シェア
Mist
2016年5月15日 23:19
月がジュリーをにらみつけていた。お前を逃しはしないぞと。混み合ったホームに歯痒さを憶えながら、ふらつく足取りで人波を掻き分ける。たぶんもうだめだろう。今更走ったところでなにもかも取り戻せないだろう。なんのために走っているのか。なんのために。ここで線路に飛び降りて、バラバラになっちまったら、誰か後悔してくれるだろうか。それとも、つまらない男だったと呆れられておしまいだろうか。酔いのせいか、ジュリー