七十二候 菜虫化蝶(なむしちょうとなる)
メタモルフォーゼの話だが
GacktもZガンダムも登場しない
蝶の話だ
蝶は恐竜よりも古くから生きる
昆虫が羽を得たのは
ざっと3億5000万年前だそうだ
蝶は完全変態する昆虫で
これをメタモルフォーゼというが
実はほぼ飛翔能力の獲得のためにある
と言って差し支えない
事実、昆虫の98%が飛翔できるが
その80%は変態により飛翔能力を獲得する
そして完全変態の昆虫は
進化の系譜でいうと比較的新しい
彼らの飛翔が完全変態の目的なら
幼年期とは異なる環境を求めていた事は明白
活動範囲の拡大がそのまま生殖活動の
拡大であるから、進化としては分かりやすい
しかしそれを獲得するため
蝶が辿る道のりは想像を絶する
蛹の中の幼虫は
成体の基礎となる部分を遺し
自分の細胞を液状化するくらい
ドロドロにした後
もう一度体組織を再構成する
古に霊魂の化身とされてきた蝶が
夢と密接に語られる事や
不死鳥のような再生の象徴とされる事は
ここに別の意味を加えているように思う
一度自分自身を完全に溶かして別物に
造り変える事を遺伝子が正史として選択する
これはとんでもない自己否定の象徴だ
スピリチュアルの世界では
飛べない蝶の悲劇という話がある
蛹から孵化しようとした蝶を
安易に手助けしてしまう男の話だ
蝶は窮屈な世界から
解き放ってくれた男に感謝をするが
自力で蛹から出なかった事で
飛翔できるだけの肉体強度を得ずに
成体となってしまう
本物の蝶も同じで
羽化する際に正しい工程を踏まないと
致命的なダメージとなり二度と飛べない
他人の否定を安易に受け入れる必要はないが
人間にも徹底した自己否定が必要な事がある
特にそれが夢や自己の尊厳と関わる場合は
ある種の権利ですらある
そのとき、安易な他者からの肯定は不要だ
変わりたいと真剣に願うなら
ひたすら自分自身に正直になって
吟味する時間を経なければ
誰もメタモルフォーゼできない
この時間は誰かが助けてくれる事はないし
無闇に干渉すべき時期でもない
すべて自分で乗り越えたという自覚だけが
(本当は見守ってくれた誰かがいても)
その人をメタモルフォーゼする
そしてその経験をしなければ
同じように羽化しようとする誰かに
そっと優しく台を譲ってやることも
出来ないのではないかと思う
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