僕の好きなアジア映画92:ママボーイ
『ママボーイ』
2022年/台湾/原題:初戀慢半拍/98分
監督:アーヴィン・チェン(陳駿霖)
出演:クー・チェンドン(柯震東)、ビビアン・スー(徐若瑄)、ユー・ズーユー(于子育)、フェンディ・ファン(范少勳)
あなたはビビアン・スーを覚えていますか?1990年代に、日本のバラエティ番組、CM、ドラマなどに多数出演し、愛くるしい容姿と辿々しい日本語、そして天然キャラで人気を博しました。その後俳優を目指して2003年には帰国をしていたようです。
確か一時期エロい映画にも出演していたように記憶していますが、最初はしばらく誰かわかりませんでした。本作ではしっかり熟女となったビビアン・スー姐さんが、おばちゃん的ヘアー・スタイルで素晴らしい演技を見せています。
物語は然程目新しいものではありません。30歳になっても精神的に母の保護下にある男(いわゆるマザコン)には友人も、ましてや恋人などいるわけもなく、従兄弟に無理矢理連れられて行かれた売春宿(というかホテル)の売春婦の差配人であるビビアン・スーに恋をしてしまう。男は彼女に会うために、行為は何もしないのに売春婦を予約し宿に通い詰める。年齢差がありながらお互いに惹かれていくのだが、当然その恋は実ることもなく、男はその経験を経てやっと母の支配から独立していくという、コミカルでいてほろ苦い初恋の物語です、
マザコン男の役にはクー・チェンドン。大麻吸引の容疑で逮捕されたこともあるそうなのですが、現在は映画監督や歌手としても注目されているそうです。本作でも頼りないマザコン男をコミカルに演じています。
しかしこの映画の魅力はビビアン・スーに尽きるのではないでしょうか。中年に差し掛かった風俗業の女性役を、往時の面影を残しながら、青年への淡い恋心と孤独な生き様を豊かな演技で見せてくれます。タバコを吸う仕草一つにも、この年齢でこその魅力が溢れています。
さてこの映画の原題は「遅い初恋」みたいな意味のようなのです。いつもは余り感心できない邦題ですが、今回はこちらの方がより映画の内容に近いかもしれません。アイドル時代のビビアン・スーを懐かしみつつ、今の彼女の女優としての魅力が詰まった佳作でした。
第24回台北映画祭オープニング作品