見出し画像

夜の入り口「星野源のオールナイトニッポン」


小学生の頃から今に至るまで早寝早起きの習慣が身につきすぎて、なかなか夜更かしができない。でもクリエイティブな活動をしている人やアングラな人は夜行性のイメージがあったので、夜を得意とする人間に憧れがあった。


大学生の頃、夜更かしをするためには何が効果的なのか、整った生活習慣を犠牲にして実験した。昼に起きてみる、お酒を飲む、19時頃に昼寝をする、提出期限の前日まで課題をやらずに徹夜する...しかしどれもうまくいかなかった。どうしても0時には眠くなるし、何よりも「夜に頭を動かす」状況に慣れなくてとてつもない焦燥感に駆られ、イライラするわ泣き出すわ、なにも楽しくなかった。
そもそも自分は朝型なのでしょうがない、と諦めていた中みつけた解決策が、「星野源のオールナイトニッポン」だった。


祖父が音楽を流すラジオをラジカセで聴きながら生活する人で、そうかラジオって夜のイメージがある!と気がつき、その日がたまたま火曜日だったので深夜1時から始まる「星野源のオールナイトニッポン」を聞いてみることにした。それでも深夜1時まで起きることができず、23時から2時間寝て、アラームをかけて深夜1時に起き、ラジオを流した。


「星野源のオールナイトニッポン」というタイトルコールと共に流れるビター・スウィート・サンバ。その瞬間からラジオの「ひとりぼっち」を迎えてくれるような安心感に包まれて、暗闇の豊かさとか、永遠に感じる夜の長さだとかの色が変わった。得体の知れない敷き詰められた黒い布が、コーヒーの匂いがする、深いバーガンディ色のドレープへと変化したようだった。言葉が創る心地よさに惹かれたのは多分この時からで、書いたり話したり読んだり、言葉を使ったものづくりに興味をもった。

きっかけは「夜更かしをしたい」という邪な動機からラジオに辿り着いたが、結果的にその目的は通過点になり、私は夜を満喫できるようになった。私の夜の入り口を作ってくれたのは「星野源のオールナイトニッポン」なのだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?