学習障害を自ら克服した、情熱と感動の書!!『霧のなかのバーバラ』片山恭一(きょういち) 文芸社
<お知らせ>
緊急で、レビューは7月初めになりますが、『安倍晋三元総理追悼論』(高木書房)を是非、読んで下さい。
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深田匠
高木書房
現在までの最高の書であり、これ以上の内容の書は、たぶん出ません。
著者の情熱と誠実さと公正さも卓越しています。
一家に一冊、友人・知人にも配って下さい!!
<本文>
(5月9日記)
本書は、昨年の3月12日に旧ブログにアップした、平居さんが紹介した一冊でした。
オビには、「脳を育てて運命を変える」「困難を乗り越えた、その画期的なノウハウ「アロースミス・プログラム」を追う」とありました。
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主人公のバーバラ・アロースミス・ヤングは、1951年11月にカナダのトロント市で生まれています。
先天的な肉体の障害と、学習障害を抱えていました。小さい頃のバーバラは、数字には、からっきし弱く、計算どころか時計も読めませんでした。識字障害もあり、6が9,bがdになります。
そのバーバラは、幸い記憶力が良かったので、数ある問題と答えを丸暗記することで、なんとか学校の授業に参加できていたのです。ただし、その記憶量と作業は膨大なもので、「ハードワーク」を強いられる日々でした。
それでも教師や周りの大人たちはバーバラのことが理解できず、反抗的な子だと曲解していたのです。数字だけではなく概念を理解できない、推論や論理的に考えることができない、といった状態でした。
他者との会話においても、相手の言ってることがわかりません。単語と単語の関連がわからないので、当然、全体が何を語っているかもわからないのです。
試験では丸暗記したところが出題されると高得点、そうでなければ0点に近いものでした。試験が終わる度に、頭の中を空っぽにするため乾燥機にガンガン頭を打ちつけます。
時には、ベッドの上に本を広げたまま、泣き続けることもあり、寄り添ってくれたのは飼い猫だけでした。14歳の時には、あまりの辛さに自殺を考えたこともあったのです。
記憶力のおかげで高校から大学にも進学できました。専攻は母親と同じ栄養学でした。しかし、暗記だけでは、うまくいかず、1年後に児童科に変えます。
子どもにかかわる仕事に就きたいと考えるようになったのです。そこで就学前の子どもたちを対象とした研究施設で、子どもたちを注意深く見るようになり、そのレポートが生まれて初めて評価されたのです。
それでも授業についていくのが困難となり、1年間の休学をします。その後、復帰して児童学の学位を取り、その大学の未就児研究室の主任として働くことになったのです。
その後、バーバラは子どもたちの学習プロセスについて、より深く知りたいと発起して大学院に進みました。彼女が専攻したのは、「学校心理学」で、行動障害や学習障害の診断や治療に、臨床心理学や教育心理学の原理を応用するというものでした。
この時もバーバラは学習の難儀さに疲れています。バーバラは、睡眠時間4時間で頑張り続けたのです。そのストレスで彼女の体は、種々の疾病に苛まれていました。
そんな中、1977年8月、彼女はある本で一人の男を知ります。旧ソ連軍兵士で、銃撃によって脳に障害を負って、それまで、できたことができなくなった男でした。
バーバラと同じく、会話を理解することも、時計を読むこともできません。彼女は、「ここに私がいる」と感じました。
その兵士のことを書いたのは、神経心理学者でした。それによれば、元・兵士は銃撃されたことで、脳の一部を損傷して、正常な機能が失われていたのです。
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無期懲役囚、美達大和のブックレビュー
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