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2人の子どもを育てた平凡な母が観た映画『母性』
※ これは、好きな映画について語り尽くすnoteです。ネタバレだらけです。ご注意を。(成人した子どもが2人いる私が、話題の映画『母性』を観て、母性について考えました)。
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どんな人間関係だって、お互いの気持ちがピッタリ重なっていることなんて、ない。いつもどこかしらすれ違っていて、曖昧な部分がある。
それなのに、その関係が母娘というだけで、すれ違いが悲劇になるのは何故だろう。母が自分の娘と「娘でもある自分」を比べるからだろうか。娘が自分の母と「私は将来こんな母になりたい」と思う理想像とを比べるからだろうか。
2022年12月12日(月)、TOHOシネマズ錦糸町オリナスに、映画『母性』を観に行った。
累計120万部を突破した湊かなえの『母性』が原作だ。実母(大地真央)を敬愛するあまりに“子ども”という殻から出てこないまま母になったルミ子(戸田恵梨香)。強気の言動で自分を守りながらも、心の奥底で、ひたすら母からの愛を求める高校生の娘、清佳(永野芽郁)。この2人が同じ出来事を全く違う各々の目線から見て、すれ違っていく様子が描かれている。父の存在感があまりにも薄い家庭の中で、母からの愛を求める清佳の行動は空回りし、すれ違いは悲劇に向かっていく。
結婚後、義母(高畑淳子)から辛く当たられ、髪を整える余裕もなく、背中が丸くなっていくルミ子。娘を愛していないことは言葉以上に表情が物語っている。一方、瞬き(まばたき)すら忘れたような張りつめた表情の清佳。頬がいつも寒々とこわばっている。緊張感に包まれていて、心の中で母に対してビクビクしているのが伝わる。
すれ違ってはいても、共通する頑な(かたくな)な性質を感じさせる母娘、戸田恵梨香と永野芽郁。対照的な母を演じる大地真央と高畑淳子。大地真央は母性愛にあふれていて、“こんなお母さんだったら、ずっと子どものままでいたい”と私も思う。高畑淳子は鬼気迫る演技で、孫と一緒にお遊戯をしている場面ですら、何故か怖い。
役者さんたちの迫真の演技に惹き込まれながら、母性について考えさせられた。
母から娘への「愛している」は、高校生の娘にとっては多かれ少なかれ息苦しいものだろう。それでも多くの“娘”たちは、少なからず嬉しい気持ちも持つのではないか。
一般的な母と高校生の娘の関係をそう捉える私は、おそらく母性を持っている。
母性はどんな女性も持って生まれるものなのだろうか。誰もが持って生まれ、出産と同時にわいてくるものなのだろうか。母性とは何か。
100人いたら100通りの答えがあるだろう。何故なら母一人一人に個性があり、娘一人一人にも個性がある。様々な環境、他の家族の性格なども相まって、唯一無二の関係性の話だからだ。
母性を持っていない人もきっといる。それでも、その人と組み合わされて“娘”になってしまったとしても、人は前に進むことができる、そう信じている。
心揺さぶられ、考えさせられる映画だった。これからも折に触れて「母性」について考えていきたい。
三田綾子
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