紙の本への憎しみと、健常者の無知を描いた、意識改革の一冊!『ハンチバック』市川沙央(いちかわさおう)文藝春秋
(8月31日記)
小説のテーマは、「障害者の人生、その日々の暮らし、思い」でした。
著者は「先天性ミオパチー」という難病の筋疾患の当事者です。
この病気は筋肉の遺伝子の異常が原因で筋力が弱くなります。
著者は10歳の時にこの難病と診断され、14歳で入院、気管切開後、人工呼吸器を付け、今に至っています。
7歳上の姉も同じ病気で寝たきりです。
著者は43歳でした。
去る7月19日、第169回芥川賞を受賞しています。
受賞の際、「自分と主人公が重なるのは30%」と語っていました。
私が本書を読もうとしたのは、障害を抱えた人の生活を知りたかったことの他、著者が20年も文学賞に挑戦し続けたと知ったからでした。
人工呼吸器なしで生きられず、体も不自由な中、20年間、どんな思いで挑戦し続けたのか、それを思うと、「これは読まねばならん。紹介せねば」となりました。
著者は昨年、20年間挑戦し続けた「ノベル大賞」に最大の自信作を出し、4次選考まで行ったものの落選し、大きなショックを受けたそうです。
その後で、障害者が小説・映画などでどのように描かれてきたかを調べ、特別扱いされてきたと指摘し、自分なりの作品を書かねばと奮起したのです。
2012年には八州学園大学に特修生として入学、翌年、正科生となり、2018年に卒業していますが、全てオンラインでの受講でした。
他に早稲田大学人間環境学科も卒業しています。
主人公は井沢釈華、自らのことを「せむしの怪物」と呼んでいます。
ハンチバックとは、せむしのことです。
親が遺したグループホームで暮らしていますが、著者も父親の建てた障害者向けグループホームで生活しています。
本書で訴えたかったのは、「紙の本への憎しみ」とも語っていました。
目が見える
本が持てる
ページがめくれる
読書姿勢が保てる
書店に自由に買いに行ける
などの特権に気付かない読書家たちの無知な傲慢さを指摘したい、ということでした。
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