7年目の「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」評

「俺の妹がこんなに可愛いわけがない(以下俺妹)」の最後のシーンを完結から7年たって改めて考えてみると、別にあのシーンはインモラルの選択じゃなかったんだろうと思えるようになった。

冷静に俯瞰してみたら、寧ろ大がかりなママゴトとしてみると一番自然に思える。
兄に恋焦がれ兄と同一化どころから兄を通り越すところまで来ても、なお兄の挫折を知らなかった。
兄なら妹を愛するはずだという歪んだ性癖をどこかで正さなければならなかったが、その機会が来たのは物語の後半になってようやくだった。
兄の挫折を知ったとき、妹は初めて自分の選択の誤りに気付いたが、それを自分からただすには、両手に抱えた物は多すぎた。
また、兄も兄で妹を迷わせた罪を抱えていた。本当に壊れた家族だったと思う。

それをあの荒療治で幼少期に拗れた妹の性癖を治したんじゃないのかという気がする。
あのママゴトのために兄も失う物が多々あったけど、それは兄が負った罪(誰かの偶像であることをあまりに軽々しく放棄したこと)に対する清算ではないかと思う。
妹も多分本気の恋ではなかったが、成就しなかった事に対するわだかまりだけ残っていた。
わだかまりのもととなる感情は、恐らく三つあった。
一つは家族愛としての感情
二つ目は兄に対する偶像崇拝的な感情
三つ目はその二つ目の消失により、自らが偶像と同化した(実際には通り超えた)ことによって得た”妹に対する”家族愛の感情
これらの三つを区分も整理も出来ずに混同し、その勘違いにようやく気づき始めてもそれを自分の力で修正するには、あの妹は未熟すぎた。それをあのママゴトで兄同様に清算した。単なる勘違いだったということを、最も傷付けずに気付かせる最良の方法に思えた。
だから終わり方として何も尾を引かず綺麗に、元の家族へと戻ることを予感させる形で終えることが出来たように思う。

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