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Mist
2020年1月9日 05:00
二度と戻れない夜が終わって、二人は朝焼けのレストラン。テーブルの新聞に目を落とすと、今日も世情は暗い。ウェイトレスが去ったあとには、美しい沈黙だけが残る。フォークの先でつついた目玉焼きがやぶれ、涙のように黄身がこぼれる。僕もこんな風に泣いてやろうか迷ったけれど、泣かなかった。どうしたって君は振り返らないから、せめて思い出を飾ることに決めたのだ。初雪が舞い始めた。国道を走る車の流れは途切れること
2019年1月2日 02:42
いつか生み出した言葉の連なりの数々に絡めとられて、私は身動きとれなくなっていく。夜が明けて、年が明けて、いま、私は大人になったのだろうか? 夕暮れのたびに涙して、いつかの日を思い返して、窓越しに紫色の空を見る。取り込んだ洗濯物から、冬のにおい。木枯らしをまとった、かわいた都会のにおい。たぶん、もうすぐ春が来るんです。それがわかっているから、たまらなく淋しいんです。桜の花びらひとつ、ベランダに舞