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(美達の蔵出しオススメ) 179 『ほんとのこと言えば? 佐野洋子対談集』 佐野洋子(さのようこ) 河出書房新社 2013年4月刊


※初期のレビューです。今回、初出です。ご留意下さい。

本書は1988(昭和63)年から2007(平成19)年までの対談集です。
対談相手は、小沢昭一さん、河合隼雄はやおさん、明石家さんまさん、谷川俊太郎さん、大竹しのぶさん、岸田今日子きょうこさん、おすぎさん、山田詠美えいみさん、阿川佐和子さわこさんの面々でした。

著者の作品は相当の数になりますが、『100万回生きたねこ』『シズコさん』『死ぬ気まんまん』『空とぶライオン』『役に立たない日々』など、読んだ人も多いのではないでしょうか。

この人、大人と子供の感性を持った人でしたね。
対談を読んで、尚のこと、その思いを深くしました。

夫でもあった谷川さんは、帝王切開で生まれたから、暗い産道も通ることなく苦労知らずだった(谷川さんが)と語ったのですが、「そうか!」と思ったものです。
私も、母が生きるか死ぬかの難産で、医者が私のことは諦めてくださいと言うのを、暴力の権化である父が、「片方でも死なせたら、おまえも殺してやる」と脅して、やむなく帝王切開となったのでした。
『夢の国』にあるように、父の凶暴さが私をこの世に出してくれたのです。

さて、谷川さんは、知性と感動する心は別と言っています。
通常、対談本では、度々、感心したり、発見や共感する場面はないんですが、本書は多かったですね。
最も盛り上がりを感じさせてくれたのは、おすぎさんとの対談でした。

佐野「(略)何だっけ、コギャルがおっさんだまして何かしてるって……。」
おすぎ「援助交際。」
佐野「はいはい。で特攻隊で、二十とか十八でものすごく優秀な人たちが命を賭けて日本を守ろうとしてあいつらのために命を捨てたかと思うと、あたし悔しいよ、やっぱり。」

私も同感です。

佐野「(略)あたしね、何が一番いけなかったっていうと、戦後民主主義がいけなかったと思うのね。(略)」
「やっぱり、人間って平等ってことはあり得ないんだよ。(略)」

この2人の対談、時をはさんで2編収録されていますが、笑いと軽妙さの中に、鋭さがありました。

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