【新聞連載第7回】鍵は教育と建築②
先回の連載では、これまで私たちが岡崎市で行ってきた活動を元に『本質的な
まちづくりとは、教員と建築家を志す若者たちとそれをコーディネートする機
関と、その場を提供する自治体によって実現されることが最善なのでは』とい
う意見を述べました。
今回は、私たちが実際に立ち上げに関わっている三重県木曽岬町で生涯教育を兼ねた住民主体のまちづくり事業について、その活動から得た知見や学びを伝えたいと思います。
舞台は人口約6,300人、愛知県と隣接し木曽三川の河口部に位置する三重県の木
曽岬町。「トマト」をはじめとする農業や「のり」や「うなぎ」の養殖をはじ
めとする漁業が盛んで、名古屋市等のベッドタウンとしても発展してきた一方、
他の市町村と同様近年は人口が大幅に減少しており、進学や就職、結婚を機と
する若い世代の町外への流出が進んでいます。
木曽岬中学校に通う中学生にアンケートをとったところ、将来もこの町に住み続けたいと答えた中学生は全体の10%、他の町に引っ越したいと答えたのは35%にのぼりました。木曽岬町が定めるまちのにぎわい基本構想では、町民、町民以外の人を問わず、『木曽岬というまちの魅力を知っており、自ら町内外にその魅力を積極的に発信するようなひと』を育み、さらに『まちづくりや事業創生にチャレンジするひと』の育成を目指すと定めています。
この基本構想を元に生まれたのが、木曽岬わいわい市場です。年に三回行われ、町内外から約700人が訪れます。特産品販売や知名度の向上を図るだけでなく、町内の子どもたちが町外の若者とチームを組んで、町の魅力(人・もの・こと)を再発見し、木曽岬の次世代を担う子どもたちが町の魅力を発表する舞台でもあります。
子どもから大人まで楽しめるこの事業の中で今年度協働しているのが、大同大学建築学科専任講師であり、一級建築士の米澤隆先生と大学生たちです。なぜ彼らのような建築チームと協働しているかというと、将来的に、町外からの交通アクセスを活かした商業・観光等拠点である公共拠点整備を目指しているからです。
主に大同大学、名古屋工業大学、名古屋大学の建築と教育を学ぶ大学生約20人が毎週集まって準備を行っています。
彼らが担当するまちづくりワークショップは、上空写真を貼付けた模型の上に木曽岬町民から町に対する意見をヒアリングしながら言語化・可視化したり、子どもたちにどんなものが町の中に欲しいか絵に描いてもらったり、町の模型を子どもたちと一緒につくるワークショップを同時並行で行っています。
学校内に留まらず社会の中に飛び込み、社会人と共に活動をしながら彼らが
得るものは、その分野のプロフェッショナルだけではありません。
産官学民、様々な分野の大人たちが関わるこの事業の中で、どのような活動や仕事がまちのために繋がるのかを知ることでシチズンシップを養うのです。それは、次世代を担う若者たちに必要な視点の一つだと考えています。
現在の若者たちを、将来自身の生計だけでなくまちの発展に寄与する仕事をできる社会人に育てることこそが、これからのまちづくりや教育の現場に必要な軸ではないかと考えます。
(2018年11月 東海愛知新聞掲載)
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