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みざくらの樹 #16 - 2024年秋ドラマは大豊作で嬉しい

 ネットの記事を見ていたら今期のドラマについて、ある2作以外は全滅みたいなことが書かれていて、ムムム・・? と思ったので久しぶりに総括記事を書くことにした。そうかなあ ? 私、むしろ今期は大豊作だと思っているんだけど。

 私的にドラマがブームになっているかは、ティ―バーへの依存度ですぐわかる。このところ、週末はティ―バーを追っかけているだけで終わってしまう。契約している動画配信サービスまでには手が回らないのでしばらく解約してもいいかもと思ったくらい。

 テレビっ子として嬉しい限りなのは、フジテレビの大躍進である。月曜日の「嘘解きレトリック」は、時代設定とゆる~い世界観、でも謎解きもちゃんとあるし、月曜の夜9時に観るにはちょうどよい。主演の祝左右馬(鈴鹿央士)と鹿乃子(松本穂香)のバデイの距離感もいい感じ。
 水曜日の「全領域異常解決室」は「ヒルコ」に翻弄される群衆心理などは面白い設定だと思ったが、最新回で「八百万(やおよろず)の神」などという話が出てきたので、どのような方向にいくのかちょっと心配している。
 木曜日の「わたしの宝物」は松本若菜の二期連続主演ということでも大注目を集めているようだ。この方、前主演作(「西園寺さんは家事をしない」TBS)で見た時に、こんなにきれいな人だったんだと改めて見直した。輝いているのでこのままブレイクしてほしい。本作は子どもまでなしてしまった相手の元カレ(どこかで聞いたことあるなあ・笑)が魅力に乏しくて、これなら断然改心したはるたん、もとい田中圭の方に軍配があがるわ(笑)。田中圭は冷たい顔をするととてつもなく冷徹にみえてそれはそれで魅力があるのだが、ここでも顔をくしゃくしゃにして泣いていましたね。職場のストレスはわかるけれど、子どものことを愛せないかもしれないとまで思いつめたわけはいまだにピンとこないが、また托卵がバレたらもとにもどるのかしらん。目が離せない。
 このようにフジは大進撃だが、他局も負けていない。ドラマのTBSが日曜劇場でまたまたスケールの大きい作品を世に問うた「海に眠るダイヤモンド」。昨年のVIVANTでやはり金をかけたドラマはレベルが違うと再認識したが、この作品もすごそうだ。ネットフリックスのようにはいかないまでも頑張ってほしい。ちょっと展開が遅くて先行きが見えないが、どうなるのだろうか。芸達者がそろっていて安心して観ていられるところはさすが。
 日曜劇場よりも、ある意味話題にのぼっているのがTBS「ライオンの隠れ家」(金曜22時)。すでに5話が終わったが、ケアラーの洸人(柳楽優弥)と弟で自閉症の美路人(坂東龍汰)、そして姉の子かもしれないライオン(佐藤大空)が肩寄せ合って暮らす姿には、観ている方も涙を誘われた。ただ、このドラマは決してファミリードラマではなく、ミステリー要素も大きい。オリジナル脚本だそうだが、最後までうまくバランスをとって構成してほしいと願うばかり。それにしてもオノマチ(尾野真千子・失踪した姉、愛生)の号泣ぶりはすごかった。さすがである。
 金曜日の深夜にゆる~くあるけど独自の存在感を放つのがテレビ朝日の「無能の鷹」。あの菜々緒が徹底したポンコツになるという設定が面白いし、一条天皇、ではなかった塩野瑛久をフニャフニャ男にしたのもうまい。この方、大河で好演されるたびにこの役者さんはこれからどうやって売り出すのかと余計な心配をしていたが、このくらいに落ちつくと下界に降りやすいですよね(笑)。

 さて、民放の逆襲が始まったがNHKはというと、案の定、新・朝ドラは不調なようである。私は「おむすび」というタイトルを聞いたとたん悪い予感がして最初から見ていない。おやおやと思ったのは、放映中にもかかわらず主演女優のスキャンダルが出て足を引っ張っていることで、あの鉄壁防御のNHKがどうしたことだろう。ちょっと女優さんが気の毒な気もする。
 話題に上っているのは「3000万」(土曜ドラマ)。脚本家4人で書いているそうだが、面白いというよりもこわい。闇バイトの実態など限りなくリアルだし、平凡な家庭人でもふとしたところから陥るかもしれないというスリル感がたまらない。「宙わたる教室」(ドラマ10)も定時制高校という設定と科学実験が興味深く、飽きさせないつくり。人間模様もよい。

 最後に、今回一番触れたかったのは、大河ドラマ光る君へ第42回川辺の誓い」(11月3日)のことである。私は「神回」などという、チープなことばでの評価は嫌いなのだが、この回はたしかに大河ドラマの歴史にも残ると言っても過言ではない素晴らしい回だったと思う。これは記しておきたい。
 まひろ(吉高由里子)が、宇治にやつれた道長(柄本佑)を訪ねたときの、万感の思いを込めてしぼり出したことばと、よく受け止めて考えながら返した道長。川辺で思いを交わし、高じて号泣する道長。互いの気持ちを静かに確認し合いながらふたりそぞろ歩く二人の姿には、ずっとこのカップルのアンチであった私も思わず涙した。これぞ、紫式部が目指した「もののあはれ」の世界観であろう。
 もうひとつ痛感したのは、この大河は紫式部藤原道長がモデルだということは一度横に置き、「まひろと三郎」の物語としてその愛の軌跡を追っていくならば、もっと素直に楽しめるものだったのだろうということである(今さら、何を言っているのかと言われそうだけど・笑)。
 この回について、すさまじい情熱で解説しているのが、「かしまし歴史チャンネル」のきりゅうさんである。彼女のこの回の解釈にはほぼ同感である。特に脚本の大石静が夫を亡くされたときのエピソードをひいて「あなたが生きてさえいればよいのだ」というメッセージがあるというくだりには、共感した。かしまし歴史チャンネルも今回は良い回でした(それにしても、くぅ~さんって本当に少しもこれに気がつかないの ? ・笑)。
 ただ、このあとも元気を取り戻した道長はまた権力志向に走って、あのゴーマンきわまりない歌を詠むんだが(笑)、どうつじつまを合わせるのか。最後まで楽しみである。そうそう、ききょう(清少納言)に最後には救いを与えてあげてくださいね。定子皇后への忠誠シーンには感動されたはずの方々も、いまやまひろと一緒になってききょうにあきれたり非難しているのをみると、ききょう推しの私としては歯がゆい限り(このまひろの上から目線にはオイオイ、である)。よろしくお願いしますね。