて、スケートリンクと移動式遊園地の建設が進められているところです。
牧草地としては、ケム川沿いのミッドサマー・コモン(Midsummer Common)。毎年恒例の花火大会はここで打ち上げられるそうです。
ミシュラン2つ星のレストラン「Midsummer House」もここに位置しています。
先ほどのマップで「緑」に示されていないような広場などもあります。
写真は、ケンブリッジの目抜き通り「キングス・パレード(King's Parade)」に隣接するケンブリッジ大学キングス・カレッジ(King's College)の芝生広場。
マーケットも近いため、ストリートフードを片手にこの芝生広場でピクニックをする学生や観光客が多く集まっています。
このように、ケンブリッジには、大学のグラウンド、公園、牧草地、その他の芝生広場など、豊富なみどりがまちなかに溢れており、人々の憩いの空間や、多様なアクティビティを受け止め創出する空間として機能しています。
子育てをしている身としても、これだけ商業が発展し利便性は申し分ないまちでありながら、一方で子どもを自由に遊ばせられる緑豊かな空間もたっぷりあるという環境は本当に住みやすいなぁと日々感じています。
やや長くなりましたが、「水とみどりのまち・ケンブリッジ」は以上です。
ケンブリッジは魅力的なオープンスペースが非常に多いため、今後もう少し具体的に紹介、深堀していけたらと思っています。
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