(美達の蔵出しオススメ)『炎を越えて』杉原美津子

<お知らせ>

連休の事情で、4月27日(木)午前10時前後以降のコメントへの返信は、5月11日(木)になることを承知しておいて下さい。(美)

※2014年10月に届き、2015年1月に掲載したレビューです。ご留意下さい。

本書は、犯罪被害者になった著者が、己と周囲との闘いを克服し、生き直した物語です。本年の2月にNHKスペシャルでも放映されたようで、「あの人か」と知っている人もいるのではないでしょうか。私は前著の『ふたたび、生きて、愛して、考えたこと』(トランスビュー)を読んだ時に、著書の言葉に共感を覚えて、今回も読んでみました。

事件は1980(昭和55)年8月、新宿で著者が帰宅しようと乗り込んだバスが、犯人により放火され、全身の80%が焼かれたというものです。奇跡的に一命をとりとめた著者の治療の様子が叙述されていますが、こちらの身にも、その痛みが伝わってくるようでした。

その後、結婚、両親の不仲、母親との確執、夫の認知症の介護と死、そして、最後は火傷治療の際の輸血で感染したC型肝炎がガンになり余命半年という、苦難の連続が綴られています。

著者は初めから強い意志を持っていたわけではありません。苦難に遭う度に、苦しみ、悩み、葛藤かっとうがあります。全国から著者のことを知り、励ましの手紙が来るのですが、それに対しても重荷を感じているのでした。

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