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Mist
2020年2月22日 16:14
歌うことが好きだった。次の言葉を探さなくてよいからだ。あの頃の私はいつも言葉に迷っていて、おはようの一言にさえ逡巡して、ぐずぐずと夕暮れを迎えていた。お酒が飲みたいのではなくて、酔わなくちゃ目を合わせられなかったんだ。夜が好きなのではなくて、逃げ込める場所がそこしかなかったんだ。誰も聴いてはくれないけれど、色の変わる大きなフォントに一人で想いを託して、今日と明日との境界線上でなんとか生きていた
2020年1月9日 05:00
二度と戻れない夜が終わって、二人は朝焼けのレストラン。テーブルの新聞に目を落とすと、今日も世情は暗い。ウェイトレスが去ったあとには、美しい沈黙だけが残る。フォークの先でつついた目玉焼きがやぶれ、涙のように黄身がこぼれる。僕もこんな風に泣いてやろうか迷ったけれど、泣かなかった。どうしたって君は振り返らないから、せめて思い出を飾ることに決めたのだ。初雪が舞い始めた。国道を走る車の流れは途切れること