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「クリエイターインタビュー:絵が描けなくてもOK?切り絵作家にお話を聞いてみました」 子どもとアートと vol.05

こんにちは、はるのまいです。
今回は、東海エリアにゆかりのあるクリエイターインタビューの第2回目です。

岐阜県在住の切り絵作家「ゆまあひmaki」さんにお話を伺いました。

ゆまあひmakiさんの切り絵作品


ゆまあひさんは、『はじめてのカラフル切り絵(誠文堂新光社)』『カラフル切り絵キット(講談社)』を始めとした切り絵の実用書を多数出版されています。また、岐阜や名古屋などで主に大人の方向けに、切り絵教室も主催されていらっしゃいます。プライベートでは、社会人のお子さん2人を持つ、母親業の大先輩です。

私とゆまあひさんの出会いは、2012年の東京国際ブックフェア。クリエイターを集めてグループでブースを出展する企画があり初参加したのですが、その時に同じ東海圏から来たということで色々と気にかけてくださり、とてもお世話になりました。

この機会に改めて、ゆまあひさんがどうして切り絵を始めたのか、制作や切り絵教室のことなどについて、詳しくお話を伺ってみたいと思います。


会社員から切り絵作家に?

――ゆまあひさんはいつ頃から切り絵を始められたんですか?

ゆまあひ:子どもたちが小さい頃はずっと専業主婦でしたが、ステンドグラスをやってみたいなと思っていて、体験にも行ってみたのですが子どもたちが材料に触ると危ないという事もあって断念しました。
そんな中、美濃和紙で有名な岐阜県在住ということもあり、和紙を手に取る機会に恵まれました。光に透かすと、まるでステンドグラスのようにきれいな和紙。これを使って何かできないかと思っていた時に出会ったのが、切り絵でした。
こうして、私の切り絵作家への道がスタートしたんです。

最初は趣味でしたが、子どもたちが小学校に入るくらいから本格的に制作を始めました。当時はインターネットが広がった頃だったので、コンペに作品を応募して、それが採用されたりしました。

――切り絵の制作活動をしながら、Web制作会社にご勤務されていらっしゃる時期があったんですよね?

ゆまあひ:はい。もともと子どもが生まれる前までは、コンピュータソフト会社でプログラム開発に携わっていました。ただ、出産から10年以上ブランクがあったので、働き始めてから、また学び直しが必要だと痛感して…。Web制作会社ではデザインだけでなくコーディングもやっていたので、日々進化していく業界のスピードを前に、やはり切り絵の方が自分には合っているなぁと感じだして…。数年間働きましたが、切り絵のご依頼も増えてきたところだったので、創作活動に専念することにしました。もちろん、Web制作会社での経験は現在も自身のホームページ制作などで役に立っています。

――なるほどです。切り絵って図案を考える際に、絵とはまた違う想像力が必要な気がするのですがそのあたりはいかがですか?

ゆまあひ:切り絵は絵が描けなくても、色の組み合わせを考えるだけで、とても楽しいですよ!
主催している切り絵教室では、テキストに沿って基本から自分のペースで学べますので、初めての方はもちろん絵が描けなくても大丈夫です。
同じ図案でも使う紙によって全然雰囲気が変わりますし、色を塗るのではなく組み合わせていくので、宝探しをするような感覚で、自分だけの作品を作ってみてください。
また、教室では作品を見せ合う時間もありますので、新しい発見や出会いがあったりするのも楽しいですよ。

――ゆまあひさんは、図案のアイデアを考える際に、どんなところから発想や着想を得ることが多いですか?

ゆまあひ:私はいつも日々の暮らしの中から着想を得ているかもしれません。美術館や展示会ももちろん観に行きますが、それ以外にのところからアイデアは出てきますね。夕焼けがきれいだなーとか、このティーカップの柄いいなとか。どんなことでも、創作の刺激に成り得るんです。『自分はこれ好きだな』という感覚で、常にものを見ることが大切だと思います。

――作品を見ると動物モチーフの切り絵が多いですが、こちらのチョイスも「ゆまあひさんの好き」からですか?

ゆまあひ:いつも感覚で作っているので、特に意識してはいなかったけれど…以前は植物や模様モチーフの切り絵が多かったですが、だんだんと動物を多く作るようになった感じです。人よりも動物を描くのが好きなのかもしれません。色々な種類があるから飽きないのかな?和洋折衷の雰囲気も好きで、飛べないペンギンを飛ばすとか現実にはないようなことを切り絵の世界で実現するのも、今の作風のひとつになっています。

――光を当てると、本当にステンドグラスのように光り輝いているように見えるんですね!以前に和紙は自分で染めることもあると伺いましたが、こだわりの深さに感心してしまいます。


切り絵作家の子ども時代は?

――次は、もう少しプライベートなことを掘り下げてお聞きしたいと思います。ゆまあひさんは小さい頃はどんなお子さんでしたか?

ゆまあひ:そうですね…好奇心旺盛な子どもだったと聞いています。気になったら、何でもまずはやってみる子だったと。それは今もずっとそうだと思いますね。

――今でこそプログラミング教育が小学校でも必修化していますが、当時はまだインターネットもなく、パソコン自体に興味を持つこと自体が珍しかったように思います。ゆまあひさんがプログラムを学んだことには何かきっかけがあったのでしょうか?

ゆまあひ:うちの家は、ちょっと変わっていて…(笑)。小学生の頃はそれこそ3種の神器(カー、クーラー、カラーテレビ)の時代だったのですが、当時電気関係の仕事をしていた父親が、何を思ったか車やクーラーの前にパソコンを買ってきたんです。それで小学生の頃から、パソコンをさわって、プログラミングなどで絵を動かしたりしていました。
だから夏にクーラーのある親戚の家に行くと涼しくて涼しくて(笑)「冷蔵庫の中にいるみたい!」と感動して、初めてクーラーの存在を知るといった感じでした。

――お父さまが先駆けてパソコンを買われていたというのが、ゆまあひさんの最初の職業選択に影響していたのですね…!ちなみにゆまあひさんご自身は、どんなことを心がけて子育てをしてきましたか?

ゆまあひ:なるべくいろんな機会を与える、というのはずいぶん意識してやってきました。見たことのないものはできないから、やっぱりいろんなことをやってみて、そこから子どもたちの興味の湧くものを見つけて…という流れがいいですね。

――お子さんたちも、やっぱりものづくりがお好きなのでしょうか?

ゆまあひ:やはり環境からして家に画材やら何やらが色々とあったので、好きだと思いますよ。
親が好きなものは、当然子も興味を持つし、真似したくなるし…好きになることが多いのではないでしょうか。
そもそも知らないと、興味を持つきっかけもありませんからね。

――では最後に、今の子育て世代の方達へのメッセージをぜひお願いします!

ゆまあひ:当時私は1人で年の近い子ども2人みていたので、その大変さを知っている分、いま共働きで子育てしている方はみなさんどうやっていらっしゃるのかなと本当に感心してしまいます。昔はSNSもなく、私は文字通り公園デビューでお友達を作っていましたが、今はなかなか人と接する機会が限られていますので、また当時とは違った難しさがありますよね。私は今に至るまでに、回り道、遠回りをたくさんしました。けれど「もっとこうしたい」という思いに突き動かされて、制作を続けています。子育ても同じで、自分の中の「もっとこうしたい」という思いを大事にされると良いのではないでしょうか。

…お互い、それぞれの環境でがんばりましょう!

――ありがとうございました!

絵が苦手でも楽しめる!和気あいあいの切り絵教室

切り絵を通して、優しい気持ちになれたり、日常とは異なるもう1つの自分の居場所を持ってもらえたらいい。そんな想いで、教室も開催している ゆまあひさん。

切り絵自体の魅力はもちろんのこと、ゆまあひさんの温かな人柄に引き寄せられて教室に通っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
参加者は30代~50代くらいの方が中心ですが、最高齢の方は80代の女性までいらっしゃるのだとか。老若男女関係なく、絵が苦手でも問題なし。切り絵が好きという共通項で和気あいあいとやっているそうです。

家でも職場でもない、新しい居場所や自分を、発見できるかも?

「切り絵、やってみたいなー」と興味が湧いたら、ぜひ、ゆまあひさんの本や教室もチェックしてみてくださいね。

■ゆまあひmakiさんホームページ
https://yumaahi.com/