インプロとは「今」を見つめる思考法である
こんにちは、ミテモの小林です。
本日は今年の4月に入社された新入社員堀さんが、開催してくれた社員向けのワークショップの様子をお届けします。
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(文字数: 3,500文字)
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ミテモの新入社員堀さんとは
堀さんは2019年に東京学芸大学の大学院を卒業されて、今年の4月からミテモに入社した新入社員です。2014年ごろからインプロという、いわゆる即興演劇を実践していて、ミテモにはインプロを活用したワークショップをやりたくて入社されたという、生え抜きのインプロマニア、もとい研究者です。実は学生時代から、いろいろな組織の中で個人のお仕事としてワークショップもやっていたとか。
そんな経歴を持つ大型新人の堀さんですが、ミテモのメンバーはほとんどインプロ未体験者ばかり。ぼくに至っては正直「即興演劇」というワードを聞いただけで、「ちょっときついな……」と思うほど。その反応は様々ですが、ミテモでこれから新サービスとして展開していく以上、まずはみんなで一度体験してみよう、ということで企画されたのが今回のワークショップでした。
まずは結論から、ということで書いておきますと、ぼく個人はインプロに思い切りハマりました。インプロ自体というよりは、その考え方に強く惹かれる機会になりました。「ワークショップが終わってすぐに堀さんの推薦図書2冊を読み終えるほど」といえば伝わるでしょうか。
さて少し前置きが長くなりましたが、興奮冷めやらぬままで、ここから当日の様子をお伝えします。
インプロとは、「今」を見つめる思考法である
当日講師の堀さん以外に集まったのは、ぼくを含めて5名。漫画家の眞蔵さんに、LEGO SERIOUSPLAYでお馴染みの飯田さん、JapanBrandProduceSchoolのレポートを書いてくれている営業の井上さん(実は先日LEGO SERIOUSPLAYファシリテーターデビューもしています)、そして堀さんのサポートで来ていただいた黒木さんに、即興演劇という言葉にドキドキしながら参加した小林というメンバーです。
黒木さん以外のミテモメンバーは全員インプロは初体験ということで、まずは堀さんから「そもそもインプロとは?」というところから解説してもらいました。
当日の堀さんの解説と、推薦図書で詰め込んだ知識でぼくなりに解説しますと、インプロは即興演劇のことを指すわけ言葉で、英語では「Improvisation」と呼びます。これは原義としては、「im(〜ない) + pro(先を) + visation(視ること)」といった意味に分かれ、予測をしないというか、先を見通さないというようなニュアンスを表す言葉だそうです。だから「Improvisation=即興演劇」と訳されるわけですね。
私たちは普段、ロジカルシンキングや問題解決の基礎理論として、先を見通したうえで事象を分解していくようなアプローチで生活をしています。特に仕事という場においては、先を見通しリスクを洗い出すこと、一つの目的を見定めてそこにたどり着くための要素を一つずつこなしていくことなど、どちらかというと「pro + visation」といえるような回路を多く使いますし、そうあるべきと教わります。そんな中でインプロの思考法とは、むしろ先を見通さない、「今」にこそ注目をする思考法としてとらえることができます。
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ここまでですでに1000字オーバーということで、今回は実際に体験したワークを1つご紹介することでインプロワークショップの様子をお届けしたいと思います。企画・講師を担当した堀さんにも記事を書いてもらっていますので、詳しいワークショップの中身についてはそちらをご参照ください。
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ワーク「魔法の箱」 〜萎縮した子供と無意識の検閲
まず最初にやったのは「魔法の箱」というというワークでした。
これは二人組で行うワークで、ひとり(A)が魔法の箱を用意し、もうひとり(B)がその箱から「何か」を出す、という流れで進んでいきます。
A「はい、どうぞ(魔法の箱を出す)」
B(箱から何か取り出す)
A「それはなんですか?」
B「これはカメラです」
とこんな感じで、Aさんが用意した箱からBさんがものを取り出していくわけです。一見非常に簡単なワークですが、ここまで読んでみて皆さんはAさんとBさん、どちらの役をやりたくなりましたか?
違っていたら申し訳ありませんが、大抵の方はAさんを選ぶんじゃないでしょうか。
正直「箱から何か出す」って時点でちょっと恥ずかしいし、難しいし、何言っていいかわからないし……。Aさんは「それ何?」って聞くだけで簡単そう。
と思いきや、堀さんによればこのワーク、大切なのはAさんとのこと。
実際に堀さんがAさんの例をやってみせてくれました。
まず最高にノリがいいAさんバージョン。
次に常にしかめっ面のAさんバージョン。
実際に見ているとわかるんですが、全く同じワークをしているんですが、確かにAさんの対応次第でBさんの様子が変わっています。
例えば、ノリがいいAさんは、Bさんが出したいろいろなものに対して「おー!めっちゃいいですね!かわいいですねー!」とか、「すごい!こんなもの出てくるんですか!」とか。とにかく聞いてるだけでも楽しくなる反応をしてくれます。一方でしかめっ面のAさんは「……へえ、次どうですか?」「……え?何それ……」みたいな反応。見ていて辛い。段々とBさんもつられて声が小さくなり、徐々にものを出すのにかかる時間が長くなっていきます。
ここでまたちょっと付け焼き刃の解説をはさみますと、インプロでは全ての人は創造的である、と考えます。その象徴として、インプロにおけるオトナは「萎縮した子供」と表現され、オトナになる過程で押し込めてきた本来持っていた創造性をいかに発揮させるか、が重要なテーマになります。そしてこの創造性を、インプロではスポンタナエティと呼び、これが検閲機能に引っかかって制限されている状態が通常のぼくらということになります。詳しい解説は記事末尾にリンクを貼りますので、堀さんの連載「インプロの視点」をご覧ください。
さていよいよ実際にやってみるわけですが、これがなかなか面白い。
テンポよく言わなくてはいけないので、ほとんど考える間もなく「何か」を出していると、「こんなものよく思いついたな!」みたいなアイデアが出てくることもあれば、普通のことを言っては「つまらないな」と思う自分の中の検閲を実感したり。
一方でこのできるだけ検閲をかけずに「何かを出す」というワーク、めちゃくちゃに疲れます。脳みそが一気に汗をかくイメージといいますか、普段使ってない筋肉を使って翌日筋肉痛に苦しむイメージといいますか。
そしてAさんの役割、これはこれでかなり瞬発力を必要とします。Bさんが気持ちよくアイデアを出せるように、Bさんが出してきたアイデアに対して、それがどれだけ平凡でも奇抜でも褒める、持ち上げる。これはもうAさんとBさんというよりは、一種の共同作業でした。インプロの重要な考え方に「give your partner a good time」というものがあるそうですが、まさにその考え方に沿った体験でした。
研修としても活かせるインプロの学び
他にも当日は「イルカの調教」というワークや、ステータスという概念を体感するためのワークなど、全5種類ほどのワークを体験しワークショップは終了となりました。
参加前、「即興演劇って何をやらされるんだろう……。演技とかやらされたらちょっと嫌だよな……。」とビビりまくっていたぼくですが、終わってみると堀さん相手に「インプロではどういう風に考えるんですか?」「あとはどんなワークがあるんですか?」と興味津々。
堀さんの記事も読んでいただければわかりますが、演劇と言われてイメージするような演技を要求されることはなく、ゲームのような感覚で即興演劇における重要な考え方を学ぶような体験でした。
堀さんの話では、組織においてチームビルディングを目的にした研修や、アイデア出しや新規事業開発など、これまでと違う思考回路で考える必要があるものにはインプロはぴったりとのこと。今回ご紹介した「魔法の箱」はまさにそれですね。また相手の出方次第で自分の在り方を変える必要がある営業を始め、OJTやメンター、コーチングなど対人の業務がある方には、ステータスのワークなんかが合いそうです。
これからインプロを活用した研修/ワークショップを随時企画していきます。先立って情報発信を進めていきますので、ぜひお楽しみに!
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