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刑務所の食事を作る面々の実態をユーモラスに綴った良書! 『めざせ!ムショラン三ツ星』 黒栁圭子(くろやなぎけいこ) 朝日新聞出版
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(11月3日記)
テーマは、「刑務所の管理栄養士が綴った、刑務所の食事と、調理する受刑者の実態」でした。
著者は、法務相の専門職の「法務技官」の管理栄養士で、全国に20人しかいないうちの1人です。
技官というのは、所内で刑務官と異なる役割を担う人で、作業を教える技官や、医務での医師の補助をする医務技官などがいます。
栄養士の仕事は、献立を考えること、材料の発注、調理指導が主です。
著者が現職に就いたのは平成24年ですから、10年以上のキャリアを持っています。
離婚して2人の娘を育てるために、刑務所と聞いても断れず、「よし」と決意の末に就きました。
勤務先は岡崎医療刑務所で、ここは精神疾患を持っている受刑者を収容している所です。
人員はたったの80人で、一般の刑務所なら、一つの工場と同じくらい小さな施設でした。
小さな刑務所といっても、普通は200人から400人台、中くらいなら500人から700人台、やや大きめは1000人まで、それ以上は大型です。府中刑務所は、昔は4000人もいましたが、今は3000人弱です。
そうした大きな所の工場は、一つでも100人前後います。
ちなみに私の所は、一工場が十数人から大体30人までの小さな所です。その工場がいくつかあります。
刑務所で受刑者の食事を作るのは、同じ受刑者です。
どうやって選ばれるかというと、社会での調理経験者、以前に刑務所で調理をしていた人、模範囚などです。
包丁を使うので、質の悪い者は選ばれません。
あと、老年というのも、力仕事があるのでNGですが、私が希望すれば、通常の工場で無事故で2~3年すごしたあと、行けるでしょう。
要は体力があるか、です。
目次の一部をざっと紹介すると、
みりんもバナナの皮もアルミ包装もNG!
責任重大すぎる厚焼玉子20等分
暑くて寒い苛酷な労働環境
号令に始まり号令で終わる炊場の一日
男子には通じない!感覚的な料理用語
バナナの皮からアレができるなんて
レギュラーサイズのお菓子に憧れて
ムショメシにだって遊び心を
みょうがはどこまでむくんですか?
なんで煮魚に片栗粉を使うの?
大ブーイング!牛丼が牛肉コロッケに
うずら卵争奪戦
軟飯で、おはぎもどきが泥団子に
歴史的改革!煮物の下ゆでやめました
男子の腕力が頼もしい炒め作業
君たちに火傷はさせられない!私が焼く!
全国刑務人気ナンバーワン!「どんぶりぜんざい」
不動のセンター「どんぶりぜんざい」
おいしくて腹もちバツグン「日替わりドーナツ」
失敗から生まれた「獄旨ドーナツ」
年越しカップ麺にワクワクウキウキ
「花シュウマイ」おいしくな~れ
炊場男子たちだってお肌の調子が気になる
多田刑務官がなす嫌いを克服?
塀の中では食べられない「湯気が出るもの」
などとなっていました。
著者は1969年生まれですが、本書の魅力は、単に刑務所の内幕、食事というだけではなく、彼女のキャラクター、文才、受刑者たちへの愛情と共感にあり、これらが本書を面白く、かつ、興味を引き、ほのぼのとしたものに仕上げていました。
通常、編集者はバサバサと文章を修正しないので、著者の文章は本人のポジティブさ、「まずは、やってみよう」という姿勢と、ユーモア、批判精神と包容力の賜物でしょう。
これが、お堅い性質の人であれば、ただのレポートのようで、面白さも共感も大きく損なわれていたはずです。
私は塀の中の住人として約30年強なので、著者の表現する受刑者たちの様子がよく伝わってきました。
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無期懲役囚、美達大和のブックレビュー
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