中庸を保った、有益な論評のお手本を見よ!『「戦後」が終わるとき』 坂元一哉(さかもとかずや)中公選書
(1月22日記)
本書のテーマは、2008(平成20)年4月から2019(平成31)年4月まで、産経新聞紙上に定期的に掲載された、その時々の政治・外交・安全保障・国際情勢などについてのコラム、論評です。
大きな特徴は、著者の視座が、超の付くほど、中立、フェア、なものということでした。
決して、おかしな左派ではないものの、ガチガチの保守・右派でもありません。
だから、信頼できるのです。
時には、「それは、あまりにも紳士的過ぎる」と感じることも少なくありませんが、大局において、著者と方向性が同じだと、「うん、よし、間違ってないぞ」と満足する私がいます。
語り口もマイルドで、この人、人柄もいいな、と伝わってきます。
2021(令和3)年3月に大阪大学大学院を退官しましたが、さらなる健筆、ご活躍を期待する一人です!!
目次が細かいので紹介しませんが、
麻生、福田、悪夢の民主党政権、安倍政権の間に起こった諸々の問題・出来事が幅広く語られています。
集団的自衛権
尖閣
対中国
対ロシア
対北朝鮮
対アメリカとの同盟
民主党政権
普天間
憲法
戦争
トランプ
ウイルス戦争
安倍政治
と、どれもバランスが非常に良く、このような視座、語り口の良さを、是非、皆さんに知って欲しいと、「強く!」望んでいるほどの書でした!
著者が唱える、政治の第一の要諦は、「スローガンを正しくする」です。
これ、重要で、安倍さんの『日本を取り戻す!』は、まさに日本の国際的地位、国防、経済是正、教育の是正など、日本の良さを取り戻す、再構築するための闘いでした。
もっとも、安倍さんの場合、他の人と違って「首相になるのが目的」ではなく、「日本を取り戻す各種の施策を実行するための手段として首相の地位が必要」でした。
ここ、皆さん、よくよく胸に銘記して下さい。
2014(平成26)年7月1日、安倍さんは、集団的自衛権の限定的行使を閣議決定しました。
集団的自衛権は、もともと各国が自然に持っている「権利」でした。
権利であって義務ではありません!
日本は長く、この権利を「保有するが、憲法上、行使できない」としてきたのです。
ということは、使ったとしても国際法上問題はありません。
そうした中、ここで「行使できる」に舵を切ったのは、日米同盟深化のために必要だったからです。
日本が攻撃されたら、アメリカは加勢して戦うのに、逆にアメリカが攻撃されても日本は何もしないのでは、同盟は、いざという時、有効に運用されない可能性が高くなってきたからです。
アメリカ国民とて、無知ではないので、なんで日本が助けに来ないのに、我々が若者の血を流してまで助ける必要があるのか、という空気が膨らんできたことは否定できません。
安倍さんが行使を発表すると、アメリカは政治家、軍人、挙って大歓迎していますし、日米同盟の絆が強まることにより、東南アジア情勢も安定すると、ほとんどのアジア諸国は喜んでいました。
批判したのは、中国、北朝鮮くらいです。
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