いすず自動車事件①(平成24年4月16日東京地裁)
概要
自動車製造業等を営む株式会社である被告の期間労働者又は被告に就業するする派遣労働者であった原告らが、会社に対し、雇止めの無効を主張し労働者たる地位の確認を求めるとともに賃金等の支払を求めた。
結論
一部認容、一部棄却 → 控訴
判旨
第1グループ労働者ら(4名)の本件雇止めに至るまでの間、会社は、労働組合に対し、遅くとも平成21年1月8日付け「回答書」で、合意解約が得られない場合には、当初期間満了をもって雇止めとせざるを得ないと考えている旨を述べ、本件雇止めについて予告した上で、その後、本件雇止めまでの間に複数回開催された団体交渉で、本件雇止め及び本件休業の必要性に関し、決算資料のほか、生産台数(見込み)等の資料を示しながら説明したのであって、その過程を観察すれば、本件雇止めを無効にする程の問題点があるとは認められない等から、本件雇止めには客観的合理性及び社会的相当性に欠けるところはないと認められ、また、他の2名の労働者に関しては退職合意が成立していたものと認められるから、第1グループ労働者ら及び2名の労働者らの地位確認に係る主位的請求には理由がない。
労働者らの各請負会社及び各派遣会社への採用に、会社は関与していなかったこと、労働者らが各請負会社及び各派遣会社から支給を受けていた給与支払の際には請負会社及び派遣会社ごとに別様式の給与明細書が交付されていたこと、各請負会社及び各派遣会社は派遣元としての独立した企業としての実質を有していたことが認められ、労働者らの給与等を事実上決定していた等、会社が派遣先としての権限を越えて、請負労働者及び派遣労働者の人事労務管理等を事実上支配していたというだけの事情も窺われず、会社・労働者ら間に、労働契約関係が黙示的に成立していたと評価するだけの事情は存せず、また、労働者派遣法が規定する直接雇用の申込義務を履行しない場合に、私法上、契約の申込が擬制されることはない等から、労働者らの地位確認に係る予備的請求には、いずれも理由がない。
本件休業は、会社の経営上の障害によって、命じられたものであり、その対象となっている第1グループ労働者らは、いずれも期間の定めのある労働契約による労働者であり、契約期間内の雇用継続及びそれに伴う賃金債権の維持については合理的期待が高いものと評価すべきであるところ、会社は、正社員及び定年後再雇用従業員については、本件休業期間中4日間の個別の休業日を設定、実施するのみで、それに伴い支給される休業手当の金額についても、基本日給の100%を支給しており、期間の定めのある労働契約によって職務に従事する労働者が置かれている状況に照らして考えると、著しく均衡を欠くとの評価を免れないといわざるを得ない等から、第1グループ労働者らの会社に対する民法536条2項に基づく賃金請求権(平均賃金100%)は、これを認めることができる。
派遣禁止業務について派遣労働者を受入れ、また、派遣可能期間を超えて派遣労働者を受け入れるという労働者派遣法違反事実から、直ちに不法行為上の違法があるとは解せず、また、会社が、その経営判断として解雇予告通知を行ったこと自体に違法性があるとは評価できない等から、労働者らの会社に対する不法行為に基づく損害賠償請求権及び慰謝料請求は、いずれも認められない。