水の遠く
降る水なら雨とよばれた
たまると池とよばれ湖とよばれ
流れるころには川とよばれて
海をめざした
水の遠く
頬をつたうと涙とよばれた
働く額にしみた水は汗とよばれた
たくさんの名前がある
たくさんの祈りがある
子どもが遊んで飛び越える水を
みずたまりとよぶ
遠く呼び水がみえるとそこは夏になる
それらすべては水の記憶
遠く命と祈りと心をまとめた水の
水の記憶
あなたも憶えているだろうか
遥か遠くてあたたかい水に包まれた頃の記憶を
37℃の心の音は遠く
水の遠く
遠く流れ着いた大きなみずたまりは
ついぞ海とよばれた
母なる海とよばれた
すべては水のひとつぶ
遠く雲になって空へと帰りたいのなら
水も人も同じこと
雲になって風になって
遠く空に帰りたいと願うのなら
空にいた頃の水の記憶を
遠く今も憶えているからだろう
水の記憶は遠く
あなたがまた降ってきた
あなたが降る
あなたが降る
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