女性おひとり様で、ストリップ劇場に行ってみた話。
7月初めのある日、私は浅草のストリップ劇場の前で立ち尽くしていた。
初めて受けた衝撃に放心状態になってしまい、会場から出てもうまく現実に戻れず、入り口に飾られた豪華なスタンド花を少し離れたところからしばらくぼうっと眺めてしまっていた。
***
コピーライターの阿部広太郎さんが主催する、企画メシ2021。
第2回の講義はライター、編集者の九龍ジョーさんをゲストにお迎えして行われた。
九龍さんからの事前の課題は、「伝統芸能を調べて、あなたが見つけた魅力を説明してください。」というもの。
そして、私が提出したアンサーはこちら。
なぜ、「伝統芸能」がテーマなのに、ストリップを選んだのか。
どうしてストリップ劇場に行ってみたのか。
次の機会に活かすために、改めて振り返ってみたいと思う。
●伝統芸能ってなに?????
今回の課題が発表された時にまず思ったのは、「伝統芸能ってそもそもなに?」ということ。
恥ずかしながら今まで伝統芸能にほとんど触れて来なかった私は、まずパソコンを立ち上げて「伝統芸能」にはどんな芸能が含まれるのかを調べるところから始まった。
歌舞伎、能、狂言、落語、講談…。もちろん聞いたことはあるけれど、私には馴染みのない芸能がずらりと並んでいた。
そんな私がまず最初に興味を持ったのが、落語。
せっかくなら体験したいと思い立ち、すぐに落語教室を探して問い合わせてみたところ、ご時世の影響で今は受け付けていないとのこと。
…困った。課題の締め切りまでは1週間を切っている。
振り出しに戻った私は、まずは今回の講師である九龍さんの著書を読み、神田伯山さんとの対談YouTube動画を見るところから始めることにした。
そこで出会ったのが、ストリップ。
…え??ストリップが伝統芸能???
不思議に思って調べると、神話に登場する芸能の女神であるアメノウズメが日本最古の踊り子と呼ばれているらしい。天岩戸に籠ってしまったアマテラスオオミカミのために踊ったアメノウズメ。彼女の踊りによってアマテラスオオミカミが顔を出し、再び世界に光が戻ったとされている。
もうすでに好奇心が止まらなかった。
●実際に、ストリップ劇場に行ってみた。
ストリップに興味を持った私は、まずストリップ劇場の場所を調べてみた。
どうやら浅草ロック座で見られるらしい。そういえば、浅草では寄席も見られるはず。
そこで、寄席とストリップに行ってみて、ビビッときたものをテーマにしようと考えた。
チャンスは1日しかなかったので、はしごすることにした。
とは言っても、寄席ならふらっと入れる気がするが、ストリップ劇場に女性1人で突撃するのは不安だった。
それに、正直なところ、お金を払って女性の体を見に行くということに少し抵抗があり、踊り子さん(ストリップ嬢)に悪いことをしているのではないかと罪悪感も感じていた。
そこで、女性目線でストリップ劇場の体験記が描かれている漫画、『女の子のためのストリップ劇場入門』(菜央こりん,2020)を読んでみた。
作者の菜央こりんさんは純粋にストリップを楽しんでいて、全国各地のストリップ劇場をめぐるほどハマっていた。
そんなに見る人を魅了するストリップの魅力はなんなのだろう。
不安よりも好奇心が上回り、行ってみることに決めた。
浅草の伝統芸能巡り当日。朝から寄席に向かい、夕方まで楽しんでからストリップ劇場に行くことに。
寄席も本当におもしろくて、だんだんストリップ劇場に行くのが緊張してきてしまい、やめてしまおうかとも思ったけれど、意を決して向かうことにした。
そして、初めてストリップ劇場に行った結果、
私はnoteの冒頭の通り立ち尽くしてしまった。
●見つけた「魅力」をどう伝えるか
浅草ロック座を後にした時には、私は今回の企画はストリップについてまとめようと決めていた。
(寄席は寄席でとてもおもしろかったです…!)
そこで改めて今回の課題と向き合い、まず、私の企画を見た方がこんなふうに感じてくれるといいなという理想の状態を考えてみた。
■理想の姿■
①馴染みのないことや一見とっつきにくいことを噛み砕いて手渡すことで、伝統芸能との距離がグッと近づく。
②紹介した伝統芸能に実際に触れてみようと思えて、アクションを起こそうと思える。
さて、この理想を叶えるためにはどう魅力を伝えればいいのか。
私は、おそらくストリップ初心者の方が多いと仮定して、私の「初体験」をそのまま、熱を持ったままお伝えしたいと思った。
そこで、その時その時に感じたことをスマホにメモをして残しておき、それをベースに文章を組み立てた。
また、企画をまとめた時に意識したことがもう1つ。
それは、前回の課題で阿部さんからいただいたフィードバック。
「ブラッシュアップする中で"消した数行"に生々しい気持ちがあるはず。」というアドバイスをいただいていた。
そこで、できる限り私の思いを取りこぼさずに伝え切れるように意識した。
とはいえ、文字が多すぎると読んだ方の集中力が続かないと考えたので、文章量やまとめ方の調整を繰り返した。
その結果完成したのが、私の企画。
●自分から対象に近づいてみることでわかること
私の企画を「推し」に選んでくださり、感想をくださった方がいらっしゃってとても嬉しかったです。
また、九龍さんから「版面をパッと見ておもしろそうと思えた」とコメントをいただいて、良かった〜と喜びを噛み締めていました。
お一人おひとりの感動メモは何度も何度も読みました。これからも宝物です。
多くの方からいただいたのが、「行動力がすごい」というコメント。その言葉をいただいた時に、私は何か特別なことをしたつもりがなかったので、正直驚いた。
そこで、感動メモを見ながら、なぜ行動してみたのかを振り返ったら、
私はもともとそういうところがあるのだと気づいた。
前職で企画やコピーを考える時も、できるだけ対象の商品を買って、触って、売り場を見て、イベントに参加してみて…という実際に足を動かす行動をしないとモヤモヤしてうまく作業を進めることができなかった。
しかし、周りの先輩方はそんな過程を踏まなくてもサクサク作業を進められているように見えて、私のやり方は時間がかかるし、遠回りな気がする。もっと要領よく進めなければ、と思うこともあった。
でも、思い返してみると、自分から対象に歩み寄ったことによって確実に得られた感覚があったのも事実だった。それに、実際に足を運んだことをクライアントに伝えると、喜んでもらえることが多かった。
今回、九龍さんや皆さんにコメントをいただいて、実際に行動したことを素直に自分の言葉で伝えることによって伝わるものがあると教えていただいた。
そして、泥臭く足を動かすことが私に合ったやり方なんだな、とも感じることができた。
九龍さんのお言葉をお借りすると、「自分の演算装置を使う」ということ。とりあえず自分の中に取り込んでみて、そこからどんなものが生まれてくるか実験してみる。このことはこれからも意識したい。
また、今回はできるだけ現場の臨場感をそのままお伝えしたいと考えて、
このようにスピード感を感じてもらえるような文章にまとめることにしたが、企画を送る相手に対して、その都度どうお話しすれば伝わるのか考えたい。
耳元でこっそり囁くのか、強く大きな声で主張するのか。
受け取る相手や伝えたい内容によって変わるはずなので、企画を送る相手のことを真剣に考えたい。
●おわりに
今回ストリップ劇場に行ってみて、単純に「ストリップは素晴らしいからみんなとにかく行くべき!!!」とは言えないと思ったのも素直な気持ちです。
私自身、ストリップ劇場に足を運ぶ前はお金を払って女性の体を見に行くことに対して少し罪悪感のようなものを感じていたし、もしかしたら特に女性の方は、実際に足を運んだら衝撃を受けるかもしれない。
けれど、私は行って受け取るものが多かったので良かったと思うし、踊り子さんを応援したいと思うようになったのも事実です。
なので、もし興味がある方は、伯山先生や九龍さんがおっしゃるように、ぜひ「今のうちに」足を運んでみてほしいと思います。そして、ぜひ感想を教えてほしいです。他の方々がどんな感想を抱くのか、とても気になります。
新たな伝統芸能に出会うチャンスを与えてくださった九龍さんと阿部さん、企画メシの皆さんに感謝しています。ありがとうございました!