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八咫烏(やたがらす)
8月4日
晴れ。うだるような暑さ。
じわりと滲む汗を手ぬぐいで押さえつつ、日傘を差して歩く。
電車とバスを乗り継いで片道約3時間半。
八咫烏がお告げをくれるという神社に行ってきた。
「やたがらす」というのは古来より信仰される伝説の烏のこと。天の使者あるいは導きの神とも言われている。
神社のご利益は開運と縁結び。
浅ましい欲と好奇心だけを原動力に、早起きをして出かけた。
・・・・・
八咫烏さまがお告げをしてくれる「むすひの庭」は境内の奥にあった。
そこだけ木が鬱蒼と茂って小さな森のようになっていて、中は人工のミストで白く霧がかっている。
入り口の前に立ち、息を整えて中に入った。
八咫烏さまの祭壇に向かって手を合わせる。
…お告げらしきものは何も聞こえなかった。
祭壇前に置いてある水晶にも触れてみる。
やはり何も起こらない。
首をひねりながら一度そこを出て、もう一度同じことをした。
実は先ほどはうっかり賽銭を入れないで拝んでいたのでそのせいか?と思い、今度はしっかり賽銭箱に硬貨を落として二礼二拍手一礼してみた。
静かなまま、何も起こらない。
…痒い。
我に返ってふと見ると、手の甲を蚊に刺されていた。
社務所に言いに行こうか。
一瞬迷ったけれど、結局やめた。
きっとそういう運命なのだ。
帰ろう。
鳥居をくぐって静かに一礼した。
しばらくカラスがトラウマになりそうと思いつつ、お告げの代わりにいただいた蚊の刺し跡をぽりぽり掻きながら日傘を差して境内を後にした。
そんな夏の思い出。
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