植物を訪ねてShort ~日本最古級の染井吉野~
日本最古級の染井吉野を見に福島県郡山市の開成山公園を訪れました。手短に紹介します。
以前は1882年に植栽された弘前公園の染井吉野が最古と言われていましたが、近年の調査により開成山公園の染井吉野が、1878年(明治11年)に植えられた可能性が極めて高いと判断されて最古級となっています。2024年で146歳になる計算です。
「級」という点がもやもやポイントですが、幹の中心から腐ることの多い染井吉野ですので、検証が難しくピンポイントの結果が出にくいのでしょう。まぁ、細かいことは気にするなという事で実物の写真をどうぞ。
駅の方から開成山公園に向かって歩いていくと、歩道と並行する盛り土の上に大きな桜が見えました。明治初期にこのあたりの大規模な開墾が行われ、この盛り土はかつての池の堤だそうです。
近づくと大枝に大きな空洞があります。明らかに古そうな個体です。
正面から見ると幹がでこぼこしてます。これは染井吉野の幹肌ですね。
園内に入ると『開成山公園「日本最古級のソメイヨシノ」』という案内板が、その中央に映る桜は正にこの桜です。
園内からサクラを眺めましょう。
大枝の分岐部に空洞があり、そこには竹の筒が添えられています。これは桜を元気にするための不定根誘導と言われる治療です。筒の中には桜の不定根が通っています。不定根とは本来の根以外の根のことです。桜の組織はタネの段階で、幼芽、子葉、胚軸、幼根に別れています。この幼根が成長すると本来の根、定根になります。樹木は植物ホルモンや湿度などがある条件になると、定根以外に不定根を出します。細胞レベルで言うと、幹などの細胞が万能な細胞にもどり(脱分化)、再度根の組織に変わるのです(再分化)。この根を地中まで誘導し育てるのが不定根誘導です。新たな根は地中で養水分を吸収し、地上部では幹の代わりに体を支えます。このように活力と強度の回復を目指す治療です。
傷つきながらもこの桜の枝葉は大きく広がっています。人が手助けをすることで、より元気になってくれることでしょう。
今回は訪問の3日前が満開だった模様。残念ながら前日の風雨で花弁は散っていました。今度は日本最古の染井吉野でお花見がしたいなぁ。
2023年4月8日に訪問
©じゅもくやん 2024.3.16
本稿は一般社団法人 地域緑花技術普及協会のWEBページに寄稿予定です。
https://stageforgreen.org/archives/column/
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