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道草をして出逢ったふたりと私/michikusa in 代官山蔦屋書店 haruka nakamura × 大給亮一(sundaysfood)

「雪降るんだって」 「えっ?!うそっ!!」

楽しみにしていたその日に雪マークがついていることを知ったのは、開催日3日前のことだった。

暖冬だね、春みたいだねとみんなで話していた2023年から2024年にかけての冬も、暦が大寒を迎えた頃にはすっかり冬本番の寒さになっていた。でも、雪マークはこの日が初めてで、なんてロマンチックなタイミングなんだろうと思った。

なぜなら、待ち焦がれた haruka nakamura さんと大給亮一さんの「道草」の日だったからだ。


遡ること一ヶ月とちょっと前。友人のイッカンさんから【LAST.1.HOUR】という名のインタビューを受けた。

「人生最後の1時間、もし曲が聴けるなら何を聴きたい?」自分のオリジナルプレイリストを作成し、人生を深掘る彼の企画。私はこのインタビューにあたり考えた12曲のうち、人生の最期の本当の最後は haruka nakamuraさんの曲を聴きくと決めた。

その最期の瞬間、目に映る景色がどんなものだったとしても全てが美しく見えたなら、心穏やかに、満ち足りたままに逝くことができる。

特に気に入っていた「新しい朝」「音楽のある風景」との出逢いは、たまたまYouTubeで辿り着いた michikusa だった。この映像と音楽は私の心を虜にし、一時期、毎朝聴きながら散歩することが日課になっていたほどだったし、今でもその習慣は定期的に継続している。

ピアノの音色と、食器の音。繊細で、木漏れ日のように温かく身体に流れていく音楽。そして haruka nakamura さんと 大給亮一さんがふたりで共に見た景色からインスピレーションを受けて生み出された料理は美しく、その世界全てに見惚れたし、なによりこの音楽を聴きながら見る自分の日常にある景色は全てが美しく、愛おしく思えるのだ

その音楽が、道草が、まさに東京で行われることを知ったのは、インタビューから1か月も経たない頃だった。迷いなく、即決でチケットを取った。


そして迎えた当日、天気は今年初めての雪予想。電車が止まることも想定したけれど「止まる前に行かなくちゃ!」としか考えなかった私の思考回路は素直というか、行きたいという気持ちが至極単純で明快だったと思う。

住まいのある逗子から東京に向かう1時間半。視界に入る家の屋根はだんだんと雪化粧がされ、それどころか視界が真っ白になる程の雪が勢いよく降り出す。

滑りやすいから、白線を踏まないように。

一歩を強く踏み込んで、いつも使わない筋肉を使っているような感覚でぎこちなく慎重に歩く自分の姿を想像すると、少し滑稽だったようにも思う。

時を同じくしたタイミングで、実は調理スタッフチームが雪のため午前に出発したのにも関わらず、開場の19時半に間に合わないというトラブルが発生していた。その事態をまだ知らなかった私は、一足早く事務局からのメールでその旨を確認していた友人から「時間に余裕ができたね」と送られてきたLINEにクエスチョンマークを頭に浮かばせた。


結果、早く着いたことに加えて開場が1時間後ろ倒しになり、私たちには2時間の時間が生まれた。

待つ間、蔦屋書店の大きな窓からこんこんと降る雪で景色が変わっていく様を静かに眺めながら、スタッフの方がどうか無事に到着されることを願いつつ、生まれ育った雪国での幼少期の記憶を懐かしむように辿ったり、この景色、この時間でしか味わえないひとときを過ごせたことは思いがけないギフトだったようにも感じる。

20時。これ以上ないほどに丁寧に迎えてくださるスタッフさんからご案内を受けて2階に上がると、優しいピアノの音色が聴こえてくる。全体的に暗く落とされた空間が、ほんのりとロウソクのようなオレンジ色の光を灯すライトの温かさを増していて、そのライトのひとつが照らすピアノの前に haruka nakamuraさんはいた。


そこからはもう、あっと言う間だった。


始まりがいつからなのか分からないくらい自然に、時に踊るように、歌うように奏でられるピアノの音たちは空気に溶け合い、目を閉じようとする瞬間に涙が溢れ出る。

大給さんが登場し、 haruka nakamura さんの肩にそっと触れる姿や、ふたりが背中合わせになり、大給さんが料理の仕上げをする姿には、安心して背中を託せるお互いへの信頼や友情、目に見えない温かな、確かな関係性が垣間見えたようにも感じた。

引用:haruka nakamura さんHP,道草 michikusa より


ピアノの音色、食器の音。繊細で木漏れ日のように温かく身体に流れていく音楽。映像で感動した世界に今、自分が存在していた。

おふたりが道草をするなかで見た景色、匂い、人達から得たインスピレーションから生まれた音楽、食事、空間、この時間。全てがその時その瞬間にいなかったら生まれなかったものたちばかり。でもきっと、日々を生きることはその連続なんだとも思う。


道草を愉しもう。これからも。


この時間で感じたもの全ては言葉にできないし、言葉にしたくないなとも思う。もったいなくて、まだ余韻に浸りたい。けれど、その道草を愉しみたいと思わせて頂いた、この至福のひとときを味わえたことは間違いなく、おふたりと michikusa に携わる皆様のお陰でした。本当に、大変な状況のなかにも関わらずありがとうございました。


そして、大切な友人ふたりにも感謝の気持ちを込めて。この時間を一緒に過ごしてくれてありがとう! @yui @ikkan




またこの時間に巡り合いたいなぁ。

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Ayano
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