トカトントン
私は、太宰治の作品が好きである。
新潮文庫のヴィヨンの妻の中に集録されている短編でトカトントンといいう作品が
非常に面白い。
『拝啓。一つだけ教えてください。困っているのです。』という冒頭で始まる作品です。
作者はなにに困っているのだろうと?冒頭から興味を持つことになる。
読み進めていくと、何かしようとやる気が出た時や、お疲れ様でしたと頭を下げた時、など様々な場面で時折トカトントンという音が聞こえてくる。
その音が流れた途端に、虚無感に襲われる。という話である。
かなり大雑把に内容を説明したが、面白いのでぜひ手に取っていただきたい。
私は20代前半で、すごくこの作品のトカトントンに近い虚無感に襲われることがある。
何を楽しみに生きているのかや、生きている意味は何なのか、働く意味わ?など
極々身近な当たり前にしていることに疑問を感じる。
そしてすべてニヒリズムに結びつくので、大変この作品の作者の気持ちに共感するところが、少しでもあるように感じる。
太宰治は、人の考えの暗い部分に光を当てた作家だと感じる。
私小説が多いが妙に共感するのが太宰治の作品である