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だまされるとは、どういう仕組みか!? 『全員カモ』 ダニエル・シモンズ クリストファー・チャブリス 東洋経済新報社


(7月19日記)

本書のテーマは、「人は、なぜ、どうやってだまされるのか、その仕組みと心理メカニズム」についてでした。
著者たちは、心理学の教授と、医療機関の教授でした。
サブタイトルには、人心操作の授業、「ズルい人」がはびこるこの世界で、まっとうな思考を身につける方法、とありました。
皆さんは、メディアで、簡単に騙される人々を知って、「なんで、こんな簡単な手に引っかかるのだろう?」と感じたことはありませんか?
そうしたことも含めて、脳科学も使って、仕組みを説いたのが本書です。

目次の一部を、ざっと紹介すると、

集中フォーカス
相手は何を隠しているのか
成功者の秘密
可能性グリッドで真実を見抜く
起こらなかったことを考えよ
予測プレディクション
ウソほど真実に見える
人は予想したものを信じる
見えないゴリラ
いまやデータの偽装は日常茶飯事
先を見通す力に最も大切なこと
思い込みコミットメント
判断をあと回しにする
マンデラ効果
一瞬でカモになる典型的な8つの思い込み
効率エフィシエンシー
相手の痛いところをつく
たった一つの質問をしてさえいれば!
人はわかりにくいものに金を出す
核心から逃げる8つのズルい答え方
交渉を有利に運ぶ3つの質問
習慣から抜け出す方法
一貫性コンシステンシー
この世界は不合理だ
うますぎる話を見抜く方法
さあ、ノイズを歓迎しよう
親近性ファミリアリティ
これ知ってるを疑え
くり返すと真実になる
シンプルで効果抜群
驚くべきフィッシングの手口
正確性プレシジョン
数字の落とし穴
データと数字を正しく読めていますか
具体性と正確性
グーグルマップが提案するルートを信用すべきか

などとなっていました。

著者は、目の前にある情報だけに注目すると、それを必要以上に信じてしまいやすくなると述べていますが、その通りです。
私たちが日常生活で騙されないために注意しなければならないのは、「信じやすさ」の傾向と述べていましたが、これは日本人には特に強く、懐疑的に考える、反証できるかどうか考える、などの習慣が不足気味です。
それだけ善良な民族でもあります。

いい例が、テレビ、SNS上などでの有名人やスポーツ選手、インフルエンサーの誘導、商品のPRです。
そうした人たちが使っている物は、無条件に近い形で「イイ!」となって売れます。
たとえば、大谷選手がカネボウのコスメのCMに出ると、商品が売れますが、「野球選手とコスメ」という見方ではなく、大谷という好感度の高いキャラクターがPRしているというので売れるわけです。
これも一つの錯覚というか、心理をついています。
そのため、有名人がやっているかのように装って、投資の金を集める詐欺さぎまがいの商法も増えています。
私は小学生の頃、芸能人のCMを見て、「この人とチョコレートは関係ないのに、どうして買うんだろう?」と不思議でした。
コスメのCMに女優が出ていると、普通の人はこれを使ってもこんなにキレイにならないのにな、と考える小学生でした。

人は騙される時、反対のことは考えないのが一般的です。
既に自分の中では、それを実行しよう、それが実現するのだ、という思いしかありません。
「オレオレ詐欺」の中には、同じ人に数十回にわたって送金させた事例があります。
被害額は数千万円、時に1億円を超えますが、なんで数十回も送金したのかと疑問ばかりがつのりますが、この時、被害者は毛ほども疑っていないのです。

一瞬で「カモ」になる典型的な8つの思い込みでは、

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