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人間の善性と寛容と愛の秀作! 『道ありき<青春編>』 三浦綾子 新潮文庫
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(2023年7月13日記)
本書のテーマは、「寛容、慈悲、思いやり」です。
本書は著者の自伝的三部作の第一作目にあたり、1946(昭和21)年から1959(昭和34)年まで、24歳から37歳までの出来事が叙述されています。初版が1980(昭和55)年、2014(平成26)年までに72刷となっていますが、内容が素晴らしいので紹介しました。
三浦綾子といえば、一千万円懸賞小説に『氷点』で当選したのが有名です。時代は1964(昭和39)年、この時の一千万円ですから、現在価値なら一億円以上でしょう。
今、小説の応募で最高額は宝島社のミステリーで、一千万円くらいのはずです。昭和39年、なんと59年前になります。
東京五輪、海外旅行解禁、リポビタンD発売、オバQ、サイボーグ009、アイビーファッション、みゆき族、新幹線登場の時でした!
著者は小学校の教員を退職し、結核、脊椎カリエスで13年も闘病生活を送るのです。それもギプスに包まれ、ほとんど寝たきりの生活でした。
この時、善良で思いやりあふれる、幼馴染の前川正の献身的奉仕によって、希望を持ち、生きていました。
生来の著者は勝ち気で潤いに欠ける、自他に厳しい性格でした。
キリスト教を信仰する前川に対して、「クリスチャンなんて偽善者」「お上品ぶって」「クリスチャンは精神的貴族ね。わたしたちを何と憐れな人間だろうと、高い所から見下しているんじゃないの」と喧嘩腰に前川に言う性分です。
この前川は、著者が病とわかって婚約者と別れた時、「困ったことです。それでは綾ちゃんに合う人を探さなくては」と言った真正の善人でした。
そうして二人の仲が親密になると、前川は著者との生活のために医師を目指しますが、前川自身が不治の病だったのです。
その体であっても前川は懸命に著者を励まし続けます。著者は体が言うことをきかないので、いつも床の中から応対するのです。
著者は結核でしたが、この時代、治ることなく亡くなる病と言われていました。それが脊椎カリエスに進行し、絶対安静が何年も続きます。
この前川の言動が、あたかも聖人のようなのです。温厚で善良で柔和で理性的で、言葉を知るだけで、こちらまで寛容の精神があふれてくるようでした。
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無期懲役囚、美達大和のブックレビュー
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