転がる石の上機嫌 #9
◎ 読書の森で ◎
9月の残暑が嘘のように、急に秋がやって来ました。
そろそろ衣替えをしなくては。
Tシャツにパーカーを羽織りつつ、何とか日々を過ごしています。
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先日、友人に教えられて読書の森に行って来ました。
何でもそこには読書好きなこびとたちがいて、おすすめの本を紹介してくれるとか。
分け入るように森の奥へ進み、大きな赤いキノコの上に座って待っていると、トコトコトコ…と茶色いこびとが近寄って来ました。
分厚くて重そうな本を小脇に抱えています。
「南米作家の古い長編小説はいかが? とある一族の隆盛から滅亡までが描かれていて読みごたえ抜群」
本を見つめて考え込んでいると、今度は深緑色のこびとがタッタッタッ…と駆け寄って来ました。
手の中に収まるぐらいコンパクトな桃色の本を差し出して言います。
「新しい短歌の本はどう? 日常をみずみずしく切り取った視点と言葉のリズムが心地良いよ」
…なるほど、と思って手を伸ばしかけた途端にすぐ近くで「待って」と声がしました。
見ると木の陰に隠れるようにして、ぶどう色のこびとが静かに立っています。
「あなたが読みたい本は、あなたの部屋の中に」
私たちはしばらく無言で向かい合っていましたが、やがて私は心を決めて立ち上がり、彼らにありがとうを伝えて森を出ました。
そして真っ直ぐに帰宅して、部屋に積んであった未読本の山から一冊の本を選んで読み始めました。
・・・・・
ひと月に1冊も本を読まない人が増えている、という最近のニュースを聞いて、内心どきりとした人は私を含めどれくらいいるでしょう。
日々何かしら誰かしらの書いたものに触れてはいるけれど、ネットニュースやSNS発信のものばかりで、そういえばきちんと最後まで本を読み通すということを最近はほとんどしていませんでした。
読んでみたくて買った本は何冊もあるけれど、出だしで頓挫したり、全体をパラっと眺めて満足したり、一部を読んでそれきりになってしまったり。
読みたくて買うのになぜか最後まで読み切れず、たまっている本を数えてみたら全部で20冊ほど。
これがいわゆる "積読" というやつか…。
買ったのに読まないなんて意味が分からない!と、かつて誰にともなく憤慨していた昔の自分に今の姿を見せてあげたい。
そんなわけで秋になったらきちんと本を読もうと決めて、今読んでいるのが江國香織さんの長編小説『抱擁、あるいはライスには塩を』。
前に図書館で借りた本なのですが、もう一度読みたくなって少し前にあらためてフリマアプリで購入しました。
"三世代、百年にわたる「風変わりな家族」の秘密とはー"
帯にはこんなフレーズが記されていて、それだけでもう十分にそそられるのですが、西暦年と季節だけが記された23の章では、その風変わりな家族の誰かしらの視点でそれぞれの物語が綴られていて、柳島家という家族の歴史と成り立ちと個性が明らかになり、引き込まれてゆきます。
白地にレース模様が描かれただけのシンプルな装丁も上品で美しい。
季節や時代の情景と空気を江國さんの静かな文章で味わいながら、この秋はじっくり読書を楽しもうと思っています。
今年の読書週間は10/27〜11/9。
たまにはいつもの部屋を出て、お気に入りのカフェや公園で温かいものを飲みながら本を読むのも気分が上がって良さそうです。
この頃スマホやPCに向き合うと、なぜか具合が悪くなる謎の奇病を発症中。
更新ペースもだいぶ落ちてしまいました。
もう心も体もデジタル仕様じゃ無いのかも…と思いつつ、適度な距離を保ちながらもうしばらくはゆるゆる続けてゆきたいです。
元気なので、どうぞご心配なく。
10月。美味しいモンブランケーキが食べたいです。
それでは、また。
良い秋を。
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<今月の石シリーズ>
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ブログ「転がる石の上機嫌」
おもに本や映画や日々のこと。 ときどき、ヨガのこと。 読んでくれたあなたに、上機嫌で良いものを 届けることが出来ますように。
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