秋を五感で堪能できる「落ち葉アート」の世界
こんにちは。
ガーデンデザイナーの柵山です。
今年もようやく秋が深まってまいりました。
この時期の私は、毎朝その日の仕事のスケジュールと同時に
風の有無を確認することが日課となります。
私のライフワークでもある「落ち葉アート」をやるためです。
このひと月だけは、風次第の日々といえるのかもしれません。
まちの歩道の“小さな感動”をSNSで共有
私と落ち葉アートのきっかけは、2018年にまで遡ります。
仕事先での帰り際、落ちているケヤキの落ち葉で、歩道に何気に小さなハートを形作ってみたのです。
すると、人だかりができてしまったのです。
これが私の落ち葉アート創作原点です。
その時のハートがこれ。
まさに時代は「インスタ映え」という言葉が全盛期。
皆が携帯で写真を撮り、私も、この翌日からインスタを始めました(笑)
その際に、歩道沿いの店舗のアパレル店員の女性から声をかけられました。
「ここは星が丘なんだから星を作って!」というリクエストでした。
それで、翌日イチョウの黄色い葉で星を作ってみたのが、これです。
私の記念すべきインスタ初投稿の画像です。
落ち葉アートを通じた触れ合い
路上での落ち葉アート制作途中では、他にも何人もの方がびっくりして振り返り、戻ってきて、声をかけてくれました。
ある女性は、30分くらい見学し、最後はホウキを使ってアート制作を手伝ってくれました。しかもその人は、お腹に赤ちゃんができたばかりで、その病院への道のりでの触れ合いでした。「これで願いごとが叶いそうです」と言っていただいたことが、私の大切な思い出となっています。
SNSだけでなくネット上の記事でも「謎の流れ星発見!」といった内容でいくつも取り上げていただき、すごい反響でした。
落ち葉アートは、路上や公園などで行うため、ストリートパフォーマンスのような要素があるのです。なので、ちょっとドキドキしたり恥ずかしい面もあるのですが、街の人との触れ合いが、実は落ち葉アートの醍醐味でもあったりします。
木々の枝で色づいた葉は、路上に落ちてもまだなお美しく儚い面があります。そんな風に思って歩いている人は、少数派なのかもしれません。だからこそ「そうそう!私も落ち葉好きなんです!」という貴重な賛同者に出会ったような感動が生まれるのかと思っています。
知らない他人と共感することでどれだけ幸せな気持ちになれるのか、落ち葉アートで実感することができました。
ここに映っている方は、お願いした訳ではなくたまたまここにいた方です。中にはモデルになってくれたり手伝ってくれた方もいらっしゃいました。
落ち葉アートを自分でもやってみよう!
この落ち葉アート。是非、多くの方にも体験していただきたいと思っています。
カンタンではありますが、私の「落ち葉アートの作り方」をお伝えしますね。
私はガーデンデザイナーなので、落ち葉アートも大きな意味で「ガーデニングの1つ」と解釈しています。だから、あくまでも外で制作することにこだわっています。
まず、落ち葉を一枚一枚並べて形づくるもの。
これも簡単なものから、複雑なものと様々です。
その場で感じたことから連想して作品を作ることが、実は重要で人の心を動かすところなのです。
赤い葉っぱだからハートとか、黄色い小さな葉っぱだから星とか、色のグラデーションを表現してみるとか……
自然の風景の中にさりげなく存在する意図的な造形が、心地よい違和感を生み出し、見る人にサプライズな感情を与えますよ。
道を歩いていて、こんな模様があったら ドキッとときめきます!
あと、落ち葉をほうきで掃いてかたまりとして形づくる方法もあります。
これは、制作中は、掃除をしている人にしか見えないのですが(笑)
落ち葉アートは、街の景色に模様を描くようなもの。まさに簡易な庭づくりのようなものなのです。
ゴミが宝になるとき
都会であればあるほど、残念ながら落ち葉は「ゴミ」という認識が強くなると思います。日頃木陰や緑を提供している街路樹や公園の木々が、秋の落ち葉の季節になると邪魔者扱いになって切られる姿を私は、何度も見てきました。
現代社会において、落ち葉はネガティブなもので、新築して玄関先に木を植える時も、葉の落ちない常緑樹を植えたがる方が多いのです。
本来落ち葉は、大地の資源です。そこに含まれるミネラルは川を流れ海の豊かさに貢献するものです。しかし都会だと、ゴミ袋に入れられ処分されます。生態系の本来の循環が断ち切れてしまうわけです。
最初はただただ楽しいで始めた落ち葉アートですが、いつの間にか、都市と自然の在り方などに思いを巡らすようになりました。
秋に落ち葉アートを楽しむ町がたくさん増えたなら、落ち葉に対する印象は変わるでしょう。現代人にとってネガティブな問題とされる自然がもたらす作用に関してもっと寛容になれるのではないでしょうか。
落ち葉アートはゆとりの精神
こちらの写真はちょうどこの秋、東山植物園で実施した落ち葉アートのワークショップの様子です。
風の無い穏やかな日でした。
老若男女が笑顔で落ち葉と戯れる様子をみて、こんな光景が住宅街や団地などの日常であったならと深く思いました。
秋になると皆で落ち葉を掃除しながら、葉っぱで遊んで、できることなら焼き芋でも食べたいところです。
そんなゆとりと遊びごころがある町が増えたらいいなと思います。
これは、一緒につくった学生さんの作品。
ハナノキの下で、落ちたての新鮮な葉っぱで描いたもの。
ハナノキは、愛知県の木なんですよ。
せっかくなので覚えてみてください。葉っぱの裏が白いんです。
落ち葉は、まだまだ12月中旬までたのしめます。
朝起きて風が緩やかだったら街に出て、ゆったりした落ち葉アートの時間を過ごしてみてください。