「今日は誰にも愛されたかった」木下龍也さんのサイン入りの歌集をゲットした2「三人模様」
#読書感想文 2022/12/20
この本は短歌と詩の連詩と言われるものです。最初に丁寧にそう書いてあります。短歌の返歌とは違うのですね。歌人の岡野大嗣さんと木下龍也さんが短歌を書き、大御所の詩人の谷川俊太郎氏が詩を書くものでいわば「リレー形式」です。
谷川氏がメンバーに入っていることにワクワク感とハラハラ感が拭えません。これを楽しみにページを開きます。
御三家の自己紹介です。とても好感が持てる挨拶です。こういう紹介って学歴とか出てくるのですが、ここにはありませんし。それがいいです。
こういう場合は「自分の確かな実績」と、「今、こうです」というのが望ましいと思っています。過去よりも今、どうなのか、というのが知りたい情報です。
谷川氏は詩でご挨拶されています。さすがです。そして岡野大嗣さんは短歌のご紹介があります。岡野さんの六つの短歌にはどこか物悲しい美しさがあります。なぜでしょう暗い気持ちの中、光を探しているように思えます。これについては今後深めていきます。
そして。木下龍也さんです。プロフィールと六つの作品があります。まるで木下さんが心許している人に甘えているような、愚痴をこぼしているような、そんな印象を覚える短歌に感じます。これについても考察していきます。
ここからいよいよ本文です。三名の短歌と詩のリレー。この部分だけ紙の色が異なります。作品を際立たせるためでしょうか。しかしよく見ると、ページが薄い?でも内容は濃厚です。
ここで内容を書きたいのですが、権利のことがあるので恐ろしいです。よって思いのみを伝えたいと思います。
まず岡野さんの短歌からスタートです。次の人がどうとでも取りやすい球を投げたと思います。ですが、次は谷川氏の詩。ヒヤヒヤですが、大人しく引き継ぎされたと思います。そして三番手の木下さんが谷川さんの詩を広げることに成功したと私は思うのです。
が、この次の谷川氏の作品はどこか遠くに行ってしまったように思います。この次は、岡野さん。岡野さんは、この谷川さんの詩の一部をうまく拾い、見事にバトンを繋いだと思いました。しかし。この次はまた谷川氏です。
ここでなぜか、谷川氏の詩に無関係の人物の名前が登場してきます。この詩を受け取った時の木下さんの顔を想像すると私は眠れなくなります。
このかなり暴走気味の谷川氏の詩。この次を立派に務めた木下さんの生真面目さが私には眩しいです。
こうした谷川氏の快走はずっと続くのです。この短歌と詩のやりとりは四ヶ月ほほど。岡野さんも木下さんはやはりすごいな、と思いました。どんな詩が来てもちゃんと応えるのですから。
一部、明らかにつなげない詩を前に、思い悩んだ末、自暴自棄とも取られる短歌がありますが、感想戦においてそこはそうじゃない、と詳しく解説があります。私の誤解のようです。
この御三家を整理すると、谷川氏の自由な詩を岡野さんが遊んで、木下さんがそれをまっすぐにしようとしているような、そんな連詩に思えます。
この連詩の面白さ、素晴らしさはここにあります。
3へ続く
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まだ表紙だけですが、感想とさせていただきます。
本「今日は誰にも愛されたかった 谷川俊太郎 岡野大嗣 木下龍也」
ナナクロ社より